「仕事とデジタルマーケティングと資格」をテーマに、ウェブ解析士協会会員の働き方を深堀りするインタビュー。88人目は、株式会社Banso 代表 久保田 善博(くぼた よしひろ)さん。生まれ育った茨城県土浦市に貢献したい思いから、ウェブ解析士協会の地方DX委員会に参加し、2023年には土浦市との「中小企業等ICT支援に関する連携協定」の締結を推進しました。今回は連携協定の経緯とともに、諦めずに挑戦し続ける大切さを教えていただきました。
(インタビュー・編集:ウェブ解析士 ふじねまゆこ)
地方を元気にするウェブ解析士にあこがれて
――久保田さんはウェブマーケティングのコンサルティング事業を展開されているそうですが、具体的にどのような支援をされているのでしょうか?
久保田 善博さん(以下、久保田さん):「中小企業のマーケティングを伴走するように支援する」をコンセプトに、企業の販路開拓や新事業の企画をお手伝いしています。
また、ウェブデザイナーを対象に「DXマーケター養成講座」(https://dxmarketer.jp/)を開講し、私と同じように経営者の伴走支援をしたい独立志向のウェブデザイナーを支援する講座事業を行っています。
――なぜ、ウェブデザイナーを対象に?
久保田さん:私自身がウェブデザイナーとして仕事する中で、受託制作だけでなく、経営層と直接コミュニケーションを取って仕事をしたいと考えるようになり、マーケターに転身した経緯があります。この心境の変化は、デザイナーとして活躍されている方の多くが経験されているのではと思うのです。そこで、同じ課題を持つウェブデザイナー、これから独立したい独立志向の方を主な対象としています。
もちろん、コピーライターや経営者など、肩書に関係なく受講できますし、受講生の業種業態もさまざまです。そしてほとんどの方がフリーランスか、これから独立を予定している方々です。
――久保田さんがウェブ解析士マスターを取得されたのも、会社員から独立するタイミングだったそうですね?
久保田さん:そうです。独立を考え始めた時点ではまったく自信がなくて、こんな状態から独立できるのかと悩みました。自分に自信をつけるためにウェブ解析士マスターへ挑戦したのです。
――マスター講座と試験に挑戦してみていかがでしたか?
久保田さん:実は私、マスター講座の試験に何回も落ちては挑戦していまして……。中でも苦手だったのはロールプレイング試験で、わかりやすく解説する能力が問われるものでした。正直に言うと、5回目の再試験でやっと合格できたのです。
コロナ禍以前の試験は、講座の期によって受験会場が違いました。北海道、東京、大阪、福岡、岡山……。大変でしたけど、諦めずに挑み続けました。
――なかなかそこまで、粘れないと思います……!
久保田さん:そうですよね。だからこそ、ここまでウェブ解析士マスター講座を活かしている受講生はいないと思っています。私が講師として立っているのは、このとき諦めずに挑戦し続けた経験のおかげです。
――途中で諦めなかったのは、なぜですか?
久保田さん:講座で名誉会長の江尻さんから、「地方の中小企業を元気にしたい熱い思いからウェブ解析士協会を立ち上げた」と聞いて、とても共感したからです。私もまさに、江尻さんと同じことをしたい!って。
また、すでに地域貢献されていたウェブ解析士のご活躍は、調べるほどすごくかっこよくて! こういうふうに自分も活動したいし、そんなふうに地域貢献する方をもっと増やしたいと強く思ったのです。
熱意が伝わった! 土浦市との連携協定
――昨年(2023年)、協会と茨城県土浦市との連携協定を後押しされたそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?
久保田さん:マスター講座の受講中(2018年)から地域貢献したい思いがあったものの、実現できませんでした。実際に土浦商工会議所に伺ったのですが、ご挨拶だけで終わってしまい、具体的な取り組みにはつながらず……。
そんな折に、ウェブ解析士協会の地方DX委員会の活動を知り、もう一度チャレンジしてみようと思い立ちました。委員会には、再挑戦の良いきっかけをいただいたと思っています。
――市役所に直接お電話したとのことで、窓口の方も驚かれたのでは?
久保田さん:最初は「市民向けのスマホ講座なら、講師を募集しています」とご案内いただきました。正直に言えば、(市民向けのスマホ講座は)地方DX委員会のミッションとも、私がやりたいこととも違います。ただ、まずはチャンスを掴むために、打ち合わせをお願いしました。何がなんでも機会を掴みたかった。
打ち合わせには、実績ある協会の精鋭にご参加いただきました。すでに東かがわ市との連携協定を実現していた八木さん、(土浦市と隣接する)つくば市在住のウェブ解析士マスターの古橋さんと神谷さんです。彼らの実績とともに、協会の取り組みと真価をお伝えしたのです。「実績のあるデジタルのプロフェッショナル人材がそろっているんです。この機会を逃すのはもったいないですよ!」と、熱意を込めて伝えました。結果、初対面にも関わらず協定を結ぶ方向で進めていただけました。
――すごい!市役所の方も驚かれたでしょうね!ちなみに連携協定から1年経ちましたが、どのような成果が得られましたか?
久保田さん:ひとつは、土浦市の事業者のみなさまへのDX支援体制が整いました。
土浦市には特産のレンコンをはじめ、市が認めた様々なブランドがあります。それらを作る農家や事業者を支援する「土浦ブランド認定事業者ICT支援相談室」を開設し、デジタルに関わるさまざまなお悩みに応えています。
加えて、土浦市のふるさと納税事業者を対象にしたICT支援相談室も開設しました。まずは、デジタル課題に困った事業者が誰に相談するとよいかわからない状態が解決したと思います。
――信頼できる相談窓口の存在はありがたいですね。
久保田さん:もうひとつは、土浦市の事業者に向けたDXセミナーです。1回目のInstagramセミナーは定員70名のところ満席になり、次も開催してほしいとの声をいただいています。どのテーマも、初めての方でも実践しながら学べるワークショップ形式を採用している点でも好評です。
――普段から忙しい事業者様にとって、このようなセミナーはありがたいですね。
久保田さん:そうなんです。基本、運用、改善を3時間かけて無料で学べるのが魅力なんじゃないかなと思います。どの内容も、またやってほしい!という声をいただいており嬉しいです。
土浦市のセミナーとICT支援相談室が好評だったこともあり、土浦商工会議所と土浦市との共催セミナーの開催(3回連続)も決まりました!今後は、さらに土浦商工会議所と連携した事業者支援の機会を作れそうです。
久保田さん:この結果は、委員会に所属するウェブ解析士マスターや、有資格者のみなさん、土浦市のみなさんに、地元に貢献したい思いが伝わったこと、諦めずに行動し、チャレンジし続けたことで得られたと思っています。
より多くのウェブ解析士が活躍する機会を作りたい!
――今後、どんなことに注力していきたいですか?
久保田さん:これからも変わらず、協会のメンバーと協力しながら地方DX委員会の活動を続けていきたいですね。ウェブ解析士協会の中には、まだ知られていないだけですごい方がたくさんいらっしゃると思うんです。そのような方々に登壇していただけるような、活躍の機会を増やしていきたいとも考えています。
――それは、久保田さんご自身のご経験から?
久保田さん:そうですね、先ほどお伝えしたとおりです。
何度落ちても、めげずに挑戦し続けられたのは講座中に出会った先人の方々や、相談に乗ってくださったマスターのみなさまに助けていただいたおかげだと思っています。
私は、周りに助けてもらうのが上手いのかもしれません。
――いやいや、ご自身の努力と行動があってこそじゃないですか。
久保田さん:「久保田さんだからできたんですよ」ってよく受講生さんに言われますが、そうじゃないんです。周りのみなさんに助けてもらえたからできるようになったんです。
土浦市のプロジェクトでは、特にマスターの八木さん、古橋さん、神谷さん、協会のみなさんのおかげで、地元土浦市との連携協定に至るまでのさまざまな壁を乗り越えられました。
――私もこのインタビューでいろいろなご縁に助けられているので、納得感があります! 最後に、資格取得を考えている人へメッセージをお願いします。
久保田さん:資格を取ることはゴールではありません。資格の先にある目標は何なのか考えてみてください。目標に向かってチャレンジしたいとき、ウェブ解析士やSNSマネージャー、広告マネージャーなどの資格が活かせるはずです。
そして、ぜひ地方DX委員会の活動にも参加してみてほしいです。一緒に活動できるのを楽しみにしています。気軽にご連絡くださいね。
あとがき
久保田さんのように地元へ貢献したい方は多いと思います。しかし、気持ちだけでは成果につながりません。予算がない。人がいない。知識がない。全国共通の課題解決は、膨大な時間と労力を注ぐ覚悟がなければ実現できないのです。そんな覚悟や努力を微塵も感じさせず、「大丈夫です。できますよ」と答えてくれる久保田さん。私もその背中を追いかけたいと思ったインタビューでした。(ふじね)
関連リンク
公式土浦市【ダイジェスト】AI活用セミナー:https://www.youtube.com/watch?v=MY9_K_UL38I
地方DX委員会 デジタブルタウン:https://digitable.waca.world/
DXマーケター養成講座:https://dxmarketer.jp