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地方の中小企業こそ、やり方次第でインターネットの恩恵を受けられるはず。
こんにちは。上級ウェブ解析士の坂上北斗(さかうえほくと)です。株式会社メディア・エーシーという会社で、高知県を中心に、主にインターネットを活用した販促支援を行っています。 今回ご紹介するのは、高知県高知市の帯屋町商店街近くで、女性向けのアパレルショップを営むISEYA(イセヤ)さんのホームページ新規構築の事例です。 結果としては、立ち上げて1ヶ月程度で多数のアクセスを集め、「ホームページを見て来ました」と来店されるお客様が増加。再来店を促すために運用していたメルマガも、短期間に会員が倍増するという成果を上げることができました。 当然ですが、初めからこのような成果が上がると保証されているわけではありません。しかし、ホームページのアクセスデータなど、ウェブ上で容易に取得できるデータを活用することで、成果を上げるための可能性をつかむことができます。 私は、大企業よりもむしろ中小企業や小規模事業の方が、インターネットの恩恵を受けやすいと考えています。商圏(あるいは客層)が狭く、商品が少ない中小企業だからこそ、データを活用することで、インターネットを味方につけることができるのです。 これから、もっとインターネットを活用したいと考えている皆さんのヒントになれば幸いです。
そもそも、うちのお店ってホームページを作る意味があるのだろうか?
ISEYAさんは創業27年になる、高知市帯屋町商店街近くにお店を構える女性向けのアパレルショップです。オーナーの田村さんが、20代の頃にお店をオープン。 トレンドの入れ替わりの速いアパレル業界の中で、一時期はメンズのアイテムを扱っていたことも。現在はMila Owen、FURFUR、Salon de Balconyといった30代前後の女性向けのブランドを中心に扱っています。 田村さんがホームページを作ろうと思い立ったのは、商工会議所の中小企業診断士の薦めでしたが、ホームページのない状況で20年、お店を経営してこられたこともあり、お金を出してホームページを作って成果が上がるのかと半信半疑だったといいます。 業界紙などでオンラインショップの売上が大きくなっていることも知ってはいるものの、大手アパレルメーカーはともかく、高知の小さなお店で同じようなことはできないだろうと考えていました。 また、20年前にはご自身でホームページを作ってみたこともあり、お金を出して制作を外注することにも疑問を抱かれていました。 今ひとつ、ホームページ制作に踏み切れないまま時間が過ぎていく。私が田村さんにお会いしたときは、そのような状況でした。
来店客が増えるのであれば、手段はホームページでなくてもいい
田村さんの話を伺って、最初に考えたのは「小さな小売店の場合、商品か店舗のサービスに特徴的な強みがなければ、ただホームページを作っても効果は薄いだろう」という点、また新規顧客の獲得を目的とした場合は、お店からの継続的な情報発信を行わないと、そもそもページを見てもらえない可能性が高いということでした。- 強みはあるのか
小売=商品そのものの価値は、他店と変わらないため、お店か販売方法に魅力的な何かがなければインターネット上で埋もれてしまう - 体制はあるのか
初めてのホームページを知ってもらい、継続的に見てもらうにはお店側も継続的に情報を更新・発信していかなくてはいけない
- お店の立地
中心商店街から少し外れた通りにあり、人通りが少ないため見つけてもらいづらい。(「車の方が通行量多いんだよね…」とのこと) - メーカーとの関係
メーカー直販サイトが存在し、小売店は一定の売上がないとネット販売をさせてもらえない。 - 販売価格
メーカーとの関係上、価格は固定されている。
インターネットで検索する人が急増していたあるブランド名
田村さんから伺った、ISEYAさんで取り扱っているメーカーのブランドについて調査する中で、1年前からある特定のブランドの「検索数」が爆発的に伸びていることを発見しました。 2013年時点では、そのブランド名による検索数はほとんどゼロだったのですが、2014年から徐々に増加し、秋口には3〜4倍になっていたのです。メーカーが大規模なプロモーションをかけた結果、ブランドについて検索するユーザーが増えているということがわかりました。 また、あとでわかったことでしたが、アパレルオンラインショップ大手のZOZOTOWNにおける一人あたりの年間購入額は、1位:東京、2位:千葉、そして3位:高知となっており、続いて4位に徳島、5位に香川と四国エリアが首都圏並になっていました。 加えて、高知は関東と比較すると人口あたりのアパレルショップの数が1/10程度であるという情報も見つかりました。 つまり、該当するブランドのアイテムが欲しい潜在顧客は県内に存在しているものの、ISEYAさんの存在を知らないためにネットで買わざるを得ない(=できれば、試着してみたい)層が一定存在するかもしれないのです。このブランドのファンに知ってもらえれば、高知県内では取扱店はISEYAさんのみですので、リピートしてくれる可能性があります。
お店の住所は変えられないが、案内の仕方は変えられる
一方で、お店の周りに目を向けると、徒歩圏内の帯屋町商店街にスターバックス、書店、大学のキャンパスなどが新しくできてきており、図書館が移転する計画もあり、人の流れもよくなる可能性があると考えました。 ちなみに、この「帯屋町商店街」は、高知県民なら誰もが知っている商店街です。それならお店を紹介するトークとして、住所である「高知市本町のアパレルショップ」ではなく、「帯屋町商店街から歩いていけるアパレルショップ」「帯屋町商店街でのショッピングや街歩きのついでにフラッと立ち寄れる」ことを前面に出し、商店街に車で来る人のために駐車場についての案内も入れるといいのでは……。こう考えると、立地はむしろ強みであるようにも思えてきました。 この内容を企画書にまとめて、オーナーに提案したところ、「ホームページ、やってみようか」と、制作がスタートしたのでした。
認知拡大のためのソーシャルメディア選定
ホームページを知ってもらうための集客手段として、Facebookページを設置してページ更新情報を発信するようにしました。また、すでに運用しているメルマガ会員に登録してもらうための流れも作るようにしました。 現在では、アパレルショップと相性のいいSNSはInstagram、というのが一般的なイメージかと思いますが、当時、Instagramはまだスマートフォンアプリのみでホームページの更新と連動ができなかったため、運用が煩雑化してスタッフさんの負担が大きくならないように、一旦様子をみることにしました。(2017年5月現在、一部を見直す協議もしています) 地方都市では、同様の傾向があるようですが、高知ではインフルエンサーとなるような活動的な人たちがFacebookを多く利用しており、また地元の活動やお店を応援しようという地元愛の強い方が多いため、ゼロからSNSの運用をスタートして見込客に情報を届ける難易度が低いとも考えていました。
SNSの投稿とアクセス解析データを見ながら記事内容を調整
いよいよホームページが完成し、企画時点での予定通り、取り扱っているアイテムの情報やコーディネート、セール情報などを記事として発信していくことをスタート。 お店を知っていただいて、来店いただくことを目指していることから、ホームページに集客してお店情報を知ってもらう、メルマガ会員になってもらって継続的に情報を受け取ってもらうことを目標としました。 2ヶ月後、Facebookとホームページのアクセス(Google アナリティクス)のデータを集計、アクセス解析を行いました。ホームページの集客につながっている投稿ページを把握するためです。 ホームページでよく見られているページのランキングを抽出して、Facebookに投稿している記事の閲覧数と比較してみると、Facebookではよく見られている投稿が、ホームページの集客につながっているとは限りませんでした。 この結果をレポートとしてまとめてお店に持っていき、「タイトルから、続きが予想できないとクリックしてもらえないのでは」などと、スタッフさんと意見を交換しながら、タイトルや投稿の仕方に修正を加えていきました。 内容を改善していくことで、Facebookからのアクセスは増加していきました。さらにキーワードリサーチで発見した、あるブランド名を検索ユーザーにも、ISEYAのホームページに訪問してもらえるようになっていったのです。ホームページは、新規客の来店に効果あり!
投稿する記事の内容に修正を加えながら3ヶ月経った頃、1ヶ月間の訪問数は3,000件を超え、「ホームページを見て来ました」という新しいお客様が来店されるようになっていました。また、人気のアイテムは、都市部では売り切れになることもあるようで、高知県外から問い合わせが入ることもあるとか。元々運用されていたメルマガも、ホームページオープン月から急増し、再来店を促す流れも生まれました。