スキルアップは”異端”? モヤモヤも推進力に変え進化 上級ウェブ解析士、井上繭さん

「仕事とウェブ解析士」がテーマのウェブ解析士インタビュー。今回は、企業のブランディング・プロモーションの企画・制作を行う会社でウェブ担当部署に所属する井上繭(いのうえ・まゆ)さん。52人目のご紹介です。

新卒で入社した企業で主に営業を担当してきた井上さん。3歳・7歳の2人の子供のお母さんでもあります。育休中にも自己研鑽を怠らない井上さんは、キャリアをさらに磨き上げるために上級ウェブ解析士を選びました。2021年8月に合格したばかりですが、今後の展望についても話していただきました。

(インタビュー・編集:上級ウェブ解析士・ナカノアヤコ)

目次

異動したものの、何ができるか

――試験お疲れ様でした! さっそくですが、今の仕事内容を教えてください。

井上繭さん(以下、井上さん):カタログやパンフレット、包装紙などを企画・制作する会社でウェブ担当部署のディレクターを務めています。顧客企業のサイト制作や保守なども受注していて、ウェブ周りのことはなんでもやる部署です。

紙の製品が主力の会社ですが、20年ほど前からウェブの部署はありました。今の部署に2020年10月に希望して異動したものの、それまでウェブの仕事自体が未経験でした。

――ウェブ担当になってからまだ1年もたっていないんですね。どんな体制なのですか?

井上さん:課長以下5人だけの部署で、プログラマーのほか、デザイナー、コーディング担当などです。営業担当の獲得した案件の企画することが多い一方、お客さまから直に連絡をもらうこともあります。保守や修正も行います。専門的なスキルがある人はすることが明確ですが、私の場合は異動してきた時点で何をすればいいの?という状態でした。

会社としての課題はお客さまのアフターフォローが弱かったことです。かっこいいサイトを作ったはいいけれど、実際に効果を出しているのかどうか。異動に際して「マーケティングなども含めて解決に尽力してもらえれば」と言われました。

とはいっても知識も経験も何もなくて。勉強しなくては、ということで検索しているうちにウェブ解析士を知り、2カ月後に合格しました。

学んだことの価値を実感

――順調に合格されたんですね。その後、ウェブ解析士の知識を仕事に生かせましたか?

井上さん:現状の確認からKGI、KPIの設計まで提案できるようになりましたね。このページを作ったら、あるいはこの広告を打ったらどうなるか。そうした将来像をお伝えできるようになりました。

あるお客さまからECサイトリニューアルの計画に関してご相談いただき、私たちから提案したことがありました。それから他に数社の話をお聞きになった後で、私たちに「こういった提案をしてくれる会社とお付き合いがしたい」とのお言葉をくださったんです。学んだことの価値を感じ、さらに知識を深めたいと思いました。

コロナ禍でどんどんデジタルシフトしている中で、会社全体がウェブ関連のビジネスを強化する方針になりました。社外の力も借りることになり、そのうちの一人が上級ウェブ解析士だったんです。

井上さんが勤務する会社の製作実例

――そこで上級ウェブ解析士を目指したんですね。

井上さん:はい。お客さまが「お付き合いしたい」と言ってくださったことに対し、きちんと応えたいと思ったのがきっかけの一つです。

今3歳になる第2子を出産した後、19年5月まで育児休業をとっていました。その間に、これからの人生について考える機会があったのも影響しています。

「キャリア迷子」と言われ衝撃

――どんな機会だったのでしょう?

井上さん:1人目の育休は児童館に通って終わったのですが、2人目は何かしようと、ママ向けのボランティア活動に参加しました。その時にできた友人に「キャリア迷子」だと言われ、衝撃を受けました。今までのママ友は「育休中ぐらいのんびりしたい」「子供が小さいうちは仕事はできない」と考えている方が多く、出産後も仕事をこなしたい、自己実現したいと考えている自分は”異端”なのだと感じてモヤモヤしていたことに気が付きました。

その友人に「友達ができるよ」とそそのかされて(笑)また別の勉強会の運営に参加したりして、そういった思いを共有できる人たちに多く出会えました。復職した後に部署異動を願い出たのも、自己実現のために、また生きていく術としてスキルを身につけたいという思いがあったからです。

もともとものづくりに興味があり、営業としてものづくりに関わりたいと思って今の会社に入りました。当時すでにウェブ担当部署があり、魅力的に映ったんです。でも入社以来ウェブ関連の仕事をしたこともないし、ウェブの仕事をしたいと手を挙げたこともありませんでした。転職するにも、スキルがありません。そんな時に異動願いを受け入れてもらうことができ、たどり着いた一つがウェブ解析です。

四つの資格を矢継ぎ早に取得

――「一つ」とおっしゃいますと、他にも身につけたスキルがある?

井上さん:育休中にFP(ファイナンシャルプランナー)3級・2級の資格を取得しました。ウェブ部署に異動した後は、ウェブディレクター検定(20年10月)、ウェブ解析士、ITパスポート(21年4月)、上級ウェブ解析士(21年7月)を取得しました。いずれもストレートで合格できました。

――矢継ぎ早ですね! 小さなお子さんが2人いる中、どうやって勉強時間を確保したのかぜひ教えてください。

井上さん:タイムスケジュールとしては、午後10時に寝て午前5時に起き、早朝の2時間を勉強に当てています。一夜漬けみたいな感じで受かったものもありますよ。

独学のコツは「まず申し込む」。子育てで自分の時間やお金に制約がある中、せっかく費用をかけたのだから合格しかない!と追い込んでいます。

育休期間を活用してさまざまなことに挑戦した井上さん

――実力がついたと感じる部分はありますか?

井上さん:なにせ解析をしたことがないので、上級ウェブ解析士の修了レポートはとにかく時間がかかりました。取得したデータについて本当に自分の解釈でいいのか自信が持てず、何度も実際のサイトを見にいきました。学ぶべきテーマに沿った指標を全部調べて、それぞれ理由、原因はなんなのかをお互いにつじつまが合うように考えていきます。ようやく提案を書いても、後でなんか違うなと思ったり。

それでも多種多様なデータを解析してみると、事業の全体像が見えてきます。一つ一つ指標をかみ砕いて見る時間が本当に必要なんだとわかってきました。今後のお客様への提案にも生かしていけると感じています。

「役に立ちたい」が生きる術に

――井上さんにとって、スキルアップが前へ進む力になっているのですね。最後に、今後の展望について聞かせてください。

井上さん:今は実務経験の必要性を感じているところで、資格取得に関してはひとまず休憩するつもりです。自分の成長にも、周りの役にも立つと考えています。仕事もそうですが、人のためになるようなことがしたいんです。

育休中の出会いは自分の価値観や視野を広げました。子供がいるからこそ得られた貴重な経験です。モヤモヤを抱えている方には、新たな環境や人との出会いをぜひおすすめします。ウェブ解析士協会でも素敵な出会いがありましたよ。

あとがき

「期待に応えたい」「人の役に立ちたい」という言葉が自然に口をついて出る井上さん。多くの成功体験が、さまざまなことに挑戦する原動力になっていると感じました。一方で育休中の体験がご自身のキャリアを相対的に考えるきっかけになったようです。会社の中で生き抜くも、会社以外の人生を充実させるもあり。上級ウェブ解析士の取得が確かな自信となり、井上さんのさらなる進化を予感させるインタビューとなりました。

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