「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。47人目は、ブルースクレイ・ジャパン株式会社 ゼネラルマネージャー、ウェブ解析士マスターの里村仁士(さとむら ひとし)さん。
劇団員の経験をもつ里村さんは、演劇表現とデジタルマーケティングをかけ合わせるマルチプレイヤー。ウェブ解析士講座、SNSマネージャー講座を開催する傍ら、ウェブ広告に特化した新資格の創設、音声コンテンツ配信など、さまざまな挑戦をされています。演劇とデジタルマーケティングは、はたから見ると異なる舞台ですが、大勢の人の前に立ち、メッセージを伝える点で共通する喜びを感じたそう。里村さんが歩んだ道のりと、今後のビジョンを伺いました。
(インタビュー・編集:ライター ふじねまゆこ)
演劇とビジネス、どの舞台でも人を魅了したい
――はじめに、自己紹介をお願いします。
里村仁士さん(以下、里村さん):里村仁士と申します。ブルースクレイ・ジャパン株式会社に所属していまして、2010年の立ち上げ時にジョインし、今年で12年経ちました。主に運用型広告の事業統括をしてきまして、現在はインハウス支援、企業トレーニングなどの教育事業を管轄しています。ウェブ解析士マスターの活動は、ウェブに関わるトレーニングをテーマに、ウェブ解析士講座を定期開催しています。その他、チーフSNSマネージャーとして、SNSマネージャー講座も開催しています。
――里村さんご自身のウェブサイトを拝見しました。20代は劇団の世界、30代以降はウェブマーケティングの世界でご活躍中とのこと。2つは相いれない存在に思えるのですが、方針転換のきっかけがあったのでしょうか?
里村さん:僕の場合、はっきりした転換点はなくて、どちらも比重を変えながら並行していたように思います。今も、声をかけられれば芸能的な取り組みに参加していて。ただ、性根は理系気質で、数字やデータ分析は昔から得意でした。役者を志して上京したとき、大学は出ておかなきゃと思って選択したのは物理学科です。
――物理学専攻の劇団員は、珍しかったのでは?
里村さん:そうですね。振り返ると、劇団の公演告知は何日前にメールするといいか分析したり、Excelで観客動員数を分析したり、今に通ずるものがあったかもしれません。
――自然とウェブ分析に取り組まれていたのですね。劇団員になる前から、ウェブやパソコンは得意でしたか?
里村さん:得意なほうだったと思います。当時はインターネットが普及し始めたばかりで、パソコンは今よりも高い買い物でしたから、いろいろやってみようとホームページを作りました。僕の個人サイトは、20年以上前に取得したドメインで運用し続けています。
――ずっと進化を続けて、温められたドメインですね!
里村さん:最初は、役者の活動を広く知ってもらうために、自分のメディアをもったほうがいいかなと考えていました。ウェブの仕組みを学び始めたのはこの頃です。
――ただ、今はウェブマーケティングのお仕事を中心にされていますよね? 役者業との比重が変わった経緯は?
里村さん:劇団員と並行して、IT系コールセンターのアルバイトをしていました。そこで、経営者から「スタートアップの立ち上げに参加しないか? 」と声をかけられたのが、振り返ってみればターニングポイントでしょうか。
数年後、Google主催のビジネスカンファレンスで登壇する機会をいただきました。その感覚が、舞台の高揚感と似ていて、非常に気持ちよかったんです。フォーマットが、演劇、演技ではなく、ビジネスのフィードバックだったとしても、表現で人に喜んでもらうことが、僕にとって喜びなんだと再認識できました。そこで、役者への考え方に変化が起きたと思います。
――なるほど、どちらも人へ思いを伝える点で共通しますね。
里村さん:20代で学んだ表現技法を、ウェブ業界で生かす。逆に、表現の場にウェブの知識を生かすこともできる。これが僕のミッション「表現で魅了する」に込めた思いです。
広告運用に特化した、新しいカリキュラムの創設
――今、注力していることはありますか?
里村さん:実務で活かせるウェブ広告運用の知識を、多くの方へ伝える仕組み作りに取り組んでいます。ウェブ解析士協会と調整して、ウェブ広告に特化した資格カリキュラムを年内に導入予定です。
――SNSマネージャー講座と、同じ立ち位置の講座ですね?
里村さん:そうですね。ウェブ解析士講座、SNSマネージャー講座と同じく、初級、上級、マスターとステップアップする構成で考えています。
――どういった背景で創設を考えたのでしょうか?
里村さん:毎年、ウェブ解析士に向けたアンケートで、SNSと広告分野のカリキュラムを希望する声が多く寄せられていました。ウェブ解析士協会代表理事の江尻さんから声をいただいたこともあって、多くの方が望んでいることならば、自分の経験を活かして挑戦してみようと。
――ウェブ広告運用の範囲は?
里村さん:幅広く体系的に扱いたいと考えています。複数のメディアを俯瞰的に学習し、広告媒体を使い分ける知識と実行力が身につく講座を目指します。扱う広告媒体は以下のとおりです。
- 検索連動型広告(Google・Yahoo!)
- ディスプレイ広告(Google・Yahoo!など)
- SNS広告(LINE・Twitter・Facebook・Instagramなど)
- 動画広告(YouTube)
――ウェブ解析士の知識から、さらに一歩深める内容になりそうですね。
里村さん:SNSマネージャー講座と同じく、広告、SNSとウェブマーケティングが担う範囲を補完しあうのが狙いです。各講座との相乗効果も期待しています。
――具体的に、どんな方におすすめしたいですか?
里村さん:まだ検討中の部分ですが、個人的には広告を直接運用していない方におすすめしたいです。すでに、広告運用をオートメーション化する流れが業界にあります。クリエイティブやプランニング、戦略立案の重要性が高まるでしょう。
そうなったときに、正しい知識をもとにした戦略立案、代理店への指示、社内チームとのディスカッションを行える人が、今後ますます求められると考えられます。広告運用と少しでも関わりがある方、興味のある方に受けてほしいと思っています。
――どちらかというと、ディレクターが対象ですか?
里村さん:そうですね。広告媒体ごとの細かい操作ではなく、考え方の部分をコンセプトにしたいと考えています。
――ウェブ広告講座で、最終的に受講者がどんなふうになってほしいビジョンはありますか?
里村さん:一番の願いは、ウェブ広告講座で得た知識、経験を実務に活かして、アウトプットしてほしいですね。こういった資格講座でインプットしても、アウトプットする機会がないと忘れてしまいます。学習はインプットとアウトプットがセットです。アウトプットせずに形骸化して忘れてしまうのはもったいない。そうならないために、初級では肩慣らしで知識をインプットし、上級では実践を積み、マスターはエバンジェリストとして伝えられるレベルを目指します。
ウェブ解析士協会を、実践の場にしよう
――ウェブ解析士協会の取り組みに携わるようになったのはいつごろですか?
里村さん:2018年くらいからです。そもそも、ウェブ解析士に興味を持ったきっかけは、広告領域から一歩踏み出して、デジタルマーケティング全般の知識が必要だと感じたから。ウェブ解析士のカリキュラムに触れると同時に、ウェブ解析士マスターの仕組みを知って、「やってみたいな」と思ったんです。
2017年1月にウェブ解析士を取得後、3月に上級ウェブ解析士、10月頃にはウェブ解析士マスターを取得しました。2017年12月に、ウェブ解析士認定講座を初開催して以降、定期開催を続けています。
――里村さんは、学びが趣味みたいなところがあります?
里村さん:「これを知れば、これができるようになるかな? 」という、純粋な探究心でしょうか。ウェブは演劇と違って、結果を出す道のりがシンプルです。インプットした分、アウトプットする。それによって人が喜び、僕自身も感謝され、自分の価値が上がっていく。足し算のように、挑戦した分だけ報われる世界だと思います。
役者の場合、運や才能の要素がすごく大きく、努力だけでは報われない世界。僕自身の頑張り不足もあったけれど、比較するとウェブ業界はシンプルですから、やれる分だけやりたい気持ちは、今も持ち続けています。
――ウェブ解析士を取得している方にむけて、伝えたいことはありますか?
里村さん:資格活用の観点で言えば、資格取得だけではもったいないと思います。同じ課題を持った多くの方と出会うきっかけを活かしましょう。ウェブ解析士の各種コミュニティー、セミナーのほか、実践的な研究会もあります。興味のある場所に飛び込み、つながりを増やしながらインプット・アウトプットができるのでおすすめです。僕はウェブ解析士の体系的な知識だけではなく、むしろその後のコミュニティーが非常に魅力的だと感じています。そこをもっと活用してほしいですね。
――里村さんご自身もコミュニティーをお持ちでしたよね。
里村さん:「Advertising 研究会」ですね。ウェブ解析士協会の研究会の一つでウェブ広告がテーマのFacebookグループを運用管理しています。コロナ禍のなか、1回だけオフラインで集まりましたが、活性化の糸口を探っているところです。先にお話したウェブ広告講座と一緒に、コミュニティーも活性化できたらと考えています。
ご興味をお持ちの方は、こちらから参加できます。
https://www.facebook.com/groups/2686996751416894
――コロナ禍でコミュニティーづくりの難しさをよく耳にします。とはいえ、地域関係なくつながりやすくなった面もありますよね?
里村さん:オンラインのよさは、すごくあると思っています。最近は、VR(バーチャルリアリティ)の技術が進歩して、オンラインコミュニケーションの仕方に変化が見られますしね。そういったトレンドを先立って活用できたらと思っています。
――コロナ禍でオンラインコミュニケーションの技術は格段に進歩していますね。
里村さん:思い出したのですが、20代の頃、地元沼津での舞台公演が夢でした。劇団は退団しましたし、コロナ禍で人を集めるのは難しいご時世ですが……。ウェブ解析士関連の講座ならできますね。機会があれば、地元静岡の方に向けて実現したいですね。
音声配信×ウェブ解析士のコンテンツ
――表現といえば、ラジオ配信もされていますよね。 先日、最新話を拝聴しました。
里村さん:ありがとうございます。個人的な活動のなかで、面白がって取り組んでいることの1つです。役者仲間と、音声配信サービス「Radiotalk(ラジオトーク)」で発信しています。音声配信の盛り上がりから、日本はこれからブームが来ると言われていて、挑戦してみました。
――最近、Clubhouseなどの音声アプリをはじめ、ポッドキャストも充実しつつありますよね。
里村さん:もともと僕はラジオが好きで、この流行に注目していました。今、音声配信アプリ「stand.FM(スタンドエフエム)」で、ウェブ解析士関連の番組を準備中です。
――それは聴きたい!
今年から公式テキストがデジタル化されましたが、文字情報を読むだけではなく、歩きながらウェブ解析士の勉強ができたら、文字と音声でインプットできて効率が良いですよね。
ウェブ解析劇場|ビジネスアカデミーShow:Stand.FM
――資格取得後、復習される方にもいいかもしれないですね。私も、FMラジオやポッドキャストはよく聴きます。
里村さん:僕はオールナイトニッポンなどAMラジオ派ですね。毎日、いろいろ聴いています。実は以前、知人に声が聞きやすいと言われたことがあって、演劇の経験から音声コンテンツも向いているかなと思ったんです。
――里村さんのポッドキャスト(俳優仲間とのトーク番組)、とても聴きやすかったです。
里村さん:そうでしたか! あれは完全に趣味で……。ありがとうございます。
――ご経歴を拝見したとき、劇団員とウェブ解析士が全くつながらなかったのですが、それぞれを活かしたマルチプレイヤーなのですね。
里村さん:セミナーで話すことも、舞台上の演技も、人前で話す点で似たところがあり、経験が役立ったと思います。これからも、それぞれを面白がりながら探求したいです。
あとがき
里村さんから伺った今後のビジョンは、多方面にわたり刺激的でワクワクするものでした。広告に特化した資格、ウェブ解析士のラジオ以外にも、ご自身の探究心と実行力で、ますますおもしろい舞台を繰り広げられることでしょう。
ウェブ解析士協会には、さまざまな経歴をもつ方が活躍されています。業界外の知識との掛け算が化学反応を起こすコミュニティーだと、再認識したインタビューでした。
ウェブ解析士×stand.FM
里村さんが配信する、ウェブ解析士の音声コンテンツはこちら。資格取得を目指して学習する方、復習したい方、どちらにもおすすめです。テキストと合わせて、理解を深めましょう!
ウェブ解析劇場|ビジネスアカデミーShow:Stand.FM
里村さんの各種認定講座
里村さん主催の各種講座はこちらから確認ください。ウェブ解析士認定講座と、上級ウェブ解析士認定講座は、ブルースクレイ・ジャパン独自の特典がつきます。