「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りするウェブ解析士インタビュー。56人目は、ウェブマーケターの市野佑馬さん。
資格取得直後にインタビューしたことから、今回は講座で得た知識をどう活かしたいか語っていただきました。福祉系の大学を卒業後、自身の働き方に悩み続けた市野さん。歩む道に悩んだからこそ、事業の行く先に悩む経営者の気持ちに寄り添う包容力が印象的でした。ウェブが得意な人と、そうでない人の二極化が進んでいると話す市野さんは、多くの方が抱えるウェブへの抵抗感に寄り添おうとしています。
(インタビュー・編集:ライター ふじねまゆこ)
福祉系業界→出張料理人→ウェブ業界。悩み続けた道のり
――以前は福祉関連の仕事、出張料理人など、異業種の仕事をされていたそうですね。どういった経緯でウェブ業界に?
市野佑馬さん(以下、市野さん):大学を卒業する直前に味わった挫折が原点にあります。当時、カンボジアでインターンシップに参加して、現地の活動を通じて「カンボジアで生活したい! 」と思ったんです。しかし、語学力、稼ぐスキルもなかったので、諦めざるを得なかった。そこから、「時間・場所を選択できる働き方」を模索する日々が始まりました。
時間と場所を選択できる仕事は、自分にスキルがあってこそできるもの。幅広く業種を調べるうちに、「出張料理人」のインタビュー記事を見つけて「これだ! 」と思い、インタビュイーに問い合わせてお話を聞きに東京へ。その後、和食料理店を探して修行をお願いしました。ただ、修行するうちに、料理するよりも食べるほうが好きだと気づいてしまったんです(苦笑)。その後、独立した友人がきっかけでeコマース物販を始めたのがウェブ業界で働き始めた一歩でした。
――ウェブ業界の実務経験はどれくらいですか?
市野さん: eコマース物販を始めたのが5年前で、間に約2年間、IT系企業に就職して知識を深めた後、今年1月に再度、個人事業主として独立しました。オウンドメディアの立ち上げから運用、SEOを中心にしたウェブマーケティングが得意です。上級ウェブ解析士に興味をもったきっかけは、SEO以外の集客手段の知識・経験が足りないと感じていたので、役に立ちそうだと思い受講しました。
実際受講してみて、知識として身につけることはできたけれど、経験がまだ浅いと感じています。講座で作成した課題レポートは、講師の方からフィードバックをいただいたり、他の受講者のレポートを参考にできたので、しっかり整えられました。でも、現場の環境は整っていないことのほうが多いですよね。正しい改善施策も、継続して実行できなければ意味がないので、もっとお客様の課題へ寄り添うためにも、この知識をもとに実践を積んでいこうと考えています。
ウェブの総合窓口が無く、ユーザーの二極化が進んでいる
――今の事業を立ち上げて1年とのことで、今後どのような役割を果たしたいとお考えですか?
市野さん:ウェブに関することをなんでも聞ける相談窓口になりたいと考えています。世の中はウェブを使える人、使えない人で二極化が進んでいると思うんです。検索で欲しい情報にアクセスできる人と、できない人がいますよね。Amazonで欲しい物を買える人がいる一方で、Amazonを含む eコマースにまったく触れない人もいます。業界の中にいると気づきづらいけれど、ウェブについて誰に聞けばいいのかわからなくて悩む人は多い。
他業種なら身近に相談窓口があります。保険なら総合代理店、車ならディーラーや中古車店が思い浮かびますよね。成熟した業界には窓口があって、その窓口も認知しやすく整備されているけれど、ウェブには無い。私は、BtoBの分野でウェブに関するニーズを拾っていきたいと考えています。
――実際、市野さんに相談される方はどんな人が多いでしょうか?
市野さん:今は、オウンドメディアを立ち上げたい経営者や、個人事業主です。広告で集客してきたけれど、コンバージョンが増えないことに課題感を持つ方、広告による集客に限界を感じる方、SEOに興味を持たれたのをきっかけにお問い合わせいただく方が多いですね。集客は、自社コンテンツの「カンガルーメディア」、フリーランス名鑑からお問い合わせをいただいています。
私は、愛知県岡崎市に住んでいますが、ほとんどのお客様は東京、大阪の方です。日本中からお問い合わせいただいている点では、時間と場所にとらわれない働き方に近づきつつあるのかなと思います。
紆余曲折も、やり遂げれば糧になる
――一時期、「パソコン王子」の肩書を掲げたこともあったそうですね?
市野さん:独立したばかりのころ、「肩書があったほうがいい」とアドバイスをいただいてつけました(笑)。ただ、私の事業にマッチしないと感じてやめました。ウェブが苦手な方にも親しみやすい肩書ですが、「パソコンについて知りたい」方は、直接会ってフォローしてほしいニーズが高い。それならば、オンラインで出会った私よりも、地元のパソコン講座のほうがコストを押さえてニーズを満たしやすいでしょう。
最近は、「カンガルーメディアの市野さん」と呼ばれることが増えました。カンガルーメディアは、検索傾向と覚えやすさから名付けたのですが、屋号よりも印象が強く、肩書のようになってしまいました(笑)。
――カンガルーのほうが親しみを感じます(笑)。今後、事業で市野さんが目指すポジションはどこだと思いますか?
市野さん:私の強みは、福祉、飲食、ウェブと、異業種で知った多様性を前提に提案ができるところです。ウェブが苦手な企業の実現したいことと、顧客ニーズを汲み取り、第三者視点に立ったご提案と実行力に自信があります。その前提で、世の中へ本当に価値のある商品を届けられる存在になりたい。
もう1つ。これは事業というより個人として目指したいことですが、私のように多くのことに手を出し、辞めてしまったことで自信を無くしてしまっても、やりぬけば必ず、自分を活かせる仕事に出会えることを伝えていきたいです。
カンボジアに住みたかったけれどできなかった。出張料理人になれなかった。 eコマース物販では個人目標を達成できたものの、事業化には至らなかった。ウェブ業界で独立した今も、課題と自問自答の連続です。しかし、それぞれの経験は私自身の糧として、今の仕事に活きています。他のウェブ解析士インタビューは、ものすごい人たちばかりだけれど、私みたいに悩みもがく人もいる。「自分なんてダメだ」と思う人の背中を押せる存在になりたいです。
あとがき
20代のさまざまな経験と実績について、素直に語っていただいた市野さん。その様子から、28、29歳の頃「このままでいいのか」と悩んだことを思い出しました。自分の足りない部分に気づく力は、背中を押す推進力になる。市野さんの謙虚さと実直さは、ウェブ業界の敷居を下げ、抵抗感を和らげる可能性があると感じたインタビューでした。
市野さんのオウンドメディア
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