〈通販サイト改善事例・後編〉問題点解決施策~セッション数増とCVR改善~

こんにちは、ウェブ解析士マスターの日比野です。
前回はKPI設定について書かせていただきましたが、今回は、喪服・礼服・ブラックフォーマル専門通販ECサイト「MONOIR(モノワール)」の具体的改善事例を紹介します。

目次

集客効率の改善

この「MONOIR(モノワール)」サイトの問題点として、考えられるのは大きく分けて2つ。

1) 集客手段が広告に偏り、広告効率が悪いためコストがかかりすぎていること。
2) コンバージョン率が低いことでした。

まず、見直したのは広告予算管理方法です。

これまでは毎月一定の広告予算が設定され、それを消化していくというものでしたが、これをROASに沿って管理していく形に変更しました。具体的には、損益分岐売上に目標利益をプラスした数値を算出し、ROAS数字に置き換え、この数値が守られている限りはいくらでも予算投下可能という形に運用を変更しました。

これにより、期季節性が比較的大きい商材である喪服・礼服のニーズが高い時期は広告予算も上がり、低い時期(図表6「喪服・ブラックフォーマル・礼服」の検索ボリューム参照)は自ずと下がり、チャンスロスを起こすこと無く効率的に獲得が可能となりました。

(図表6)「喪服・ブラックフォーマル・礼服」の検索ボリューム

次に、広告費の効率化により、浮いた広告予算をコンテンツマーケティングの費用に回しました。目的は集客・訪問者数のアップ。毎月10~20の記事コンテンツを投入したところ、3ヶ月ほどで1.5倍ほど増加。ターゲットにとって、価値のあるコンテンツを提供すれば、集客効果の高い施策であることを実感しました。

販売チャネルの拡大

二つの施策により、自社サイトである程度収益を確保することができるようになり、売上げの大幅アップ目的に、販売チャネルの拡大を実施しました。

これまでは楽天やアマゾンなど販売せず、モノワールサイトのみでの販売でした。モール型ECサイトに展開しない理由として、「ブランドイメージが損なわれる恐れがあるため」ということでした。そこで、アパレル関連販売企業の状況を確認しました。

(図表7)出典:「ネット通販市場白書’13」アパレル関連小売企業のネット売上とチャネル

売上げ20億円を超えている企業で、当時、自社サイトだけで販売しているのは、16社中わずか5社のみ。売上げ拡大だけでなく、モール型ECサイトに展開することで、ブランド認知が広まり、ブランド強化にもつながるものであることを伝え、まずは、アマゾンをスタートさせることになりました。

アマゾンチャネルを追加したことで、自社サイトの売上げも伸び、全体売上げは4ヶ月後には1.5倍に、半年後には2倍まで拡大しました。

コンバージョン率の改善

2)のコンバージョン率が低い要因としては、やはりサイト構成の見にくさがありました。できれば、全体的なリニューアルが必要でしたが、サイトを立ち上げまだ10ヶ月程度。すでにかなりの額の投資をしているため、この時点で新たな予算を要求することは到底できない状況でした。

このような喪服・礼服の場合、ニーズとして品質ファッションとともに、入手までの時間も大きな購入決定要素となると想定されます。アナリティクスの数値を確認すると、新規セッションからコンバージョンまでの期間は2日以内が80%以上、3日以内だと90%を超えていました。

そこで、現状のサイトに「おいそぎの方どうぞご安心ください。最短3時間以内にすぐに発送いたします」という、翌日着を強調するメッセージをサイトサイドにデザイン化し挿入しました。(図6-before-after)。わずかこれだけの修正で、かなりのコンバージョンの改善が見られました。

(図表8-before)

(図表8-after)すぐに発送、翌日着を強調

まとめと今後について

以上がサイト改善あたり実施してきたことです。とくに目新しいこと、画期的なことはなく、仮説からデータ数値を見て、プランを立て実施するというPDCAを実行したのみです。

事業担当者の努力やウェブ制作を含め外注先のご協力により改善を進めた結果、事業スタートより約3年半で年間売上げ億円を超えるサイトとなり、収益も数千万単位で獲得できるサイトに成長しました。そして、6ヶ月程度前ですがサイトの大幅リニューアルも行いました。リニューアルにより、コンバージョン率も目標の1%に近づきつつあります。

しかし、まだまだ当初の目標収益額には届いておらず道半ば、今後もPDCAを怠らず、さらなる成長のために、寄与していきたいと考えています。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

PR会社、広告会社、メーカー広報宣伝部を経て現在に至る。各企業のマーケティング戦略、ブランド戦略、プロモーション企画等、広報・宣伝分野全般に携わる。専門分野はダイレクトマーケティング、webマーケティング、ブランド構築支援。経済産業大臣登録・中小企業診断士/岐阜商工会議所・エキスパートバンク登録。著書に『[最新]商業施設・SCの業種別テナント賃料負担力集成』(共著)『テナントモデルプラン集 ~サービス系テナント編~』(共著)などがある。

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