会員サービスをより便利に ウェブ解析士らが情報発信を底支え 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)

自動車・バイクの故障やトラブルの際、レッカー車などのロードサービス車で現場に駆けつける事業を行う一般社団法人日本自動車連盟(JAF)。2021年度の救援活動件数は216万件に上ります。現場活動の印象が強いものの、近年はウェブサイトやスマホアプリでの情報発信に力を入れているそうです。

ウェブ解析をJAFのサービスにどう取り入れているのか。また、クルマ離れや競合サービスの台頭をどう受け止めているのか。JAFマーケティング本部ウェブマーケティング推進課長の根木美香子さん、また株式会社JAFメディアワークスのメディアグループ、真下俊哉さんにお話を伺いました。

(インタビュー・編集:上級ウェブ解析士 ナカノアヤコ)

――JAFは1963年に設立されたので、間もなく創立60周年ですね。昨今、ライフスタイルの変化や経済状況などを背景に若者の「クルマ離れ」が指摘されることもあります。事業への影響はいかがでしょうか。

JAF・根木美香子さん(以下、根木さん):JAF会員は1993年度に1000万人を超え、2021年度に2000万人を突破しました。(2022年7月末時点:2012万人)。毎年20万〜30万人ずつ増えています。

JAF会員の年齢層は40代〜60代がボリュームゾーンです。男女比はおよそ6対4ですね。入会のチャネルはディーラーが多いので、ディーラーで車を買う層と重なっているかもしれません。確かに、若年層へのリーチは課題の一つです。

「最近の車は故障しなくなった」とも言われます。そのためJAF会員数が減っているのではないかとの印象をお持ちの方もいらっしゃるようです。実際には、申し上げた通り会員数は増えているんですよ。都市部と地方ではライフスタイルが異なるからかもしれないですね。地方の生活に車は今でも欠かせません。故障が減ったとしても、人のミスが原因のバッテリー上がりやパンクは減りません。ロードサービスのニーズは相変わらずあるんです。

根木さん:損害保険会社の契約でもロードサービスが受けられますが、保険ではカバーできない事案もあります。利用回数が限られているとか、雪にはまって動けなくなった場合の救援などです。JAF会員なら保険では対象外のトラブルにもサービスを受けられます。

――ドライバー・ライダーであれば、会員になるメリットは大きいですね。会員証はスマートフォンでも表示できるようになりました。

根木さん:はい、2014年11月にスマートフォンアプリをリリースし、現在500万人超にご登録いただいています従来通りプラスチックの会員証も有効です。

ロードサービスではスマホアプリだと状況をチャットで伝えたり、自分の現在地をGPS情報で伝えたりできます。JAFのサービスカーが今どこにいるかもマップで確認することができます。

ほかにも現在地付近の優待サービスを受けられるお店を探したり、お得なクーポンを手に入れられたりと、便利に使っていただけますよ。

――飲食店や施設での割引、プレゼントなどのほか、「チャイルドシート取り付け点検」といった講習会やイベントの情報も掲載されていますね。

根木さん:各地の自治体や優待施設などの情報を発信するのは都道府県ごとにある各支部の担当です。JAF職員は全国で合計4000人弱。うち約600人がウェブページを制作し情報を発信する業務に就いています。

――ウェブ関連の職員数がそれほど多いとは想像していませんでした。

根木さん:ロードサービスが基幹事業なのは間違いありませんが、優待施設との交渉や情報発信も重要な事業です。

優待サービスを提供してくださる店と直接お話しした上で情報を発信します。お店としては来客の増加、JAFとしては会員にとって役立つ情報提供が目的です。お互いにWin-Winの関係となる手段としてウェブをうまく活用したいと考えています。

以前から各支部で会員優待サービスの発信をしてはいましたが、支部によって情報の粒度がばらばらでした。そこで2019年にコーポレートサイトをリニューアルし、新しいCMSを導入しました。情報発信はこれまで紙媒体がメインでしたが、情報発信の頻度や利便性を鑑み、デジタルに移行しています。環境負荷軽減も理由の一つです。ユーザーが欲しい情報を探しやすいよう変更しました。

JAFメディアワークス・真下俊哉さん(以下、真下さん):当社は制作会社という立場からJAFのサイトリニューアルを一緒に行いました。

――紙媒体といえば、会員誌を発行されていますね。

真下さん約1200万部発行している『JAF Mate』です。前身も含めると50年以上の歴史があり、当社が企画編集、制作から発送までを担っています。『JAFスポーツ』『JAFドライブMAP』といったJAF会員向け出版物を制作しているほか、道路地図や自動車購入ガイドブックなど旅・車に関するものや、健康・趣味などの書籍やムックなども制作、販売しています。

『JAF Mate』もデジタル化が進んでおり、2022年からは紙での発行が年10回から4回に変更となりました。そのタイミングでウェブサイト『JAFMateOnline』を立ち上げ、ウェブでさらに多くの楽しくて役立つ情報を読んでいただけるようにしました。

――JAF自体も長い歴史をお持ちです。これまで、デジタルシフトは順調でしたでしょうか。

根木さん:新しいCMSを導入し、効率よく業務ができるようになりました。例えば発信する情報の抜け漏れをテンプレートを用いて防いだり、紙媒体の入稿と一本化したりといったことです。その結果、職員のリソースを優待施設との交渉に振り向けられるようになりました。優待施設数は現在、全国で4万8000に上ります。タイムリーな情報発信も可能になりました

サイトリニューアルを進める中で、コンサルタントに入ってもらいました。その中にウェブ解析士マスターの方がいて、ウェブ周り、デジタルマーケティングの知識を教えていただくとともにウェブ解析士の資格を知りました。意識改革の一助にとウェブ解析士協会の法人会員となり、2019、2020の2年で60人弱が合格しました。その後もウェブに関わる職員が資格にチャレンジしています。

――制作関連メンバーのうち1割を超える方がウェブ解析士ということですね。

(左から)根木さん、真下さん

根木さん:ウェブ解析士の資格を持つことで、若い職員が納得と自信をもって業務を進めるようになったのではないかと思います。

2021年度には、ウェブ解析士資格を持っている1人の声かけで月に1度オンラインの社内勉強会を開き、資格を持っていないメンバーも参加しています。

内容はSEOやウェブのライティングに関する知識です。SEOではタイトル作り、ディスクリプションのコツなど。ライティングではPREP法、AIDMA法といったスキルについて取り上げました。

テンプレートを統一したとはいえ、600人がそれぞれウェブページを作ってきました。ウェブに関するリテラシーに差があり、全体的なスキルの平準化と底上げの必要性を感じて発案したものです。

――モチベーションの高さを感じます。JAFのコンテンツ制作を担っているJAFメディアワークスにも、ウェブ解析士資格を持つ社員がいらっしゃいますね。

真下さん:2019年度から取得を奨励していまして、ウェブ解析士が17人、上級ウェブ解析士が7人います。社員数は100人弱ですので2割ほどですね。制作関連部署での資格取得者が多いですが、営業や編集の部署にもいます。

当社はウェブ制作に携わる人間も多いです。知識は持っているものの、何をどこまで知っているかといった知識の質や幅は人によってまちまちでした。それがウェブ解析士の学習を通じ、お互いに話が通じるようになりましたね。

JAFメディアワークスの事業

真下さん:また、当社はメディア運営、ウェブ広告も事業展開しています。クライアントやベンダーと話がしやすくなりましたね。営業部門では、しっかりとした根拠をもって説得力ある提案ができるようになりました

編集部門でいうと、紙での発行が長くそのスタイルにこだわりを持っているメンバーもいます。ただ、メディア融合は今後も進んでいきます。紙での編集の知識を持ち、かつウェブでの知識が加われば、どちらの制作もスムースになるはずです。

――先ほどご紹介いただいた、『JAFMateOnline』ではウェブ解析をどのように生かしているのでしょうか。

真下さん:会員とJAFをつなぐコミュニケーションツールという冊子版のコンセプトはそのままにスタートしました。冊子と同様の記事が読めるだけでなくオリジナルの記事や懸賞など、より充実した内容をお届けしています。

オンライン版になったことで各ページやカテゴリ単位でアクセスや読了などの細かな分析が可能となり、また自然検索やメルマガなどといった流入経路別のユーザー動向もわかるようになりました。サイト立ち上げ時の解析設計や毎月の解析レポートの作成にあたっては、上級解析士資格を取得した際に学んださまざまな手法が役に立っています

今後は既存サイトの解析だけでなく、上級ウェブ解析士の知識を生かして新しいビジネスを開拓したいです。

――ロードサービスにとどまらず、交通を切り口にいろいろな挑戦をしていらっしゃるのですね。最後に、ウェブ解析士協会への要望がありましたらお教えください。

根木さん:名刺に「ウェブ解析士」と入れたくなるよう、資格がメジャーになってほしいです! 取得したいと考える人が増えると思います。

――ご期待に添えるよう、努力してまいります。ありがとうございました。

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