「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りさせていただくウェブ解析士インタビュー。9人目は、東京・福岡・佐賀を拠点にウェブの制作・マーケティング・コンサルティングを行うPVC Marketing Japan代表の髙塚さん。“ホームページを売らないWeb屋さん”として、ウェブを通じたクライアントの理念(Philosophy)・ビジョン(Vision)・コンセプト(Concept)の発信、事業の課題発見・解決に向けたサポートに取り組まれています。
エンジニア出身の髙塚さんが「起業したい!でも何をしたらいいのだろう」と迷った時に出会ったのがウェブ解析士の資格でした。現在、出身地である佐賀、そして福岡と東京の3拠点で事業を展開する髙塚さん。“相手にギブするために、自分にもギブする” という相手に寄り添い真摯に対応する姿勢と、“自らを知り自らを満たすことで、相手を満たす” という確かな信念を感じさせられたインタビューとなりました。
(インタビュー:ウェブ解析士マスター 小杉 聖)
(編集:ウェブ解析士 中川 千春)
東日本大震災をきっかけに自分の人生を歩むことを決意し、起業
ウェブ業界に入る前はシステムエンジニアとして活躍されていたんですね。
はい、システム開発会社でSEを経験した後、独立しました。最初はサイト制作メインで活動し、徐々にマーケティング領域にシフトしていきました。最近では、戦略を検討する仕事が多くなりましたね。
現在は、佐賀・福岡・東京と3拠点で活動されているとか。この3つの地域で活動しようと思ったのは、どんなきっかけがあるんですか?
会社員だった20代の時に起きた東日本大震災が大きなきっかけでしたね。「たった一度きりの人生。自分らしく暮らそう、生きよう」という想いが強くなって起業をしました。事業が安定してから東京じゃなくても仕事ができる環境が整ったので地方移住を模索しました。
最終的に、生まれ育った佐賀に戻ってきました。そして隣県である福岡も、活気があってビジネスも活発でいいなと思って。現在の仕事としては、佐賀と福岡が半々、残りが東京という感じですね。
福岡ってECが盛んな地域で、ウェブには特に強い地域というイメージがあるんですが、競合も多いのでは?
地方空港のプロモーションにも関わりましたが、私のクライアントには小規模事業者が多いせいか、競合とバッティングしたと感じたことはあまりないですね。むしろ、ウェブ解析士という資格を持っているということで、他の制作会社やコンサルタントの方々から「一緒にやりましょう」と声がかかることが多いように思います。
例えば、オフラインがメインのコンサルタントから、「ウェブに強いなら、オンライン面の戦略を一緒に見てアドバイスしてほしい」って頼まれることもありますよ。
それぞれの強みを活かしてお仕事できる仲間がいるなんて、最高ですね!
本当にありがたいです。自分の仕事は、目の前の人から相談を受けて、そこから仕事に発展していく事が多いです。ウェブに強いコンサルタントとして相談が来る感じですね。自分で言うのもなんですが、相談されやすさには自信があります(笑)
安心してなんでも相談してしまいそうですもん(笑)
そもそも相談してくれるような相手って、どうやって見つけるものだと思いますか?
まずは自分のことを理解するのが第一かなと思っています。診断ツールやストレングス・ファインダーなどのツールも使いながら、自分の強みや特性を把握するのがいいですよ。
あらかじめ自分の特性が定まっていると、自分が「何をすべきなのか」「何を求められているのか」「何がしたいのか」が明確になります。「私は目の前にいる応援したい人を応援する」というスタンスが自分の特性とも合っているので必然的に相談は多くなりますね。
例えばセミナーやイベントに行くにしても、あらかじめ自分の特性が自覚できると、何を得ようというのが明確になりますし。また、何かアドバイスをもらった時に、自分の特性とは違うと思えば、自分の中で変換するのも大事だと思います。
個人的には、友人の林原琢磨さんが開発したエレメンツコードという診断ツールがとても参考になると思います。あと5年早く開発してほしかったですね……。
仲間を求めようとしたら、まずは自分のことをよく理解してから、ということですね。それはめちゃくちゃ共感します。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の重要性
ここまで伺っていて、髙塚さんは何でもうまくこなしている印象ですが、今までで一番苦労したと思うのはどんなことですか?
そうですねえ……、起業するときですかね。
SE出身だけどプログラミングは苦手だったし、コーダーをしていたけれどコーディングがすごく速いというわけでもないし……。“ゼロからイチを生み出す” のが本当に大変で、最初はとても苦労しました。
そうだったんですか!その状態からよく起業するまでに至りましたね……
そうなんです。実現したいビジョンがあるわけでもないし、何か突き詰めたい!好きなことがある!というタイプでもないので、最初は何をしたらいいかわからない。まさに「スキル無し、お金なし、やりたいこと無し」の三拍子揃った状態でのスタートでした。
独立する前に、Webマーケティングの専門家である山田案稜さんのビジマという勉強会に参加したことがあるんですが、山田さんが目の前でウェブ解析をするのを見て「数字を見て分析するのは得意だし、これ面白そう、好きかも!カッコいい!!」と感じたことをハッキリと覚えています。そして、ウェブの事業をするうちにウェブ解析はクライアントに成果を出すために必要不可欠なスキルだと思ったので、この道に進もうと思ったんですよね。
それで上級までウェブ解析士の資格を取得した、と。
ウェブ解析士ではウェブの基本を一通り網羅的にインプットすることができたので、今度はアウトプット兼ねてレポートを作れるようになろうと思って、上級を取得しました。上級まではそんなに時間かけなかったですね。テキストが今より薄かったですし(笑)
今の半分以下でしたしね(笑)
その分、上級はレポートの作り方を学べるだけ、という印象はなかったですか?
そうですね、正直このままじゃ使えないと思ったので、勉強したことをとにかくアウトプットしようと、起業家仲間にレポートを作ったりコンサルをしたりしました。そうしたら「思っていた以上に相談ってくるんだな。こうやって相談が来たものに対して確実に応えていったら、仕事になりそうだ!」と思って。相談から仕事を創り出す。少数のクライアントを大事にして、丁寧にフォローしていくという自分の強みがわかってからは、軌道に乗ったなあという感じです。
今年は「ウェブ解析士アワード2018」で Evangelist of WACA を受賞されましたしね。
上級をとったのは4〜5年くらい前ですが、その後ウェブ解析のイベントはほとんど出れていなかったですし、自分がやったことをSNSに書くようにしているくらいで。そんなに表立って活動していたわけでもないから……正直びっくりしました。
活動を見てくれている人がいるというのは、ありがたいですよね。髙塚さんが常に相手を大切にして、真摯に向き合っている姿勢が想像できます。
実際に「投票したよ!」と言ってくれた方もいらっしゃったんですが、まさか受賞するとは思っていなかったので、とても光栄でした。相手を大切にするというのを意識してはいますが、それと同時に、自分を疲弊させないことも大切にしているんです。
それは、ムリをしないということですか?
自分が疲弊してしまうと「自分はこんなに頑張ってるのに…」という感情を持ってしまいがちですが、なるべくそうならないように気をつけています。逆に自分の事をきちんとケアできていると、自然と相手にギブすることができると思っています。だからクライアントにギブするためにも、自分を疲弊させないよう気をつけています。
例えば、クライアントから対面での面談を依頼されることも多いのですが、特に支障がない場面であれば「オンラインにしませんか?」と提案するとか。ちょっとした心がけの積み重ねですが、自分を満たすバランスを意識するようにしています。
髙塚さんから感じる安心感の秘訣は、自分自身を大切にしているからなんですね。頭ではわかっていても、なかなかできないと思うのですが。
クライアントにしたい人を、あらかじめ自分のなかで明確にするようにしてからかもしれません。誰にでも向き合うのではなく、「この人!」と思った相手を真摯にサポートしたい、役に立ちたいという想いを持っています。
実際、私のクライアントは「ウェブのことは専門家におまかせ」という感じではなく、ビジネスパートナーとして「今はこういう施策をやってみたんだけど、どう思う?今後どうしていったらいい?」というような、一緒になって改善していこうというクライアントが多いように思います。
すべてのウェブ解析士が望む理想なのでは(笑)
そんな方々と中長期で関係が築けるということは、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)がアップして安定したビジネスにもつながりますよね。
まさにその通りで、一度来てくれたクライアントは2回目・3回目をリピートしてくれるので、新規のクライアントをむやみに追い求めたり、無理して売り込む必要がなくなります。信頼関係をつなぐことで、LTVを上げやすくなりますし。
実は、ウェブ解析士の資格を取った理由の一つはLTVを上げることでした。「毎月レポートを作れば収入になる。小さくても積み上げていこう」という所からスタートしました。起業して最初の1年は単発で100万円を得るのではなく、毎月20万円を目指したんです。
そしてクライアントによっては新規顧客の集客よりもLTVを高めて、好きなお客さんと長く安定してビジネスを続けて欲しいと思い、LTVアップの施策を提案することは多いですね。
実際、クライアントさんの反応や理解度はいかがですか?
例えば、売上アップのために、チラシ・広告・SNS……どれをしたらいい?って聞かれることもありますけど、それって結局は全部集客の話なんですよね。ビジネスで利益を上げていくには、単価とリピートも大事。いくらがんばって集客しても、単価が低いままだったりリピートの仕組みがないと意味がなくなってしまうんです。
どうしても集客や新規顧客の獲得に目がいきがちですが、単価とリピートの改善をする方が成果につながりやすいケースが多いと感じています。特に私のクライアントは小規模事業者が多くて、こうした課題に気づいていないクライアントが多いんですけど、自分自身を通して、継続的な関係性を示すのも大事な使命だと思っています。
ちなみに、単価、リピートの考え方については、ジェイ・エイブラハムの「ハイパワー・マーケティング」を参考にしています。すごく大好きな本で起業前から何回も読みました。マーケティングのバイブルと言われているので、クライアントのビジネスを俯瞰するためにも、ウェブ解析士は読んでおいたほうがいいですね。
ウェブ解析士でも集客に対して苦手意識を持っている方は少なくないと思うので、髙塚さんのようにLTVを考えていくのもいいですね!
様々な人と交流する中で特性を知り、自分のやり方を見つけよう
これからウェブ解析士の資格を取得したいと考えている方へ、どんなことを伝えたいですか?
とにかくいろんな人に会って、自分に合う人や自分が真似したいと思うような人を見つけてベンチマークにするのがおススメです。いろんな人に会ううちに自分の特性が分かってくるし、自分が目指すべき道が見えてくると思います。
髙塚さん自身のベンチマークとなっている方はいらっしゃいますか?
特定の誰かというわけではないのですが、多くの方から影響を受けています。起業を目指してから多くの人にご指導いただきました。憧れの方はもちろんいますが、目標・参考にする方と憧れの方は違いますね。
もし髙塚さんのようになりたいと思うウェブ解析士がいたら、どんなアドバイスをしますか?
私ですか(笑)
とにかく目の前のクライアントに対して、自分がどんなことで役立てるか?を追求し続けてほしいです。自分を売り込もうという気持ちではなく、“自分の持っている・わかる知識で応援したい人の役に立つ” ということです。例えば、私は相談は無料でやっていて、話をする中でもし役に立てそうなら提案して、仕事につなげるようにしています。
ムリをしないというスタンスが一貫してますね!
ウェブ業界の人って、自分の専門に偏りがちな傾向にあると思います。SEOとか広告とか制作とか。ただクライアントって、今自社がどの分野に力を入れるべきかについて、自分たちではわからないケースも多いと思うんです。だからコンシェルジュのような役割も担えたら良いなと思いますね。
話を聞くと、ウェブ以外の部分に力を入れたほうが良い場合も結構あるので、今は戦略面から一緒に事業を考えるようにしています。結果的に、私よりも最適な方につないだほうが良いと判断することも多いですよ。幅広く相談を受けて専門家につなぐ。その中で、自分が役に立てることがあれば自分が出るというスタンスで、間口を狭めずにいるのも大事かなと思っています。
クライアントが相談しやすい環境づくりをされているんですね。同時に、髙塚さんが継続的におつきあいできるクライアントを選んでいるのも、このタイミングなんだなと思いました。
そうですね。相談が無料というのは色々な意見がありますから、あくまで私のやり方です。10年後どうなっていたいかをクライアントと共有しながら、一緒に事業の成長を支えていきたいです。
あとがき
“相手に Give するためには、まず自分に Give する” という信念を感じられるインタビューでした。“自分のことを大切にする” というのは一見利己的なイメージがありますが、中長期的に支えるためには非常に大切で、LTVの向上には欠かせません。
「私で良いんですか?」と謙遜していた髙塚さんですが、心から応援したいと思えるクライアントと長く関係を築きながら、二人三脚で成果を出すスタイルは、ウェブ解析士のひとつのベンチマークであると思いました。
インタビューの中で自己理解の大切さも話されていたのですが、髙塚さんは新しい人の輪を広げるよりも、継続的に親密な関係を築いていきたいというタイプということなので、紹介されていたツールも参考にしつつ、同じような傾向の方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。
九州内外問わず、セミナーを開催しています。お気軽にご相談ください。
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