「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。38人目は、“なんでもデザイナー” のおおたきすみこさん。
食品メーカーで19年間、販売、営業、販促物制作、マーケティングと企業活動のほとんどをご経験され2018年に独立。請け負うジャンルはウェブから印刷物、SNS活用と幅広く、企業に関わるデザインのすべてにご依頼いただけるようにと、日々邁進されています。
「1つの道を極めたベテランには敵わないけれど、これまでの経験をすべてかけ算したら、大きな強みになります」と話すおおたきさん。彼女の強みの活かし方は、資格取得をきっかけに一歩踏み出したい方の背中を、力強く押してくれると思います。
(インタビュー・編集:ライター ふじねまゆこ)
企業まるごと理解して、コンシェルジュ的な存在でありたい
おおたきさんは19年間、食品メーカーにお勤めされた後、デザイナーとして独立されたと伺いました。「なんでもデザイナー」という肩書でご活躍されていますが、得意分野はありますか?
これが一番! というのは無いんですよね。
器用貧乏を極めているという感じ。
前職では、様々なご経験をされていますが、当時もデザイン制作をされていたのでしょうか?
前職はグループ会社から本社へ逆出向していました。学校でグラフィックデザインを学びましたが、入社後の配属先は販売でした。その後、営業、販促と、各部署を一通り経験し、ディレクション、マーケティングを経て制作を担当するようになりました。思い返すと、少しずつやりたいことへ近づけたかなと思います。
前職で企業活動のほとんどをご経験されたのですね。
そうなんです。遠回りしたけれど、個人事業主になった今はすべての経験が役に立っています。
企業活動のほとんどを経験されているデザイナーの方は珍しいと思います。
デザイナーとして個人事業を初めて2年と浅いので、その経験ゆえの理解力と柔軟性がウリです。
前職は小さな会社でしたから、役職も肩書もありませんでした。とはいえ、多くの仕事は調整役で、経験で言えばディレクションのほうが得意なのかもしれません。
でも、作る側になりたかったので、仕事を辞めて独立を決めました。
独立の際、ディレクターやコンサルタントの肩書は検討されましたか?
コンサルタントやディレクターと名乗るつもりはありませんでした。
自分で作りたい気持ちのほうが強かったので。
別のディレクターやコンサルタントの方と一緒にお仕事することはありますか?
ないですね。企業と直接、お取引させていただいています。
独立して感じたことですが、ウェブは作ったら終わりの案件が多いです。
依頼主とお付き合いを深めながら、企業活動のフルサポートをしたいと思って、足りない部分を補うためにウェブ解析士の資格を取得しました。
おおたきさんは、企業にとってコンシェルジュのようですね。
そういう感じでありたいと思っています。その企業のことを、よく知らないまま作りたくなくて。お客様の事業、背景を知った上で、企業の作るものの全部を網羅したい。
ウェブページ、印刷物デザイン、ロゴ、動画、SNS運用……。その企業が必要とするものを全部、この人に頼めば大丈夫という存在でいたいと思っています。
よくウェブ派、印刷物派みたいな話がありますよね。どちらが得意かみたいな。それが無いということですね。
そうです。どちらもお受けすることができます。
これは私のコンプレックスでもあります。一筋でやってきたというものが無いので、この道何十年のベテランには勝てません。
なんでも経験があることは、経験が無い私からするととてもうらやましく感じますが、そうではないのですね。
本人的にはツライですよ(笑)
自信が無い部分を、いつも元気づけながら乗り越えています。
器用貧乏を多才多芸に。広範囲をまんべんなく深める強み
企業と初めて取引をする際は、どのような案件が多いですか?
最初はリニューアル案件ですね。ウェブサイトをお持ちの企業がほとんどですから、その相談をよくいただきます。お付き合いを続けるうち、リクルートサイトを作りたい等のお話が出てくると、新規で制作する場合もあります。
その際、リサーチから改善提案、制作、解析レポートまで、全部お一人でされています?
そうですね。ブログ記事の構成提案から、毎月のアクセス解析レポートもこちらで作ります。
大きいボリュームの案件は、別の方と共同で取り組むこともありますが、基本的に1人ですべてこなしています。
すごいですね!
SNS配信サポートもされますか?
SNSの運用もお任せいただけるようになりました。先日、上級SNSマネージャー資格も取得しましたし。
ウェブ解析士協会主催の講座ですね。受講されてみていかがでしたか?
ウェブ解析士認定講座と同じく、初級と上級で難しさが全然違いました。初級が基礎知識で、上級が運用、実践編になります。
幅広いスキルを貪欲に吸収されているのですね。
しかし、おおたきさんの幅広い経験は、独立当初は強みではなかったそうですね。
会社を辞めてすぐは、19年積み重ねたことが台無しになったと思って悩みました。何も残ってない。これってものがない。長い時間をかけて築き上げたと思えるものが無く、自信がありませんでした。
でも、これまでの経験を全部活かそうと思って、独立後は必死でした。
この先はどんなことにチャレンジしたいですか?
手を広げすぎているので、深めていきたいと思っています。
今までやっていることを深めるために、使ってみたいツールがたくさんありまして。
例えばどういったツールでしょうか?
Adobeのツール群をどれだけ使えるかチャレンジしたいです。Adobe Creative Cloudは、月額で何種類ものツールが使い放題ですから、使えるものを増やしていきたいなと思っています。
ここでも、一つのツールを深めるのではなく、幅広く、少しずつ深度を下げていく方針なんですね。
全部使う勢いで、欲深くいこうと思います(笑)
広く、少しずつ深く。とはいえ、新しいサービスが公開されたときは、とりあえずやってみることもポリシーの一つです。
自分の強みを深めて、かけ算を続けてみよう
10月から本格的に開催される、ウェブ解析士協会主催のママ向けイベントの運営に携わっていらっしゃいますよね (取材時点は9月)
私は子どもがいませんが、前職で子育て中の方と働く機会が多くあり、応援したいなと思って運営に参加しています。
よくニュースで、派遣社員の雇い止めや、子育て中の時短勤務とフルタイム勤務の差について取り上げられますよね。
私が見てきた子育て中の方々は、仕事がとても効率的で優秀な方ばかりでした。最近は子育て世代に限らず、本当はすごいポテンシャルを持っていらっしゃるのに、時間や立場の制約によって成果を得られていない方がいると感じています。
そういった方の力に少しでもなれたらと思い、参加させていただきました。
正社員と派遣社員や、フルタイムと時短勤務など、差を感じる場面はたくさんありますね。社会の格差を埋めることは難しいけれど、差を感じている人が自分自身を高めたいと思ったとき、何が必要だと思いますか?
企業では「自分しかできない仕事は仕事じゃない」という考えがありますよね。誰かが辞めてしまっても、組織が持続できる仕組みでなければいけないという考えです。これは少しずつ変わってきているのではないかと思います。
私はこれからの時代、どんな人も「自分が持っている強み」を磨いて、世の中に貢献する社会になりつつあるのではと感じています。そのときに、かけ算できるスキルを増やしたり、深めたりすることは大切だと思います。
あらためて自分のスキルを棚卸ししてみると、新しい発見がありそうですね
強みはかけ算ができますから、経験年数が浅くても良いんです。
ウェブ解析士の知識、経験もかけ算する対象にできます。これまでの経験を棚卸しして、かけ算できるものを増やしていったら良いと思います。
私ように、どのスキルも数年しか経験がなく自信が持てなくても、スキル同士をかけ算すれば大きな強みになります。子育て中の方ならば、子育てで得た強みをかけ算して仕事に活かすことはできるんじゃないかなって思います。
今、副業でこれまでの経験と全く違う仕事に挑戦される方がいらっしゃいますよね。
おおたきさんご自身も、クリエイターに転身されていますが、自信のつけ方はありましたか?
前職でも、いただいた仕事は断らないようにしていたのですが、そうしたら割と色々なことを頼まれるようになりました。経費処理も、販促物の在庫管理も。面倒に思うことも全部やっていました。その経験は今も活かされています。
経験に無駄なことは一つも無いので、頼まれたことを全部やりきるといいと思います。できたことが自信になりますから。
もう1つ、社会人経験も一つの大きな強みになります。
電話応対や、ビジネスマナーですね。社会人として基本的なことができることもスキルの一つとしてかけ算の材料にしてください。
フリーランスに転身したばかりですと、どのように仕事へつなげれば良いのか分からず、不安になるときがあります。そういうとき、おおたきさんはどうされていましたか?
最初の1年目は仕事が無くて不安になりますが、2年目から忙しくなると聞いたことがあります。私も独立1年目は不安でしたが、2年目の今は忙しくなってきました。
おおたきさんの場合は、どのようにお仕事を得られたのでしょうか?
最初に依頼してくださった方が、私の仕事を周囲へおすすめしてくださったことで広がりました。
依頼者の方との信頼関係が大切なのですね。
そうですね、出会いは運ですが、依頼者の期待に応え続けることができれば、仕事は増えていくと思います。
先日、インタビューさせていただいた、上級ウェブ解析士のシンクレア樹理さんも、Google 広告で知り合ったお客様と事業展開をされていますから、人との出会いと継続は大切かもしれませんね。
あとがき
働き方の多様化により、様々な差を感じる場面が増えたように感じます。
仕事の考え方が大きく変わりつつある時代に、おおたきさんの「強みのかけ算」は、自信につながる素敵な考え方だと思いました。
ウェブ解析士の資格自体、他の資格と比較すると認知度が低い資格と言えるかもしれません。しかし、ウェブ解析士の知識と多種多様なスキルを掛け算し、多方面でご活躍される方が増えています。そんな強みのかけ算が、ウェブ解析の新たな可能性を切り拓くのではないかと思ったインタビューでした。
おおたきさんのウェブサイト
可愛いイラストで、おおたきさんの主力商品がまとめられています。ポートフォリオサイトとしても、参考になる素敵なサイトです。