間接効果を分析し、顧客獲得単価を約3分の2に改善した事例

はじめまして、ウェブ解析士マスターの里村仁士(さとむらひとし)です。
ブルースクレイ・ジャパン 株式会社という会社で、リスティング広告の運用を中心としたウェブマーケティング関連の仕事をしています。

中小企業において、何度かウェブサイトに再訪問して資料請求や申し込みを行ない、商談や受注のステップがあるような「リードジェネレーションサイト」は珍しくないですよね。このようなウェブサイトの場合、最初のきっかけは何だったのかがわかりにくいものです。

そこで今回は、直接効果ではなく「間接効果」の検証について、実際の数字を交えてご紹介いたします。

目次

データドリブンアトリビューション(DDA)とは

突然ですが、「データドリブンアトリビューション(DDA)」という言葉を聞いたことありますか?
Google Adwords(リスティング) では このDDAを推奨しています。それぞれの言葉を分解してみましょう。

  • データドリブン = 効果測定のデータを元に次のアクションを起こすこと
  • アトリビューション = 間接効果も含めて、コンバージョン(CV)の貢献度を評価

少しわかりづらいので、具体例でお伝えします。

基本設定におけるCV計測の考え方(ラストクリックモデル)

リスティング広告を配信している場合、上図の例(基本設定)では、CV はキーワード C にしか計測されません。その時、以下のような声が聞こえてきそうです。

「キーワード A、B も貢献しているのに、キーワード C だけ評価するのはどうなのかな?」
「キーワード A、B の流入がなければ、キーワード C の CV もなかったかもしれないよね」
「じゃあ、CV を キーワード A、キーワード B にも分配しよう」
「でも、どう分配すればいいの?悩むなぁ。」

そこで、DDAの登場です。

DDA では CV の貢献度の分配をGoogleが勝手にやってくれます。勝手と言っても、適当ではありません。Googleの高度なアルゴリズムにより、貢献度を割り当てます。

貢献度を加味したCV計測の考え方

以下はAdwordsヘルプの引用です。

ユーザーが広告主様の商品を検索し、コンバージョンに至った過程にもとづいて貢献度を割り当てます。
アカウントに蓄積されたデータを使って、ビジネス目標にどの広告、どのキーワード、
どのキャンペーンがもっとも貢献したかを判断します

Adwords ヘルプ:データドリブン アトリビューションについて

つまり、コンバージョンモデルを「ラストクリック」から「DDA」に変更することで、本来の広告効果を図ることができて、配信戦略にも活用することができます。

この「配信戦略にも活用できる」という所が非常に重要です。

アトリビューションの評価が分かっても、それを戦略として落とし込めなければ、ただの紙切れデータで終わってしまいます。Google Adwords ではコンバージョンモデルをDDAに変更することにより、変更したコンバージョンを元に、入札調整などが可能です。

それでは、実際の事例を見てみましょう。

データドリブンアトリビューション(DDA)事例

現状の配信結果をキーワード別(キャンペーン別)で比較した際に、上図のような結果でした。

特徴としては DDA の評価にすると CV は「ブランド名」が減少して「一般系」のキーワードが増加しています。この傾向からユーザーは「一般系」キーワードで検索して商材理解を深め、「ブランド名」キーワードでラストクリックしていることが行動として想定されます。便利な事に、DDAのモデルに変更しなくても、事前に現状の結果をAdwords の管理画面で確認できます。この結果を見ると「一般系」のキーワードを流入強化すれば「ブランド名」の CV も増加して、全体 CV が増えるかもしれません。

それでは変更後の結果を見てましょう。

上図はDDAを適用した前後比較の結果です。結果として 広告費用はAfter の方が少なく、CPA(平均獲得単価) は 38%減少、CV は約 12%増加した結果になります。

つまり、少ない広告費用でより多くのCVを獲得したことになります。

振り返り

コンバージョンモデルを変更したことにより、各キーワードの貢献度が変わりました。そして、変更後の CV 分配(貢献分配)を基準にして、最適な配信分配が実現できました。

成功した要因としては、コンバージョンモデルを変更しただけでなく、自動入札機能を活用していたことも挙げられます。CV 評価は流入傾向により多様に変化します。そのため、手動入札の調整では限界があり、自動入札を活用することにより、さまざまな要因にも対応できる範囲が広がります。

ただし、自動入札は学習期間などによりパフォーマンスが不安定になる可能性もあります。事例の課題としては、広告費用をもっと使用すれば、CVをより伸ばしていたかもしれません。

今後のアクションとしては、自動入札を使用していたので、学習期間を過ぎて、配信量が増える事をしっかりと監視する。もしくは、DDAの評価に合わせた自動入札設定(ターゲット CPA 設定など)を変更するという判断も必要になるかもしれません。

最後に

DDA は一定の条件が必要になります(過去 30 日間に 15,000 回以上のクリック、600 回以上 CV)。
また、検索連動広告のみの評価になります(ディスプレイキャンペーンは対象外)。(※2017年12月時点)

条件を満たさない場合は、以下のようなタイプもありますので、
目的に合わせた評価変更をお勧めします。

線形:CV 経路で発生したすべてのクリック(その広告のキーワード)に貢献度を均等に割り当てます
減衰:CV までの時間が短いクリック(その広告のキーワード)により多くの貢献度を割り当てます
接点:CV 経路の最初と最後にクリックされた両方のキーワードにそれぞれ 40% の貢献度を割り当て、それ以外のクリックに残りの 20% を割り当てます

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

2010年よりブルースクレイ・ジャパン株式会社にて勤務。リスティング運用、サイト分析、人材育成など多岐に渡る業務に従事。Google Adwords のトップコントリビューター(国内4人)として Googleより認定。

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