「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りするウェブ解析士インタビュー。61人目は、大手IT企業に勤めながら、複業でウェブマーケティング事業を展開する木口 祐一さん。
金融系システム開発を得意とする企業に勤めながら、個人事業主として一歩を踏み出した木口さん。きっかけは、脳出血による緊急入院とコロナ禍でした。新型コロナウイルスの感染が広がり、入院を境に世界が変わってしまったような感覚にとらわれたそう。「今、できることをやりきれば、つかめる可能性が増える」そんな思いから、知識体得のためにウェブ解析士マスター講座にも挑戦されています。複業を始めるにあたり、なぜウェブ解析士を選択したのか、その背景をお話いただきました。
(インタビュー・編集:ウェブ解析士 ふじねまゆこ)
45歳、緊急入院とコロナ禍がターニングポイントに
――2021年に複業(パラレルワーク)でウェブマーケティング支援事業をスタートされたそうですが、どういった背景があったのでしょうか?
木口 祐一さん(以下、木口さん):私は、証券会社やIT系企業で営業経験を積み、2004年にこの会社へ入社しました。金融機関向けシステムソリューションの営業などを経て、今も会社員として働きながら、個人事業を展開しています。
大きな転機は、2020年の2月に脳出血で倒れたことです。当時の記憶はなく、気がついたときには病院のベッドの上で……。危険な状態だったそうですが、幸い大きな後遺症なく回復できました。
私が倒れたその頃、横浜でダイヤモンド・プリンセス号から新型コロナウイルスの感染者が出てニュースになっていました。2か月のリハビリ後に退院したら、世の中が一変してしまって。緊急事態宣言が発令され、会社もリモートワークになり、人との接触に気を使わなくてはならなくなりました。世の中の変化をうけ、今後の働き方をどうしようか考えたんです。
――コロナ禍とご病気が、働き方を考えるきっかけになったんですね。
木口さん:私の場合、今の会社で一定の成果を上げてきたと自負していますし、ポジションにつくこともできた。本業での仕事にやりがいを感じています。ただ、まだ子どもも小さいですし、まだまだ健康を維持しながら仕事で活躍したい。これからのことを考えたとき、働き方に変化が必要だと思ったんですね。
なぜこの会社にきたのか振り返り、挑戦したい部署へ異動願いを出しましたが、会社としては難しそうで……。持ち前の営業スキルを活かした転職も考えましたが、それはいつでもできること。新型コロナウイルスで、求められる営業スタイルも変わりました。このインタビューのように、離れていても移動時間を考慮せず対話ができる。情報の届け方も、いろいろな手段がある。これまでの営業の範囲を超えて、一気通貫でしなきゃいけない。そこで、自分の新しいスキルとして、なにかプラスになるものを得たいと思い個人事業を始めることにしました。
営業スキルとウェブ解析士の可能性
――なぜ、ウェブマーケティングで事業を起こそうと思ったのですか?
木口さん:これまで、IT系企業に勤めてきたので、漠然とIT関連の事業ができたらと考えていました。中小企業診断士、ITコーディネーターなど模索するなかで、見つけたのがウェブ解析士です。2021年4月に開催された 『WACA×日本経営士会×ITCA が考えるDXへの向き合い方』に参加し、ウェブ解析士協会代表理事の江尻さんの話を聞きました。
「Facebookで気軽に友だち登録して」とお話しされていたので、半信半疑で申請したところ、快く承認してくださったのが印象的でした。このセミナーに参加した時点ではITコーディネーターの資格取得を検討していたのですが、ウェブ解析士に関しても興味を持つようになりました。
その後も可能性を模索する中で、SEOへの興味が増し、「ウェブマーケティングに取り組もう」と決意して、WEB MARKSさんのWebマーケター養成スクールに参加しました。そこでも、ウェブ解析士を勧められまして。2021年10月にウェブ解析士を取得、その後上級ウェブ解析士を取得しました。
――今(2022年2月時点)、ウェブ解析士マスター講座も受講中とのことで、なぜ上級ウェブ解析士だけではなく、マスターまで取得しようと思われたのですか?
木口さん:資格取得には時間も体力も必要ですよね。本業、個人事業、資格勉強と並行すると時間が足りない。まして、子どももまだ小さいので家族の時間も……となると難しく、まずは資格取得をやりきっておく狙いがありました。
一つの資格、知識の集合体としてやりきる。やってみて、課題の多さに頭を抱えていますが(笑)。不合格だったとしても、受講で得られるものは大きいと感じています。
経験を積み、成長を促進するコミュニティに期待
――資格に期待することはなんでしょう?
木口さん:マスター講座を受講することで、ウェブ解析士協会のつながりに加わってみたい気持ちがあります。協会で活躍する方との交流、協働経験をしてみたい。あとは、すごく打算的ですが、マスターなら講座開催できる!という期待もあります。一つのまとまったビジネスモデルが持てるので、自分の事業で強みになるんじゃないかと。
私自身、年齢的に若くないので、次の一歩に悩んで立ち止まったり、「次の機会に……」なんて考えたりしていたら、そのうちに死んでしまうだろうなって思うんです。思い立ったらやっておこうという感じ。
――資格取得で得られた価値は、具体的に何だったと思いますか?
木口さん:ウェブ解析士マスターは受講中ですので、上級ウェブ解析士認定講座までの話をすると、資格は、取得しただけで有利に働くわけではないですよね。資格を取得するだけなら、テキストを読んで理解できれば基本的に合格できるはず。大切なことは、その知識を腹に落とす経験です。私は講座で、それに必要なアウトプットとフォローを講師の方にいただくことができました。
得た知識がどのタイミングで必要になるか、ほとんどの場合わからないですよね。知識を擬似的にでも使っておくと、いざというときの初動が違うのではないでしょうか。部署異動で、具体的な業務はわからなくても、上司の言葉がわかると物事がスムーズに進んだりします。現時点の価値と未来の可能性の両面で判断し、物事に取り組むと、チャンスが広がると思います。その点で、ウェブ解析士と上級ウェブ解析士は、ワンセットでやっておくと良いなと感じました。
いつかその時のために、可能性を広げながら進む
――ウェブ解析士と営業スキルを掛け算して得られる価値は、どんなものだと思いますか?
木口さん:私自身の営業経験から言えば、クライアントの立場を理解して物事が進むよう、テクニカルな部分も含めて伝えられるところに価値があると思います。経営者が見るポイント、担当者が役員に提案するときに押さえるポイントは理解しているので、それぞれ段階に沿ったコミュニケーションが求められますよね。単純に数字をみせるだけでは、相手の理解が得られず物事が進まない。
本業ではエンジニアがいて、私は営業としてスペシャリストの言葉を翻訳して、お客様とコミュニケーションをとるのが仕事でした。それを、SEOやウェブ分析の知識も広げることで、本業とは少し違う分野にも活かせるはずだと考えています。
――今後、本業と副業のバランスはどのように考えていますか?
木口さん:正直、この先の具体的なことは考えていなくて、あくまで夢物語ですが。やりたいことは、中小企業、地方の企業に向けて、自分が培った営業力とウェブマーケティングの知識を駆使できたらと思っています。
父が会社経営者だったのですが、私自身は後を継がず、最終的に会社はたたみました。継がなかったことに後悔はないけれど、自分を育ててくれたふるさとでお手伝いできることがあればいいなと漠然と思っています。ある程度、力がついたら挑戦したいです。
あとがき
突然の入院とコロナ禍をきっかけに、働き方をみつめた木口さん。本業と並行して、ウェブ関連の個人事業をされる方はまだ少数かもしれません。ですが今後、マーケティングやウェブ解析の分野において可能性を広げたい方々が、ウェブ解析士協会の各種講座とコミュニティで活躍されるようになったら、社会全体が大きく前進するのではないかと想像したインタビューでした。