「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。40人目は、SNSを中心としたデジタルマーケティングのコンサルタントとして多方面で活躍されている積高之(せき・たかゆき)さん。
関西学院大学専門職大学院卒 経営管理修士(MBA)
チーフSNSマネージャー・上級SNSエキスパート・上級ウェブ解析士・ITコーディネータ
大手子供服SPA、酒販小売業チェーン、保険代理店などの顧問・コンサルタントを歴任され、現在契約中の顧問先は30社以上。ITだけでなく実務経験を通じ、リアルビジネスのマーケティングをベースにしたコンサルティングが好評を博しています。近年はウェブ解析士協会との関わりが増えている積さん。資格の意味付けについても、示唆に富むお話をいただきました。
(インタビュー・編集:ウェブ解析士 伊達 雅之)
独立後、自分自身の立場を明確にするためにウェブ解析士を取得
―― 貴重な機会をありがとうございます。大変楽しみにしていました。まずは簡単に、自己紹介いただけますか。
積高之さん(以下、積さん): 今、デジタルマーケティングのコンサルタントをしています。
以前は15年間、ベビー服の会社でIT関係やECサイトを担当していました。売上の20%くらいをECが占め、当時としては結構珍しかったこともありセミナーなどで話したり、他企業のコンサルのような事もしたりする機会も多くありました。
7年前(2013年)に独立しました。当初ECの売上向上などが主なコンサル内容だったんですが、実はECと実店舗との融合、O2Oやオムニチャネルなど皆さん興味があったのと、すでにECのコンサルタントは何人かおられので、他の方にはあまり経験がなくしかも時代が求めていた「実店舗との融合」を中心にアウトプットしていきました。また、ちょうどこの間はスマホが発達した時代でもあり、SNSとスマホを中心にお話する事が多かったので、デジタルマーケティング全般の事をお話してきました。
―― ウェブ解析士を取得されたのが2014年とあります。
積さん : そうですね。独立後さて何をしようかと考えた時、コンサルとして「こいつ何者やねん」とならないように、背景付けしたかったのがもともとの意識です。ただ「持ってるだけ」という期間が長く、積極的にウェブ解析士協会と関わって、セミナーなどさせてもらえるようになったのは、ほぼ最近のことですが。
―― 実際取得して良かったですか。
積さん : 初級から上級まで一気に取ったんですが、クライアントとお話しする時に、上級である事は大きかったように思いますね。ITコーディネータも取ってまして、2年くらい前に「SNSエキスパート」という資格も取得しました。その頃からデジタルマーケティングの3段階、上流のITコーディネータと、Webの中身を見れるウェブ解析士と、フロントエンドのSNSエキスパートという3つの資格を持っていることにより、デジタル全般の専門家として受け入れてもらえたと思います。
最近取得した、ウェブ解析士協会の「チーフSNSマネージャー」ではSNSについてのセミナーなども行うようになっています。その講座でも話すのですが、資格を持つための勉強がどうかいうよりは、「そもそもこの人がどの程度のレベルか」を担保する機能が大きいと思います。
MBAホルダーに至った経緯、動機
―― 資格を多数持っていらっしゃる狙い、ご質問したい点でした。
積さん : 戦略的なものは持っていましたね。これとこれとこれを押さえておけば、こういう感じに見えるだろうなと。
―― MBAも取得されているのは驚きです。
積さん : これは年齢的なものですね。60歳前後にさしかかった頃から、経歴書に60歳と入って自分で「あれっ」と思うようになりました。60歳まではむしろアドバンテージに感じていたんですよ。コンサルティングの現場、たとえばこれまでBtoBで最終消費者と接触していな企業の場合など、40~50歳代のミドル層はほぼ一律に「私ら、もう年なんで」と言われるんですが。それに対し「いやいや私より絶対下ですよ」と返すことができました(苦笑)。
が、60歳という年齢を迎え、「こいつから最新のSNS教わりたいか?」「年齢的に知ってるはずもないやろと思われるんちゃうか?」と自問自答する中で、ひとつ上のレイヤーである経営コンサルタントとして話せなければ難しいと、何かその背景が要るなと、ビジネススクールに入学しました。
―― さらに中小企業診断士の取得も目指していらっしゃるのですね。
積さん : 実は、中小企業診断士が先だったんです。その勉強をしている時に、2次がなかなか通らず診断士の養成過程があるMBAが選択肢に加わりました。さらにせっかくビジネススクールに行くのであれば、中小企業の経営戦略にも強い関西学院大学がいいなと入学しました。
当時関学に診断士の養成過程はなかったんですけどね(笑)。
―― その向学心の源は。
積さん : 完全に好奇心です、たぶん(笑)。戦略的に取っているとはいえ、前半はともかく最近は「ビジネスに活かす」という脂っこいイメージないんですよ。売り上げがどうこうよりも、面白い、興味があれば勉強していくケースが多いですね。
最初のウェブ解析士だけは、仕事に意味があると思って取得したイメージが自分の中にあります。ウェブ解析士はビジネス的に役立つという思いでした。主にタイトルでしたね。
―― そもそもで恐縮ですが、ウェブ解析士を認知されたきっかけは何でしょう。
積さん : Web系の資格がほしい、何かないかなと探した記憶があります。その中では、IT系の資格の中ではマーケティングに近い、ウェブ解析士が一番ふさわしいのではないだろうかと。
ウェブ解析士協会に思うこと
―― ウェブ解析士について、ここが弱いかもといったデメリットと言わないまでも課題など、いかがお感じでしょうか。
積さん : 実は2016年にWACAの賞をいただいていたのですがピンと来ておらず、その後2019年春ごろ、代表理事の江尻さんと京都でお会いして食事したのが協会と関わるようになった最初です。それまで感じていたのは、協会そのものと、私のような普通の会員とのギャップのようなものです。協会がやろうとしていることと、個々の会員が持っている目的意思がずれているような。特に感じたのは、サイト内だけのユーザー体験や、SEOといったWeb解析そのものと、時代におけるデジタルマーケターの感じ方が違っているように思います。
現在は、Webサイトを重視せずにコミュニケーションを取るという方法がマーケティング的に主流になりつつあります。たとえばInstagramでそのまま買ってもらえれば、事業者としては成功している、ECサイトに来てもらう必要はないんです。
今までの解析はWebサイトに来ることが全てだったが、ユーザーがそれをすっ飛ばしてしまうと、Webサイトって意味ないやんとなってしまう。
大手のメーカーのサイト見たことないけど、普通に皆さん買い物してますよね。そこで、その会社のSEOを行って、検索順位をあげていったり中の解析をしたところで、ある特別な層の動向がわかるだけなんですよね。
偉そうに聞こえるかもしれませんが、ウェブ解析に囚われすぎない方がよい。これはマスター取ったら、もっと言いたいところです。
―― ウェブ解析士マスターも目指されているんですか!?
積さん : こんな話をするようになってから、マスター取っとかなければ「おまえが何言うとんねん」と思われるかなと(苦笑)。上級まででいいなと思ったのは、特に指導や講習をしたりという意識はなかったのでそこでいいだろうと思ってましたが、最近はマスターでないとなぁと思っているので、次ぐらいに受講します。
とにかく解析にフォーカスを当てすぎている感じがします。協会と、現場にいる方との乖離があるんとちゃうかなと。
―― 2020年、「Flashセミナー研究会」を立ち上げられました。セミナーは早くも10数回を重ねられてきていますが、内容および始められた経緯を教えてください。
積さん : これ面白いですよ。MBAの外部セミナーが5月にあったんですが、コロナで自粛の真っ只中だったこともあり「これからのビジネススクールはどうあるべきか」とのお題が出ました。セミナー中にプレゼンシートを作成・提出したところ、主催者から別途お時間もらえますかと言われ、皆さんにプレゼンを聞いてもらいました。
今までみたいにオフラインで集まってやるよりは、どんどん思いつくまま系統立てない形でオンラインセミナーやっていくと、オンデマンドで見られたりしますし、結構受けますよという提案内容でした。実際、今やっているところあるでしょ。
ただやはり大学院の組み立ての中では動きに限界があり、そのまま江尻さんに「これ協会でやったらどうか」と持ちかけました。「研究会形式であれば」とお勧めをもらい、「じゃやりましょう」と2人で立ち上げ、人脈を使っていろんな方を呼んできています。次の講師、やりたい人たち一杯ストックがあり、どちらかと言えば日程に困っている状況です。12月には、4回開催しました。
―― Flashセミナー、誰でも参加できますか。
積さん : はい。基本的にはオープンです。集客においてはDoorkeeperのウェブ解析士協会のベースがある事が大きいです。6,000人ほど登録されておりパッと通知できて、開封率も20%となかなか高いです。
次世代に向けて、個人のタグ付けが重要
―― 今後ウェブ解析士の取得を検討されている方や、さらにステップアップしたい方に向けたメッセージをお願いしたいのですが。
積さん : これからの時代、人のつながりがますます大事になってきます。
Facebookのメッセンジャーなどですぐ友達になれますし、コミュニティに呼べるか呼ばれるか、どちらかの立場が必要です。沢山メンバーを知っていて呼べるか、ここは相当詳しいと呼ばれるか。今までのような組織的な繋がりより、個人個人の「タグ」が重要になって来ているのです。そうした時に、ウェブ解析士の資格を持っていれば、デジタルマーケティングなどのテーマで呼ばれたりする。資格を取得した思いにも通じるものがありました、「こいつは何者か」を客観的に証明するタグとして役立つはずです。
例えば、Webサイトに課題を抱えている経営者がいたとして、資格があると友人の経営者などに(紹介)しやすい。社内で何かプロジェクトを起こす際に「必要なメンバー」として呼ばれる可能性が高くなる。他社から見ても参加してもらいやすい。
独立してるか会社にいるかは別にして、「自分が何者か」ここはすごく意識を持ってほしいですね。
あとがき
2020年の暮れ(インタビューの約1週間後)のこと。ウェブ解析士協会の25時間イベントに参加しました。
50分の持ち時間に多彩な「タグ」を持つ方々がリレー形式でお話しされていき、一番聴きたかった積さんのテーマは「コンサルタント、フリーランスはもっと稼げる!」。フリーランスがやっていい事・やってはいけない事を、歯に衣着せない感じでお話になったのが印象深く、口調はインタビューと全く同じでした。当たり前ですが(苦笑)。
関西弁で一見怖そうなイメージ持たれるかもしれませんが、言葉の節々にお茶目さのようなものもにじみ出て、改めて「人間力」の高さを実感しました。
ちなみに、私(伊達)も積さんと同じく関西出身。40歳という年齢を過ぎた中でリスペクトできる方に巡り合えた、そのきっかけは、2020年秋に意を決して取得したウェブ解析士の資格でした。
最後ご案内になりますが、Flashセミナー研究会のFacebookコミュニティはこちら。