株式会社まぼろしの益子です。
ここのところ、読んでよかったと思えるウェブ記事は、インタビューや対談形式が多い気がしています。会話特有のリズムのよさ、表現のやわらかさ、自然な言葉選びなどのおかげで、「目で読む」のではなく「耳で読む」感覚で楽しめるからでしょう。
わたしもウェブサイト制作の一貫で、クライアント企業にインタビュー記事づくりを提案することが多く、実際にインタビュアーやライターとして関わることがあります。このような経験をもとに、インタビュー記事づくりで大切な5つのポイントをまとめてみます。
実際のインタビューメモ(30分ほどのインタビュー)
1. 対象者に聞きたいことを事前共有
質問をされても、すぐに答えられる人ばかりではない
まず、当日聞きたいことを、対象者(インタビュイーと呼ぶことがあります)に事前に共有しておくことが大切です。その場でポンポンと質問をされて、当意即妙に答えられる人ばかりではなく、じっくり考えて答えたい人もいますし、事前にエピソードに関する人に許可を得ておきたいといったニーズがありえます。
メールに箇条書きでかまいません。当日聞きたいことを、対象者に事前に連絡しておきましょう。広報や人事担当者を介するなど、直接連絡できない場合でも、担当者経由で対象者に伝えてもらうようにしっかりとお願いします。
ときには、インタビューのストーリーや落としどころを、広報や人事の方針、媒体の方針に合わせたいケースがあります。そういった点も、対象者とオープンにすり合わせておきましょう。ただし、作り込みが行き過ぎると、会話ならではのよさが生かせません。自由で偶発的な発言を歓迎しながら、全体のバランスを考えて記事にまとめましょう。
2. カメラマンや担当者と一緒にムードづくり
インタビュー取材は、写真撮影と一緒に行うことが多いものです。インタビュアーとカメラマンが気心の知れた間柄だと、ムードづくりがしやすいでしょう。もし(ブッキングを自分が担当しないなどの理由で)初対面のカメラマンであっても、笑顔であいさつをすること、少し会話をして心を通わせておくこと、要望があれば伝えておくことが大切です。
同じ場にいる他の人にも発言をうながす
相手企業の広報や人事担当者が同伴してくれる場合は、(記事でどう扱うかは別として)インタビュー内の会話に参加してもらうと、雰囲気がよくなります。「◯◯さんから聞きたいことはありますか?」と、発言をうながすのもよい方法です。
こういったムードづくりのためには、スケジュール調整やリマインドなどを主体的に行うのはもちろん、インタビュー項目、関係者の名字(「◯◯さんといいます」程度でOK)などを事前共有し、チーム力を高めておきましょう。
段取りのよし悪しは、当日の雰囲気に影響するので要注意です。
3. メモ書きだけで原稿を書けるように
インタビュー中、発言をメモしておくのは当たり前として、メモ書きだけで原稿をひととおり書けてしまうくらいの深さが望ましいでしょう。というのも、録音した音声をきちんと聞き返すのに、最低でもインタビューと同じ時間がかってしまうからです。
さらに、重要な発言かどうかの判断は、現場の雰囲気の中で行ったほうが適切であり、自然とそう判断しながらメモをしているはずです。一方、音声ではすべての発言が等しく大切だと思えてしまい、必要な分量を大幅に超えるほど、あれもこれもと文字起こしをしてしまう傾向があります。
音声を聞きなおすとしても、メモが不足している部分や、念のため確認しておきたい部分だけ、というスタンスがよいでしょう。当然ながら、メモは自分の記憶が引き出せればよいので、キレイに書く必要はありません。
座談会はライターをおいて自分はインタビュワーに徹する
なお、会話をかなりテンポよく進める必要がある場合や、座談会のように発言者が複数いて、会話をうまくモデレートする必要がある場合は、詳細なメモ書きは困難です。こういったケースでは、録音した音声を頼りに原稿を書くしかありませんが、インタビュワーとは別にライターを置き、ライターがメモ書きや原稿化に徹する(たとえば、広報や人事担当者がインタビュワーを、自分がライターを担当する)方法も検討しておいたほうがよいでしょう。
4. 本音を引き出す
本音を引き出すには、安心して話してもらうことが大切です。カウンセリングではないので、人間的な信頼を得ようとまで考える必要はありません。仕事の姿勢や進め方を、さりげなく伝えれば充分です。
録音用のICレコーダー(電池型)
たとえば、ICレコーダーは、「一応、確認用で録らせていただきますね」と断ってから録音ボタンを押すとよいでしょう。言外には「聞き間違い、書き間違いがないか照合するために」という意味が含まれます。
たまにインタビューを受ける側になることがありますが、うやうやしく「録音させていただいてよろしいでしょうか?」と聞かれると、正直、困ります。プロの仕事としては録音するのがふつうであり、インタビューを受けた時点で許可が得られていると考えてよいからです。あくまで、さらっと触れればよいでしょう。
デモページや公開前の段階で、内容を確認してもらえる旨を伝えるのも効果的です。通常のワークフローとして、それなりの分量のインタビューであれば、対象者に内容をチェックしてもらうのが当然です。そのことを事前に伝えておけば、相手も安心して話してくれます。
本音や体験談を随所に含めることで、血の通った記事に
失敗談やプライベートな話など、相手が言いにくいことを聞く場合は、「記事に入れるかどうかは置いておいて」と伝えてあげると、ハードルが下がります。本音や体験談を随所に含めることで、血の通った記事になります。抽象的な会話に終始せず、リアリティのある話を引き出しましょう。
5. 読める文章にする
むかしのような「言文不一致」ではなく「言文一致」の時代とはいえ、話し言葉と書き言葉には依然として差があります。
ら抜き言葉、語尾の繰り返しなど、補正ポイントはたくさん
会話では通じるあいまいな言葉や言い回しは、文章ではなかなか通じません。会話中の笑いや驚きをそのまま文字化したら、「笑」や「!」が頻繁に出てきてしまい、とても読んでいられないでしょう。ほか、ら抜き言葉、語尾の繰り返し、その人の言い癖など、読める文章にするための補正ポイントがたくさんあるのです。
会話そのままでは「読める文章」にならないと考えて、原稿をきちんとブラッシュアップしましょう。すでに触れたことも含めて、インタビューや対談を記事にまとめる際、特に気をつける補正ポイントは、次の7つです。
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ウェブ記事制作の参考にしていただければと思います。