インタビュー記事を「読める文章」にするために

株式会社まぼろしの益子貴寛です。

以前のコラム「インタビュー記事づくりで大切な5つのポイント」で、会話文を「読める文章」にするには、次の7つがポイントであると書きました。

これらの理由を詳しく聞きたい、という声をいただきましたので、続編コラムとしてひとつひとつ説明します。

目次

1. カッコ笑い(笑)や感嘆符(!)は入れ過ぎない

カッコ笑い(笑)や感嘆符(!)は、本来、読み手が文章を読んで、自然とそういう気持ちになるものであり、書き手が率先して示してしまうのは、ちょっと安直なのです。もうちょっと踏み込んでいえば、「読み手の想像力を信頼していない」のかもしれません。

笑いには、微笑、苦笑、爆笑、冷笑、照れ笑いなど、さまざまな種類があります。これらを文字で書き分けるのは大変むずかしいものですし、当然、すべてをカッコ笑い(笑)で示すのも過剰です。内輪だけで盛り上がっている印象になってしまい、第三者に向けたインタビュー記事としてはとても読んでいられません。

カッコ笑い(笑)も感嘆符(!)も、少しであれば文章のよい彩りになります。どちらも、1本のインタビュー記事でひとつかふたつが許容範囲でしょう。

2. 三点リーダー(……)による余韻残しは最低限に

三点リーダー(……)は、「◯◯ですが……」と余韻を残したり、含みをもたせたりしたいときに使います。たしかに余韻を残す効果はあるのですが、使いすぎると文章全体が煮え切らない印象になってしまいます。せいぜい、使っても1本のインタビュー記事でひとつかふたつ。もちろん、なくてもよいでしょう。

使うのであれば、きちんと三点リーダーをふたつ重ねて「……」とします。ピリオド、読点、中点などで「…」「...」「。。。」「・・・」と書くのは、本来は正しくありません。日ごろのコミュニケーション上では問題ありませんが、記事では「……」と書きましょう。

なお、三点リーダーは文末ではなく文頭にも使えます。たとえば「……わかりません」と書かれていると、大きな含みを感じます。ありきたりな表現ではないので、読み手も楽しんでくれるでしょう。機会があれば、使ってみてください。

3. ら抜き言葉などの基本ルールに注意

特に会話文では「ら抜き言葉」がだいぶ市民権を得ています。とはいえ、きちんと「ら入り」で書かれた文章に違和感を覚える人はほぼいない一方、「ら抜き」の文章に不備や不足を感じる人はまだまだ多いものです。

文章の基本ルールは、ほかにもたくさんあります。「文章ルール」や「文章作法」で検索すれば無数のページがヒットするでしょう。解説本もたくさん出版されています。2010年の常用漢字の改定が29年ぶりだったことからもわかるとおり、話し言葉に比べて書き言葉は保守的であり、ルールがコロコロと変わることはありません。ゆっくりでよいので、身につけていきましょう。

ある程度、ルールを会得してきたら、共同通信社の『記者ハンドブック 新聞用字用語集』を手元に置いて、たまにパラパラとめくるのがお勧めです。送りがなの正しい使い方、誤りやすい語句、用語や表記に関する資料などがまとめられており、開くたびに新たな発見があります。

4. 文末の「~ね」は、ほどほどに

話し言葉では「そうなんですね」「それは楽しそうですね」といった表現が当たり前に使われます。書き言葉としても、適度に「~ね」が含まれているインタビュー記事からは、和やかな雰囲気、臨場感、会話者同士の親しさなどが伝わってきます。

ただし、「◯◯と思ったんですね」「◯◯でしたね」「◯◯してもらったんですね」と何度も繰り返されていると、なれなれしさや歯切れの悪さが感じられてしまいます。実際の会話では「~ね」が頻繁に出てきたとしても、文章では少なめにしましょう。

5. 文末の繰り返し回避(「です」「です」「です」はダメ)

「です」「です」「です」や「でした」「でした」「でした」と同じ文末が3つ続くと、文章が単調に感じられてしまいます。2つまでが許容範囲、3つ以上は厳禁と考えて、うまく調整しましょう

たとえば「思ったんです」を「思いました」、「できました」を「できたんです」など、「です」と「でした」は入れ替え可能です。また、4で説明した「~ね」を文末の繰り返しを避けるのに使うのは、上手な方法です。

6. 文末はスマートに(「することができます」を「できます」に)

インタビュー記事は「テンポのよさ」が魅力のひとつです。文末がもたもたしていると、魅力を大きく減じてしまいます。「課題を発見することができます」を「課題を発見できます」、「成果を出すことができました」を「成果を出せました」に変えると、文末がスマートになり、次の文にスムーズに入っていけるので、読み手のリズムを損ないません。

原稿を書いている段階では、なかなか意識できないポイントです。ひととおり書き終わったあと、見直し時に徹底するとよいでしょう。

7. 口語ならではの意味の不正確さや不明瞭さを補う

実際の会話では、その場の雰囲気、会話者の関係性、表情や動作によって、言葉がだいぶ省略されているものです

経験のある人はわかると思いますが、録音した音声だけをもらってインタビュー記事を書くのは、かなり想像力を働かせないと話が理解できないため、たいへん苦しい作業です。インタビュアーと別にライターを置く場合でも、ライターが現場に同行したほうがよい(ふつうはそうする)のは、その場にいないと伝わらないことが無数にあるからです。

その会社に特有の省略語や肩書き、業界内の専門用語、人名なども、そのままでは読み手には伝わらない可能性が高いでしょう。
例えばウェブ解析用語の「CVR」が「コンバージョン率」だとわかるのは、限られた業界や職種の人だけです。こういった言葉は、メモをとりながら「あとで確認」と示しておく、記事化の際にカッコ書きで正式名称や意味を補足する、別の表現を探すといった工夫が必要です。

また、インタビュー対象者は、理路整然と話せる人、饒舌で多弁な人ばかりではありません。発言をそのまま文字化しただけでは伝わらない内容があるはずです。意味が通らない部分やあいまいな部分をきちんとケアすることも、記事を書く際の大切な作業です。

 

最後に

以上、インタビュー記事を読める文章にするための7つのポイントを説明しました。

具体例として、上記7つの観点からリライトをする前と後の文章を用意しました。読み比べてみてください。

リライト前

はい、その作業の多くの部分を自分で考えさせてもらいました! すぐに思いついた施策が2つあって……。ひとつはランディングページのCVRを改善する施策、もうひとつは評価指標の設計でしたね(笑)。前者は設計どおりに進めて、きちんと成果を出せました(笑)。後者は僕が提案した手法で分析を行う必要性がわからず、まずは実施することになりました!

むずかしいのは、状況に応じて課題が変わってくるので、どのような手法にも改善の余地があることですね……。高い視点から俯瞰的に見れるようになると、多くの課題が発見できますね。同時に、限られた時間の中で何を解決すべきかを戦略的に考えれることが大切になってきますね。結局、僕が考えた手法ではうまく分析できなかったのですが……(笑)。仕事に進め方に関するこのような大きな課題が明らかになり、次のプロジェクトから活かせたので、よしとしています(笑)。

リライト後

はい、Webサイトの改善作業の多くを自分で考えさせてもらいました。すぐに思いついた施策が2つあって、ひとつはランディングページのコンバージョン率(申し込みや購入などに到達する率)を改善する施策、もうひとつは評価指標の設計でした。前者は設計どおりに進めて、きちんと成果を出せました。後者は僕が提案した手法で分析を行う必要性がわからず、まずは実施することになりました。

むずかしいのは、状況に応じて課題が変わってくるので、どのような手法にも改善の余地があることです。高い視点からプロジェクト全体を俯瞰的に見られるようになると、より多くの課題が発見できます。同時に、限られた時間の中で何を解決すべきかを戦略的に考えられることが大切になってきます。結局、僕が考えた手法ではうまく分析できなかったのですが(笑)。仕事に進め方に関するこのような大きな課題が明らかになり、次のプロジェクトから活かせたので、よしとしています。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

株式会社まぼろし 取締役CMO。1975年、栃木県宇都宮市生まれ。早稲田大学大学院商学研究科修了。
ウェブサイトの企画、設計、プロジェクトマネジメントから、
リスティング広告運用、ソーシャルメディア運用、
アクセス解析レポーティング、ランディングページ設計、SEOまで、
ウェブマーケティング全般を担当。Google アナリティクス認定資格者(GAIQ)。Google AdWords認定資格者。
社団法人 全日本能率連盟登録資格「Web検定」プロジェクトメンバー。日本マーケティング学会 会員。主な著書に『Web標準の教科書』(秀和システム)など。

目次