「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りするウェブ解析士インタビュー。71人目は、沖縄県で唯一のウェブ解析士マスター(※)、山内真由美さん。ITコーディネーター協会にも所属し、組織をつなぐ架け橋的な役割も担われています。ウェブ解析士協会ではエキスパート委員会に所属。変化の激しい現代で、同じ資格を持つ人同士が切磋琢磨できる環境づくりに励む背景を聞きました。※インタビュー時点
(インタビュー:上級ウェブ解析士 毛利 美佳、編集:ウェブ解析士 ふじねまゆこ)
資格取得がきっかけで、ウェブ解析の面白さにのめり込む
――自己紹介をお願いします。
山内真由美さん(以降、山内さん):沖縄県でウェブ解析士マスターをしています。山内真由美と申します。5年前に独立し、ウェブ制作を中心に事業展開していますが、もともとデザイナーだったこともあって、紙面デザインのご相談をいただくことも多いです。よろしくお願いします。
――どのようなお客様が多いです?
山内さん:沖縄県の地域柄かもしれませんが、ご紹介で相談いただく企業様が多いです。変わったところでいうと病院ですとか。沖縄県に限らず、ウェブ解析士マスター同士のつながりでご紹介いただくこともあります。
――ウェブ解析士を知ったきっかけは?
山内さん:以前勤めていた会社で知ったのがきっかけです。ウェブ解析士を取得すると給料があがるよと(笑)。実際、資格を取得して実務で生かしたとき、成果が数字で見れたことに感動したのを覚えています。そこからウェブ解析にハマって、最終的にマスターまで取得しました。
「ウェブサイトリニューアルしたけれど、思ったほど成果が出ていない」と相談に来たお客様に、どの数字が出ていないのか。流入が少ないなら、増やすために何ができるか。データをもとに説得力のある提案ができるようになりました。
また、社内にウェブ解析士が増えるほど、社内でウェブ解析をする人たちが増えて、社内に共通言語ができたことで、お互いの情報交換が活発になりました。結果、ウェブ解析にどんどんハマっていったという感じです。上級ウェブ解析士の取得は独立がきっかけです。
――なぜ、独立するタイミングで上級ウェブ解析士を取得したのでしょうか?
山内さん:独立起業すると、会社の保証がなくなって、自分の力で頑張っていかなければいけないじゃないですか。そうなったとき、デザイナーの能力に加えて、数字をつかんで、分析、提案できる能力があるって強いなと思ったんです。
であればウェブ解析士の知識だけじゃ足りない。もっと上の知識がほしいと思って、上級ウェブ解析士の受験を決心しました。実際、ウェブマーケティングの今を学ぶことができ、お客様への提案でとても役に立ちました。
――「上級は大変」という話を聞きます。実際、合格までどのような苦労がありましたか?
山内さん:実は私が受講した当時、初めて上級ウェブ解析士講座のオンライン受講が開催されたんですね。事前課題を締切の3日前に気づき、慌てて提出したら「ちゃんと勉強したの?」と指摘されまして……(苦笑)。講師から「実務でここまでできているんだね。頑張ってね」とフォローしていただき、冷や汗をかいたのを覚えています。
――上級ウェブ解析士の知識は、実務でどのように活かせましたか?
山内さん:提案に説得力がつきました。例えば、起業したばかりの方ですと、事業計画をもとに資金調達する場面があると思います。そのときに、ペルソナを設定して、どのような方へどのような価値を提供するのか整理する方法をお伝えしたら、とても喜ばれましたね。最終的に制作のご依頼もいただくことができました。
――マスターまで取得した経緯は?
山内さん:マスターって雲の上のイメージがあって、一体どんな知識が必要なんだろうと興味がありました。ただちょっと費用がかかるなぁと悩んでいた時、尊敬する経営者の方から「そう思うなら挑戦してみたら? 費用は取得したあと、仕事につながったらすぐペイできるよ。がんばれ!」と背中を押してもらったのがきっかけです。
――マスターを取得してみていかがでしたか?
山内さん:講座受講中の4ヶ月間は死ぬ思いで取り組みましたが、合格後に自分のレイヤーが1段上にいった感覚がありましたし、同期のマスターや、資格を通じて知り合った方々の層が広がりました。何より、仕事の精度も上がったと感じます。
――特に難しかったのはどの分野でしたか?
山内さん:私の場合、キツかったのはマクロレポートですね。制作側の仕事をしてきたので、市場調査、分析を業務で触れたことがなくて、かなり苦戦しました。
さまざまな分野のエキスパートをつなげる「エキスパート講座」
――ウェブ解析士・上級ウェブ解析士の認定講座を主催されるとき、心がけていることはありますか?
山内さん:みなさん試験合格を目的にいらっしゃるので、問題の傾向と対策をアドバイスするのですが、生徒の方から問題集で数字がおかしい点に気づく場面があるんですね。そのような問題は、実務ベースで考えるとおかしな数字に見えますが、ここで出題者が押さえたいのは計算の組み立て方にあります。試験と実務は違うという点は伝えるようにしています。
――試験を作る側としては仕方のない部分ですので、講座でそれを分けて教えていただけるのは嬉しいですね。
山内さん:そうですね。まずは試験に合格したい想いがあってのことですので。
――山内さんは協会のエキスパート委員会で、認定講座以外の講座にも注力されているそうですね。
山内さん:はい。ウェブ解析士、SNSマネージャーなどの認定資格以外にも、プラスアルファで学んでおくと良い知識がデジタルマーケティング界隈では無数にあると思います。そこを補い、もっとレベルアップしよう!というのが、エキスパート委員会が主導している講座です。
――例えばどのような講座がありますか?
山内さん:現在公開中の講座は、Google アナリティクス4、初級SQLアナリストですね。AI(人工知能)に関する講座も開発中です。
ウェブ解析士はさまざまな分野のプロフェッショナルが活用する資格です。「ウェブ解析」の分野だけ、ウェブ解析士マスターのコミュニティだけの知識では幅が狭くなってしまいます。そんな他分野のプロフェッショナルに語っていただき、情報共有できる場を作る活動をしています。
――確かに、ウェブ解析士同士の知識を持ち寄れば大きな集合知になるというお話は、過去のインタビューで耳にしてきましたし、実感としてもありますね。
山内さん:そうなんです。協会内外の興味深い活動をされている方をお誘いして、お互いに刺激し合うような場にしていきたいので、興味のある方はぜひお声かけいただきたいです!
組織を越えてつながり合おう
――山内さんの今後の目標はなんですか?
山内さん:まず、周りの方のレベルがもう、業界の最前線でずっと走っていらっしゃる方々ばかりなので……。まずそこについていきたい。自分の底上げを常にしていきたいなと思っています。
あと、ウェブ解析士協会全体の流れとして、例えばITコーディネーター協会さんなど、組織を越えたつながりが深まっていると感じるんですね。最近では、デジタル庁の依頼を受けて、ウェブ解析士全員が「デジタル推進委員」に任命されました。組織同士が手を取り合い、デジタル分野の知識の底上げのため協力して何かできたら面白いと思うんです。
近々、ITコーディネーター協会とウェブ解析士協会のコラボ勉強会を開催しますので、ぜひチェックしてください。
――最後に、資格取得を検討中の方へメッセージをお願いします。
山内さん:ここ最近、世の中の移り変わりが激しく、技術の進歩も著しいです。ついこの前まで常識だったことが、今はまったく違う! なんてこともしばしばありますよね。必死に追っていかなければいけない状況です。その学び、1人では難しいですが、ウェブマーケティングの分野で頑張っている方々がウェブ解析士協会に集まってきていると思うので、資格の垣根なしにスキルアップできる環境が整いつつあるはずです。
ぜひみなさんも、何らかのコミュニティに参加して欲しいです! お互いに刺激を受けながらスキルアップしましょう。
あとがき
ウェブ解析士マスターとして、またエキスパート委員として活躍する山内さん。資格取得に飽き足らず、業界全体のスキルアップを図るために協会を飛び越えて活動する姿にとても刺激をいただいたインタビューでした。(毛利)