「仕事とウェブ解析士」がテーマのウェブ解析士インタビュー。46人目は神奈川県在住でフリーランスのウェブデザイナー、ひろみょんこと大和田博子(おおわだ・ひろこ)さんです。
数多くの企業が運用するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のアカウント。運用する「中の人」たちは、ユーザーの心を理解するために工夫を重ねています。その一人として経験を積んだひろみょんさんは、初めてウェブ解析士の存在を知ってから受験するまでの間に数年かかったそうです。その年月で何をしていたのか、また合格しどう変わったのかをお聞きしました。
(インタビュー・編集:上級ウェブ解析士 ナカノアヤコ)
「めちゃくちゃ難しい」と聞いて敬遠
――2月にフリーランスとして独立する前はウェブディレクターとして企業にお勤めだったんですね。どんなお仕事をしていたのか、自己紹介をお願いします。
大和田博子さん(以下、ひろみょんさん):ウェブ業界以外から転職し、制作会社で運用とディレクションをしていました。かかわったのは英会話関連、メンズアパレル、辞書サービスなどです。ウェブの世界をまったく知らないところから始めて、英会話のレッスン動画の録画やランディングページ(LP)のディレクションなどを任されていました。その後、SNS運用を通算で2年くらいです。
――初めは慣れるのが大変だったのではないでしょうか?
ひろみょんさん:「ワイヤーフレーム」といったウェブ用語もわからず、どこから勉強すればいいのだろうかという状態でしたね。周囲には詳しい同僚や先輩もいたので質問したら教えてはもらえましたけど、ほぼ独学です。
ウェブ解析士の資格についてもその頃に知りました。社外セミナーを受講した際、資格を持っている受講生がいたんです。ただすでに実務に携わっている人ならまだしも、ウェブについて勉強し始めたばかりの人には「めちゃくちゃ難しい」と……。そう聞いて敬遠していました。
自分なりの勝ちパターンを身につける
――まずは実務経験を積んだのですね。
ひろみょんさん:はい。キーワード選定、SEOなどは当時勤めていた会社が導入したツールを使っていました。でもツールで表示されるデータの読み方がそもそも正しいのか、また取得できたデータを元に立てた仮説は合っているのか、確信は持てていなかったです。よくわからないまま、その会社からは転職してしまいました。
その後、SNSアカウントの運用を通算で2年くらい経験しました。メンズアパレルのアカウントを担当していた時は、自分なりに「こうすればいい」という感覚をつかめたんです。その結果、1年半でフォロワーが3000人から1万5000人にまで増えました。
――習うより慣れろ、で「勝ちパターン」が身についたんですね。それだけでもかなりの実績です。
いずれはフリーに 改めて試験へ挑む
ひろみょんさん:ただ、短いスパンで何度か転職したので、自分がしてきたことが身についているかどうか不安な部分もあったんです。そこで、難しい試験に合格すればきっと自信になると思いました。いずれはフリーランスになるつもりだったので、武器になるものが欲しいと思ったのもウェブ解析士挑戦の理由の一つですね。
――かつては敬遠していたとおっしゃっていましたが、いざ取り掛かってみて苦ではありませんでしたか?
ひろみょんさん:実務経験のかいあってなじみのある用語もあるにはありましたが、ROASとかアジャイルとか、英語を読んでいるかのような知らない横文字が(笑)! 公式講座を受けた後でやばいなと思ったので、問題集を2回通して解きました。仕事が終わった後などに時間を設け、覚えるべき言葉は手書きノートにまとめたんです。さらにテキストを繰り返し読んで問題集を解きまくり、自分の理解度を確かめる方法でした。それが自分に合っていると思ったので。土日は1日に5時間くらいかけましたが、学習期間としては講座を受けてから受験までの数週間だけでしたね。公式テキストを横に置き、調べながら試験を受けられる安心感があったので、期間が短くても焦りはなかったです。
――同じ条件でも不合格の人がいるわけですし、そのテキストが努力を物語っていますね!
ひろみょんさん:以前聞いていたように、実務を経験してなんとなくわかっている点があったので頭に入りやすかったからだと思います。「この章ではあのことを説明しているんだな」ということもわかりました。合格はしましたが、自分の理解が足りなかったと多くの点で反省もあります。
甘かった?過去の自分に助言するなら
――どんなことでしょうか?
ひろみょんさん:仮説です。以前は甘く考えていたし、根拠のない仮説を立てていたと思います。
辞書サービスのツイッターアカウントを運用していた時、ユーザーの「おもしろい」のツボをつくのにとても苦労しました。私自身はそれまで辞書というものにあまり触れてこなかったので、ユーザーが何を求めて辞書のサービスにアクセスするのか、ツイッターで何を発信すればいいのか、全然わからなくて。言葉の意味の違いクイズを出したり、辞書を引く楽しさを伝えるための情報を発信したりしたかった。でも私の「おもしろい」と、フォロワーさんの「おもしろい」がずれていたようです。ある時「中の人、惜しいんだよな」というコメントをフォロワーさんにもらったことが……。ほんとすみません、って感じです。
今から過去の自分にアドバイスするとしたら、ユーザーが何を求めているか、こちらが何を提供すればサービスに登録してくれるのかをもっと俯瞰(ふかん)して分析することですね。辞書好きの人がフォローしている別の業種のアカウントは何かチェックしていれば「おもしろい」のツボがわかったのではないかと。
アパレルのSNSを担当していた時のことを例に挙げると、そのブランドの服を買うのはサーフィン好きの人が多いとはわかっていました。その人は実際にどういう生活をしているのかをさらに分析するどうなるか、今なら考えると思います。その人が別にフォローしているアカウントをチェックしてみたら、どうやらキャンプも好きなんじゃないか?とかが見えてくる。そうした仮説を元に、LPには海の写真だけじゃなく山っぽい背景の写真を使ってみる、あるいは「アウトドアでも使える服」といった新たな訴求方法を考えることができたはずです。
基盤ができた今、挑戦の幅が広がった
――ウェブ解析士に合格した後、2021年2月には初級SNSマネージャーの資格も取得しました。SNS運用の経験はすでにお持ちでしたが、改めて発見はありましたか?
ひろみょんさん:理解できていなかったこと、知らなかったことを多く学びました。知識を得て点と点がつながり、自分の中に基盤を作ることができたと感じています。
以前はレポート作成が苦手で、SNS運用時も月次レポートをまとめるのに本当に苦労していました。ウェブ解析士の学習内容にはレポートの書き方も含まれていたので、今すごく参考になっています。
仕事を受注するには自分の存在を知ってもらうことも大事ですよね。以前は自分に自信がありませんでしたが、チャレンジしたいことの幅が広がり、いろいろなプロジェクトに参加するようになりました。ウェブデザインを学んだデジタルハリウッド横浜では、SNSの講座を担当する予定です。みなさんご興味あれば受講してみてくださいね!
あとがき
「お客さんに寄り添いながら一緒に作り上げることが好き」。出来上がったページの運用だけするのではなく、もっと上流から制作にかかわりたいとの思いでウェブデザイナーを志したのだそうです。辞書サービスのツイートに「惜しい」とコメントしてくれたユーザーさんにお礼を伝えたことが「SNS運用の一番いいところ」と振り返るひろみょんさん。今まで以上に心を込めてお仕事に取り組まれることでしょう。
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