〈通販サイト改善事例・前編〉現状把握と問題点の整理~KPI設定~

はじめまして、ウェブ解析士マスターの日比野と申します。よろしくお願いします。

現在の主な業務は、ダイレクトマーケティングを中心としたコンサルティングサポートおよびマーケティング関連のセミナー講師をしており、中小企業を中心に販売促進をはじめ業務改善のための提案を行っています。

そこで今回は、私がコンサルサポートをしたECサイト「MONOIR(モノワール)」という喪服・礼服・ブラックフォーマル専門通販サイトの改善事例をご紹介します。

目次

「MONOIR(モノワール)」とは

「MONOIR(モノワール)」は、喪服・礼服・フォーマルウェアを専門に取り扱うフォーマル専門のファッションサイトで、コンセプトは、「百貨店品質の喪服をリーズナブルに即日発送で届ける、日本最大級の喪服専門通販サイト」。

このサイトを、マーケティングの4P(図表1)の視点から分析してみましょう。

(図表1)マーケティングの4P

一番の強みは価格・Priceでした。一般の路面店などで販売されている価格の約半額程度で、中心価格帯は15,000円から25,000円。商品自体も市販のものとまったく遜色なく、高い品質とデザイン性を備えた商品を扱っています。

もう一つの強みは流通・Placeで、さまざまな仕入れチャネルを確保しており、豊富な品揃えを提供できること。デザインバリエーションは常時150点以上で、女性向け商品は100点以上、男性向けにも50点以上。自分に合ったお気に入りの喪服・ブラックフォーマルが必ず見つかるというもの。

競合サイトとしては「アッドルージュ」「素敵体験」「AOKI」「TISSE」などで、これらのサイトと比べても商品アイテム数は圧倒的に多いのが特徴です。

サイトの現状把握と整理

「MONOIR(モノワール)」のサイト立ち上げは2014年の7月。そして事業改善のサポート依頼の話をいただいたのは2015年の4月頃、事業スタートより10ヶ月ほど経った頃でした。依頼内容としては、なかなか目標どおり売上げが上がらない、売上げ確保ができないので、収益がとれない。現状の問題点の指摘と売上げ改善のための方向性を示してほしいというものでした。

事業スタートからこれまでの10ヶ月間の収支を確認すると、売上げから商品原価のほか広告費、配送費、倉庫費等、外注費を除いた粗利は数十万円ほど、粗利自体がマイナスになっている月もありました。当初の事業計画書も確認させてもらいましたが、根拠がやや乏しく、かなりおおざっぱな内容でした。

そこで、まず取りかかったことは、事業計画を再度見直し、現状に即したものを作成すること。詳細な収支がわかるよう支出項目も細かく抽出し作成しました。

ここで参考にしたのが、上級ウェブ解士の課題となっているウェブマーケティング計画書です。このウェブマーケティング計画書に事業PL(損益計算書)を加えた「モノワール」ECサイト事業計画書を(図表2)作成しました。

ウェブマーケティング計画書は将来視点の ”計画書” となっていますが、自分は現状を把握するためによく使っています。計画書に事業スタート時から過去10ヶ月分の数値を入れていくことで、いろいろなことが見えてきます。数字は嘘をつかないという言葉どおり、より正確な現状を確認できるツールとして活用しています。

(図表2)「モノワール」ECサイト事業計画書(数字は抜いています)

問題点の抽出とKPIの設定

現状をまとめた数値からわかったことは、コンバーション率が悪いこと、トラフィックの8割がPaid Searchであること、季節性が比較的大きい商材(図表3「喪服・ブラックフォーマル・礼服」の検索ボリューム参照)であるにも関わらず、広告予算が均一に計画されていたため、需要が少ない月は広告効率が極度に悪化していること、などがわかりました。

(図表3)「喪服・ブラックフォーマル・礼服」の検索ボリューム

また、KPIがCPO(図表4「CPO・CPR・CPA指標」参照)で設定されており、これも今後の管理上の問題として上げました。

(図表4)CPO・CPR・CPA指標

通販事業の場合、KPIによく使われるのがCPO・CPR・CPAなどですが、今回の場合KPIを投資コストに対してどの程度の売上が上がっているかを表す、ROAS(Return on Advertising Spend)に変更することを提案しました。

理由としては、商品アイテムが150以上もあるため、月により一人あたりの平均販売単価が違ってしまうこと。また、冬物と夏物とでも大きく価格が差があるため、季節によっても顧客単価が変わってしまうためです。これにより、一人あたりの顧客獲得コストであるCPOでは収支計画にズレが生じてしまう恐れがあるためです。

ここまで、サイトの現状把握から問題点の抽出までを紹介してきました。次回は、具体的に実施した施策について報告したいと思います。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

PR会社、広告会社、メーカー広報宣伝部を経て現在に至る。各企業のマーケティング戦略、ブランド戦略、プロモーション企画等、広報・宣伝分野全般に携わる。専門分野はダイレクトマーケティング、webマーケティング、ブランド構築支援。経済産業大臣登録・中小企業診断士/岐阜商工会議所・エキスパートバンク登録。著書に『[最新]商業施設・SCの業種別テナント賃料負担力集成』(共著)『テナントモデルプラン集 ~サービス系テナント編~』(共著)などがある。

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