「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。11人目は、北海道・旭川市に拠点に、海産物を中心とした北海道グルメのインターネット通販を展開するノース物産株式会社の常務取締役を務める、鈴木さん。現在は自社ECサイト「最北の海鮮市場」と「北海道わけあり市場」の2店舗の運営を統括し、社内でEC事業やウェブマーケティングを先導していく立場でいらっしゃいます。
元々は外食業界にて接客の基本を学び、店長・エリアマネージャーまで務めた鈴木さん。サラリーマン勤めをしながら、独学でECサイトの構築と運営を行ったというパワフルな鈴木さんが大切にする “おもてなし” について話を伺うことができました。
(インタビュー:ウェブ解析士マスター 小杉 聖)
(編集:ウェブ解析士 中川 千春)
顔の見えないネットショップでも、お客さまに喜ばれる “おもてなし” を
鈴木さんは北海道にお住まいとのことですが、今はどんな仕事をされているんですか?
北海道グルメのインターネット通販を扱うWeb事業部の責任者として入社し、途中から、社内のもう一つの事業部である「BW事業部」の両方を見るようになりました。BW事業部はボトルウォーターの製造販売を行っています。
入社以来ずっとプレーヤーとして私一人で何でもやってきましたが、数年前から少しずつ部下に手放していき、管理や統括をする側に回りました。
ウェブ担当者として入社されたとのことですが、ウェブの世界に入る前は、外食業界のキャリアが長かったそうですね?
飲食店ではホールスタッフから始まり、店長、そして最終的にはエリアマネージャーになりました。10店舗以上を担当し、従業員の管理やクレーム対応もやりましたので、ひととおり接客の基本から管理・統括業務まで学ぶことができましたね。
接客のプロじゃないですか……!それだけのキャリアがありながら、ウェブの道に進もうと思ったんですね。どんなきっかけがあったんですか?
ちょうど Windows が出てインターネットが普及し始めた頃、「すごいものが出たな〜」って、その可能性に惹かれましたね。「このまま生きていたら、世界の半分しか接していないことになる。将来を考えると、これじゃ食いっぱぐれるな」と思い、ウェブの世界へ踏み出したんです。
仕事をしながら独学で勉強して実践して、何社かで学ばせてもらいながら経験を積みました。
未経験から独学で学んで、ECサイトの立ち上げまで!?すごい行動力ですね。
とにかく面白かったんですよ。自分でECサイトを立ち上げて、運営もやっていました。商品管理・販売から、画像制作からコーディングに至るまで、全部ひとりでやりましたね。
ご自身で立ち上げられたそのECサイトでは、何を売っていたんですか?
稚内の知り合いが扱っている海産物を売っていました。最初に売れた時は、本当に感動しましたね。自分でゼロから作って、やっとお店らしくなったところから買ってもらって。「自分で稼いだんだ!」という実感が持てましたし、非常に良い経験になりました。
その後、今の会社に入社されたのですね。ちょうど、通販事業が急成長されていたところだったとか。
1999年のネット通販黎明期から、北海道の海産物専門店としてスタートしたお店でした。私が入ったときには某ショッピングモールで売上上位にランクインしており、数年に渡って連続表彰を受けていて、急拡大していましたね。
おお……ショッピングモールはポジティブ・ネガティブどちらの話も伺いますが、実際、入社後に担当されてからの印象はどうでしたか?
当時は “とにかく他店より1円でも安いことが正義” だったんです。他店と簡単に価格で比べられちゃいますし。あとは、ショッピングモールの担当者と仲良くして良い条件を勝ち取ることがセオリーとか……。
それをどう捉えるかは人それぞれだとは思いますが、私は 「全然お客さまの方を向いていないな」と感じたのが、正直なところです。
なるほど……結局、そのショッピングモールからは脱したんですよね。最初にどんなことをされたんですか?
まずは現状を把握しようと、利益が出てるのかを細かく見てみたんです。そうしたら手数料負担が大きく、儲けはほとんど無い状態で……。
「これなら、モール売上を捨てて、自社サイトで自分たちらしいお店作りに力を入れてもいいのでは」と考えるようになりました。
ただ、当時は売上の7割をショッピングモールが占めていたので、辞めるタイミングが難しかったですね。悩みに悩みましたが、最終的には自社サイトだけに絞りました。
それだけの売上を担っているものを辞めるのは、非常に勇気のいる決断だったでしょうね。
そうですね、中長期での成長やお客さまとの関係を見据えながらも、やはり会社としては目先の売上や利益を上げないといけない部分もありますから、本当に難しかったですね。ただ「価格競争から脱しなければ、未来はない」「これからはコンテンツファーストだ」という想いで、切り替えていきました。
軌道に乗るのに結局のところ5年くらいはかかりましたけど、やはり長期的に見ていかないといけないと思いますね。
その方針が固まってからは、人一倍の想いのこもった接客の実現に取り組まれたんですよね。
はい。……実は、私はとても心配性で、周りの目がとても気になってしまうんです。
突然のカミングアウト(笑)
すごくおおらかで、あまりそうは見えないのですが……?
いえいえ、本当に気が小さい男ですよ(笑)
こんな性格の私が接客業の飲食店で働いたことで、お客さまに不快な思いをさせていないか、怒らせてしまわないかなど、とても敏感になっていたんです。そのため、どんなに美味しい飲食店に行っても、店員の接客がちょっとでも悪いと、楽しい気持ちになれなくなります。
繊細ですね……!
ただ、飲食業に関わっている頃から、このような思いを私たちのお客さまにはさせたくないと強く思っていました。
ですから、インターネット通販という「インターネット上のお店」でも、私がこれまで大切にしてきた “おもてなし” をやりたいと考えるようになったんです。
嫌な気持ちをそのお店に向けず、ご自身とお客さまへのサービス向上に転換して、具体的に活かしていったんですね……!自社ECの成功のポイントが「おもてなしへの感度」というのは、実は本質なのかもしれないと思いました。
鈴木さんのネットショップ改善の取り組みは以下にも詳しく掲載しておりますので、ぜひご一読ください。インハウスでECサイトを成長させた事例として非常に参考になります。
裏付けや効率化のための “手段” としてデータを活用
これだけの成長を支えた鈴木さんが、ウェブ解析士を取得したきっかけを教えてもらえますか?
2013年6月頃に取得しました。きっかけは、育てていくと決めた自社サイトで集客をやっていきたいと思ったからですね。
まずは Google アナリティクスを導入して、リスティング広告も始めようとしたんですが、「いろんな指標や数値があるけれど、まず何を見ていいかがよく分からない…」という状態になりまして。マーケティングを専門的に学んだこともなかったので、専門用語もよく分からないという感じでした。
ツールは導入したものの、専門用語ばかりでどこを見たら良いのかわからないというのは、よくありますよね。
そうやって独学中に迷子になっていた頃、ちょうど小川卓さんのアナリティクスの勉強会が札幌でありまして。「今まさにこれを学ぶべきだ!」と思って参加したら、「いやぁ、これはすごい」と予想以上の刺激を受けて、もっと学んでみようと思いましたね。
ウェブ解析士の資格は、勉強して1年後に取りました。
ウェブ解析士を取ってみて、どうですか?
やっぱり一番は、用語や指標に対する理解が深まったというのが大きいですね。自社に必要なKPIがどれなのかということもわかりましたし。今までは日常業務をやりながらいろんな施策をやってみるものの、なかなか振り返りまではできていなくて。「この施策が良かったのか?なぜ良かったのか?」というところまで踏み込めずにいました。
でもウェブ解析士の資格を取ってからは、1つの数字を継続的に見て長期で判断できるようになったし、自社の強みも分かるようになりました。なにより、やるべきことと、やらないことがわかるようになりましたね。
ひとつのデータや数字を追いかけていくと、そこから見えることってたくさんありますよね。
“当社の商品やサービスについて予備知識がない人が来た時に、どう感じるか” が数字を通じてわかるようになりました。
たとえば、リスティング広告の広告文への反応なんかがわかりやすかったですね。作り手の思い入れよりも、「北海道産」と入れた方が良い反応が得られたりとか……売り手と買い手の気持ちのギャップを突きつけられたときは、やっぱりちょっと衝撃的でした。
売れている商品がなぜ売れているのか、その理由がわかるようになってくると、データと感覚を研ぎ澄ませてポイントをつかめるようになりましたね。
実践しているからこその、言葉の重みを感じます。鈴木さんが日頃よく見ている指標とかはありますか?
メルマガのデータは毎日見ていますね。HTMLメールかテキストメールか等にもよるのですが、開封率・クリック率・コンバージョン率・流入率などをチェックしています。
世間では「メルマガはもうオワコン」なんて言われることもありますが、鈴木さんとしてはどう思いますか?
メールを送る時に、ムダなメールを送らない。嫌われるメールを排除することを徹底していますね。
興味の無い人や関心の低い人には送らないように、購買やサイト訪問履歴など、お客さまの状況に応じて細かくセグメントを分けて、それに応じた内容・頻度で送るようにしています。
さすが、接客のプロらしいアプローチですね!
私の考えでは、興味のない人に押し付けるのはナシだと思っていまして。数年前から、メルマガの一斉配信を禁止しているんです。理想としては、“お客さま一人ひとりに応じた接客”を目指したいですね。
より多くの人に “データや数値を見る大切さ” を伝えていきたい
中小企業の方は「ウェブは苦手」とか「横文字に挫折しちゃって」という方も少なくないですが、鈴木さんは貪欲に知識を吸収して形にしていますよね。オススメの本や情報源ってありますか?
特にこれといった決まった本や情報源はないんです(笑)
ただ……そうですね、お酒が好きなので、社内外で活躍する先輩方から、お酒の席で話を聞いて勉強している感じですね。自分より目上の人から話を聞く機会が多かったので、まわりの人に育てられていると思います。
ウェブ解析士の資格で得られた情報も、必要な知識をピンポイントで実務に活用しているようですね。
ウェブ解析士って取ればOKという資格ではなく、必要に応じて活用する資格だと思いますね。学んだ知識を活用する現場がセットであるといいと思います。上司なり部内の人なり、周りを巻き込んでやるのがいいのかなと思いますね。
周りを巻き込むのに、何かコツとかってありそうですか?
ウェブやデータの大切さを実感させて、口説き落とすのがいいかと(笑)
兼務するようになったBW事業部では、新規契約獲得のために飛び込み営業をすることも多かったんです。本部からの方針もそうだし、今までの責任者もそうやっているからということで。
その話を聞いた時、「今の時代、いきなり家のインターフォンを鳴らしても出てくるわけないよね。そんな人が来たら怪しくない?自分がされたら、嫌だと思うはず」って思ったんです。
確かに自分がお客さまだと嫌だと思うことであっても、仕事になると「今までそうやってたから」って疑問を持たずにやってしまうことってありますよね。
「営業といえば足で稼ぐ」という考え方の人も多いと思うんですけど、「営業活動に裏付けとなるデータをつけたら、もっと効率の良い営業ができるんじゃないか?」って考えていまして。提案の際にも数字を見せることで、説得力を出して話ができるんではと思いますね。
データとアナログのどちらかに偏るのではなく、時代に合わせた柔軟性があるのが素晴らしいです!
まずは「チラシやイベントとかの施策をやってみて、どんな反応があるか?」を数値化して共有する機会を増やしました。最近では、営業メンバーもデータから見る仮説と現場の声の両方を感じて、営業に役立てているように感じます。
アナログの現場にウェブの考え方やエッセンスを入れたことで、徐々にですが良い方向に回って行き始めたなと思います。
ずっとアナログだった環境をそういう方向に変えられるなんて、これこそイノベーションですね!
まだまだアクションを起こしていきたいですね。
その意味でウェブ解析士協会さんは、アクションを起こさせることにとても重きを置いているなという印象を受けます。例えばイベントであれば、内容はもちろん、告知の仕方や集客の進行などがよく練られてるなといつも感心しています。そんな情報を受発信するだけでも勉強になっています。
自分の周囲はもちろん、より多くの人が「データや数値を見るのって大事なんだ」と思う人が増えたら、世の中はきっと、もう少し良くなるんじゃないでしょうか。
あとがき
鈴木さんは「大家族のお父さん」といった印象なのですが、そのどっしりと安定したオーラは繊細さから生まれていたというのを知り、衝撃を受けました。反面、まずは自分でとことんやってからチームに展開するという大胆さも持ち合わせていらっしゃり、スタッフの皆さまからの信頼が厚いことも想像に難くありません。
ウェブ解析士の資格に関しては知識の増強以上に、交流や学習の機会を大切にされているので、 “ウェブ解析士のおいしいところ” を味わっているようにも思いました。実際、知識はインターネット上で得ることができますが、クリーンでプロフェッショナルな方々と交流できるのは、この資格の大きな魅力だと思います。
心からお客さまを愛しながら、現場に立った実践者であり続け、さらに部下を育てていくことを、とても楽しんでおられるようでした。ウェブ解析士として外部コンサルティングは受け付けていらっしゃらないものの、北海道のイベントでお会いできれば、数々の裏話を聞けるかもしれませんよ。
北海道の美味しさと楽しさを発信!
通販サイト『最北の海鮮市場』では、北海道の厳選された食材・食品を販売しております。北海道には四季折々の特産品があり、カニ、アスパラ、うに、メロン、とうもろこし、いくら、秋刀魚、牡蠣など一年中美味しいもので溢れております。その美味しさと北海道の楽しさお届しているスタッフ手作りブログも人気です♪特にとうもろこしの生育日記は毎年人気のコンテンツで、農家さんと一緒にとうもろこしを育てているような気持ちになります。収穫後のとうもろこし美味しさは格別ですよ。
北海道グルメの『最北の海鮮市場』
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