「データサイエンティストに学ぶ分析力」ウェブ解析士もWebアナリストも必読
いままで仕事柄データマイニング、統計に関する本は極力目を通している
しかし最近、これら解析に関する書籍の出版が増えている。
Google アナリティクスの解説本はツールの使い方なので、これとはちょっと違う分類にしておきたい。
そして、解析の本は2軸ある
まず、Webアナリティクスも含めたデータ解析への信頼のベクトルである
データ解析は万能だ、神だ、最強の学問だと礼賛するか
データ解析は気をつけろ、判断を間違える、壮大な知的詐欺だと不信するか
そして、データ解析への実務のベクトルである
データ解析の数式や概念や使い方を説明する理論派と
事例や体制や改善結果などの実務派である
データサイエンティストにとってのバイブル
私はこの本をちょうど真ん中におきたい。
データが重要だ、その事例を語る本はたくさんある
データに気をつけろ、警鐘をならす本もある。
エクセルの操作方法までつけて、データマイニングの道具を説明する本もあるし、
データ解析事例をふんだんに盛り込んだ本もたくさなる
マーケティング分野で実務にて成果を出してきた人の本当の声を知ることができるものは滅多にない
実務で私が感じている。
データを過信せず、でも可能性を信じながら、理論のコンセプトを優しく説明しながら、実務イメージを伝えている貴重な本である。
だから、この本を真ん中において、他の本を評価したい(いつか、このデータ解析本マトリクスは書きたいなぁ)
だからバイブルと言っていいと思う。
拙著「ウェブ解析入門」に共感する人にはぜひ。レベルは全く低いだろうが、この本と同じ方向を向いていると思っている。
ウェブ解析担当者、Webアナリストも必ず読むこと
ウェブ解析士やWebアナリストにとっても必読の書だ。
筆者がアクセス解析について説明している箇所が後半にあるが(前半にあったら私的にはもっと読みやすかったかも)、もうこれが全く私の感じてることと同感なのだ。
しかし、この本はウェブ解析の本ではない、もっともっと広い、B2Bの収益改善やマスメディア広告の改善など起業のセールスプロモーション全般でのデータ分析コンサルティングの本である。
だが、多分核心はウェブ解析にある。
実はビッグデータへのアンチテーゼ本
もう一つ、この本を評価したいのはビッグデータへのアンチテーゼである点である。
ビッグデータという言葉が広がって久しいが、個人的に強い危機感を感じていた。
これがバズワードだからだ。
データ分析をすればマーケティングから電力まで世の中のあらゆる問題が解決する、
もうライバル企業ははじめてるぞ!
全企業は今すぐ直ちに
ビッグデータを収集するためのツールを買え!
データをためるためのでっかいサーバ(かクラウド)を買え!
データを分析する高機能は解析ツールを買え!
と聞こえるのである
そんなこと全くない。無駄金になるか、下手すると企業に災いをもたらすという警鐘
はずっと無視されてきた。
この本は、やんわりと、でもはっきりと、ビッグデータではないと言っている。
僕が一番好きなのはこの本の原題だ。
“Sexy Little Numbers”
アマゾンで検索するとアダルトなコンテンツもあるので要注意(笑)
ビッグデータじゃないよ、魅力的なちっちゃな数字が大事なんだよ、と言っている。
ビッグデータでは
今まで取得してなかった大量のデータを取得し、蓄積し分析せよ!
と言ってるが
“Sexy Little Numbers”では
いやいや、いままで取得した普通にあるデータをちゃんと使うと、いろいろ分かるよ
と言ってる。
ビッグデータでは
最新のデータマイニングテクノロジー(笑)で人智を超えた答えが自動的に出てくるよ!
と言ってるが
“Sexy Little Numbers”では
いやいや、トップが意思決定するには誰でもイメージしやすい表現しなきゃダメだよ
と言ってる。
ビッグデータでは
データ収集ツールとサーバと解析ソリューションが必要と言ってるが、
“Sexy Little Numbers”では
データも大事だけど、消費者行動分析みたいな定性分析も大事だよね
と言ってる。
ちゃんとこの概念が伝われば、どっかのメーカが箱やヒモ売りたさにひろめたビッグデータが沈没してもデータサイエンティストやWebアナリストもいっしょくたに扱われないだろう、ってとこだけでもこの本が広まってほしいと強く思う
そう、”Sexy Little Numbers”とは”Key Performance Indicator” KPIのことだろうと思っている。
訳者の小林さん、ありがとう!そしてもっと勉強します!
ある日、同世代のウェブ業界であつまる飲み会があり、第二次ベビーブーマー世代が集まった。
そうそうたるメンバーで中には隊長のように、どーしても同い年と未だ思えない人もいますが(笑)、偶然隣に座ったのがこの本を翻訳した小林さんだった。
大手企業でデータ解析に携わる中、個人的なブログや執筆活動も精力的にこなしている。
そして、今度出る本として「データサイエンティストに学ぶ分析力」を紹介していただいた。
最初ぱっと見て思ったのは、冒頭の通り「またデータ分析の本が発売されるのか、他と同様読んでおかねば」だった。そこで、書評を書きたいとお願いし、快諾をいただいた。
今考えると恥ずかしい(汗)
この本は学ぶ点がたくさんあった。
特にウェブ解析やWebアナリティクスの現場だけでは知り得ない、よりビジネス解析について得ることが沢山あった。
そして訳がいいから読みやすい。
残念なことに解析系の本は訳がまずくて読みにくいこともある。
この本は分かりやすい。現場でデータ解析に携わる小川さんだからこそ、と思う。
小林さんはこれからもすばらしい本をどんどん出してほしい。