「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りするウェブ解析士インタビュー。68人目は、三菱電機ITソリューションズ株式会社 経営企画室 企画管理部 マーケティンググループの松尾 陽子さん。
以前こちらの記事でご紹介した岸川律子さんの上司にあたる松尾さん。三菱電機ITソリューションズ株式会社(以下、MDSOL)マーケティンググループ発足時より、自社ウェブサイトの運営や各事業部のサポートづくりを推進してきました。自社ウェブサイトのリニューアルをきっかけにスタートした部門発足の軌跡から、企業のデジタルマーケティングには「現状に気づくための知識」と「実践の積み重ね」が必要なことを教えていただきました。
(インタビュー・編集:ウェブ解析士 ふじねまゆこ)
「新部門発足に必要なものは?」からのスタート
――岸川さんより、松尾さんは御社のマーケティンググループ発足に携わったとうかがいました。グループ立ち上げの背景をお話いただけますか?
松尾陽子さん(以下、松尾さん):マーケティンググループが発足する前は、事業部ごとに製品のウェブサイトを運営しており、全体を束ねる担当者は不在の状態でした。年々、ウェブマーケティングの重要性が高まる中で社内から声が上がり、全社とりまとめ部門として、マーケティンググループの立ち上げとなりました。
私自身は2000年に入社後、経営企画室、総務、営業企画、販売企画と、どちらかといえばスタッフ部門の業務を経験した後、マーケティング部門発足の声をかけていただきました。ITに触れてはいたものの、ウェブマーケティングの経験はなく、今思えば不思議な巡り合わせです。
――前例がないことへの挑戦だったと思います。まず何からスタートしましたか?
松尾さん:「デジタルマーケティングとはそもそもなにかを知る」ことから始めました。前提となる知識・情報を知らなければ何もできません。マーケティング全般を知るために書籍や資格情報を集めるなかでこの資格を知りました。Google アナリティクスも専門用語もまったくわからない状態だったんです。基礎知識を得るためにはウェブ解析士が有用だと判断し、2016年4月に受講しました。
その後、2018年3月にオフィシャルサイトのリニューアルが終わり、落ち着いたタイミングで上級ウェブ解析士を取得しました。リニューアル後もデータを蓄積していたものの、費用対効果はどうなのか。社内で段階を踏んで伝えるレポートの作成には、知識と経験が必要だと感じたからです。
サイトリニューアルに協力いただいたパートナー企業のレポートもありました。しかし、そのレポートが費用に見合ったものか、知識と経験がないために判断ができませんでした。他社視点ではなく自社視点で解析する必要があると感じたことも資格取得の背景にあります。実践経験を積むために、上級ウェブ解析士認定講座は非常に有効でした。
――上級ウェブ解析士認定講座で得た実践的な内容で、特に役立ったことは何ですか?
松尾さん:まず、レポートを自分で作る経験です。これにより、パートナー企業からいただいたレポートを経験と照らし合わせて判断できますし、逆にこちらの要望をブレずにパートナー企業へお伝えすることもできます。講座中のレポート作成などの経験を実務で活かし、新製品がリリースされた際にも、必要な情報をすぐ出せるようになりました。これは書籍で得られるものではありません。
自分たちの事業、自分たちのウェブサイトなのですから、一番理解しているのはパートナー企業ではなく私たちであるべきです。私たちの言葉で成果を表現する経験を講座で得ることができました。
また、有資格者が増えたこともチームの後押しになりました。それまでは私がレポート作成をしていたために、半期に1回ほどしか発行できませんでした。今ではウェブ解析士の有資格者が増え、チームで連携して業務を行う土台ができたと感じています。
実践の積み重ねが、社内のデジタルマーケティングを加速させる
――社内の知識や熱量に差があり、全体の理解を得るのが難しいという声をよく耳にします。御社の場合はいかがでしたか?
松尾さん:弊社の場合、デジタルマーケティングの必要性を経営幹部が早い段階で理解していたので、必要な知識や講座、資格について前向きな姿勢で聞いてくださる環境がありました。とはいえ、お互いに理解を深めるのはとても大切です。今では関係者に向けて頻度を高く、丁寧なコミュニケーションをするよう意識しています。解析結果をイントラネットに載せるだけでなく、データの傾向や成果に対するコメントを添えたメールを月に1回送付するようにしました。
また、事業部ごとに取り扱う製品・業種が異なるため、結果的にウェブ施策も事業部に合わせた対応となり、そのサポートも行っています。その際、過去の積み重ねが役立つ場面も増えてきました。例えば、リードジェネレーションサイトで資料請求のCVRを2.4ポイント改善した事例がありました。フォームの項目数や見せ方を再検討したんです。こうした共有知を蓄積し他と共有する部署になった点も、社内理解が進んだ背景にあると感じます。
――業務の中で、認定講座では得られなかった知識、ノウハウが必要な場面もあると思います。新しい情報をどのように取り入れてきましたか?
松尾さん:実践の積み重ねとデータ蓄積ですね。積極的に情報収集や学習をしてくれるメンバーがいるので、私は社内外の調整を担っています。役割分担をしてチーム全体の共有知を増やしてきました。
新たな知識が増え、経験値が上がる事でスピード感が増したと感じます。これには、上級ウェブ解析士認定講座で実践したフレームワークだけではなく、後から得た知識も組み合わせて活用しています。
PDCAを重ねながら、今後も人材育成と組織の底上げを図る
――今後、マーケティンググループとしてどのようなビジョンを描いていますか?
松尾さん:現在チームは6人体制で、業務は多岐に渡っています。毎週のメルマガ発信、コラムの発行、事業部ごとの主力製品の効果検証やサポート、月1回のレポート報告、コーポレートサイトの更新、SEO施策……。取り扱い製品は100を超える勢いで、サイト内のページ数も増加中です。さらにはGA4への移行やCookieの同意バナー設置などにも対応しなくてはいけません。今あるリソースの最適化や優先順位を検討中です。
今後、さらに効果検証にも力を入れていきたいですね。その体制をつくるためにもウェブ解析士協会の各種認定講座の受講によるメンバーのスキルアップをしていきたいと考えています。また、自社内だけでなくグループ会社とも連携し、お互いに掛け算できるような活動を通じて、知見とノウハウを共有できたらと考えています。
――岸川さんのインタビューでも感じたことですが、お話から前向きで働きやすい環境がうかがえます。
松尾さん:そうですね。お互いがフラットに意見し合うチームだと思います。ときに議論が白熱しすぎることもありますが(笑)。それはメンバーが仕事に熱意をもっているからこそ。とてもありがたいことです。だからこそ、メンバーが自由に意見を言える環境づくりを心がけています。
どのような組織も、信頼関係のもとで前向きな意見交換と行動ができるように思います。2018年3月に公開したオフィシャルサイトリニューアルでは、4名で対応しておりましたが、公開が迫った1月にインフルエンザの流行でメンバーのうち2人がインフルエンザの罹患。さらに家族の看病で出社困難な状況下、在宅でリニューアル対応をしてもらうなど、大変な状態に陥りました。それもお互いに支え合い、乗り越えたことで今があります。
自社の言葉でデジタルマーケティングを語るために
――御社と同業種の方へ、この資格のメリットをお伝えするとしたらどんなことが挙げられると思いますか?
松尾さん:今後ますます企業のオフィシャルサイトの重みは増していくと思います。なぜなら、コロナ禍で対面の場が減り、オンラインミーティングが増え、ウェブサイトに求められる役割が以前よりも大きくなっているからです。多くの方がデジタルに頼らざるをえない状況が3年続いたことで、デジタルに感じたメリットはコロナ禍後も活かされていくことでしょう。
そのとき、パートナー企業へウェブ解析を含むすべてを丸投げするのはリスクです。なぜこの数字なのか。ほかにも判断材料はあるか。知識がなければ、事態に気がつかないまま事業を進めてしまいかねません。数字を自分たちで多面的に深掘りし、仮説と違う結果になったとき別の視点でできることを見つける力がつくと、パートナー企業との連携のスピード感が全く変わります。
さらに、私たちが感じている内容とすれ違った時、「私たちの考え」をはっきり伝えられることで、パートナー企業と高い精度で対話ができます。また、パートナー企業との架け橋になる部門が社内にあることで、各事業部の希望や戦略を通訳できる役割も担えます。これらを実現する体系的な知識、実践の両面においてこの資格は有用だと思います。
――体制づくりの面でも、アドバイスをお願いします。
松尾さん:おそらく、事業会社でマネージャーが上級ウェブ解析士を取得して事業推進する企業は少ないのではないかと思います。その上で、やはりメンバーが携わる業務について上長の理解は必要です。上長が経営幹部とのつながりをもちつつ、メンバーとの連携をスムーズにする意味でも、ウェブ解析士で知識を得て、上級ウェブ解析士で経験として活かすメリットは大きいです。
この資格は使いこなすことに意味があります。より多くの方に取得していただき、知識を使いこなす機会として活用できれば事業のプラスになるはずです。
あとがき
社内のデジタルマーケティング推進へスタートから携わった松尾さん。自ら学び実践し、チームを作り上げ支える包容力を感じたインタビューでした。「自らの言葉で事業を語るべし」というお話は、他のウェブ解析士インタビューでもよく耳にする言葉です。知識を得て実践し共有知を増やすチームづくりのあり方、非常に参考になりました。
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(編集部補足:MDSOLマーケティンググループのメンバーが各事業所のYouTube撮影チームをサポートしています。上級SNSマネージャーの資格保持者による運用企画書の作成や、アカウント作成サポート等により、各部署の挑戦を支えられているそうです。)
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