こんにちは、ウェブ解析士マスターの林弘之(はやしひろゆき)です。
株式会社ブルーベアという会社で企業のウェブマーケター育成を中心に、ネット広告やアクセス解析の研修をしています。この研修はオンラインでマンツーマンで行っておりますので、全国どなたでも受講することが可能です。
さて今回ご紹介するのは、ショップの立ち上げ時からウェブサイトの制作をご依頼いただいた、アパレル会社のウェブサイトを改善した事例です。
商品そのものに強みがあるため、広告宣伝費をかけず、0から始めて最高で1,000万円近い月間売り上げを出した10年間のウェブ施策の流れをご紹介します。参考になればうれしいです。
広告費0円でできるウェブ施策を考える
約10年前、SNSという言葉がまだ存在しない時代の話。以下、今では通用しない方法もありますが、変遷を感じてみてください。
SEOの3つの施策で検索エンジンからの流入を増加させる
ウェブサイトへのSEOの効果を高めるため、3つの施策を行ないました。
「広告費はかけたくない」というお客様のご要望に応えるため、新規顧客の獲得にはウェブサイトへのSEO、リピート販売にはメールマガジンを採用しました。この時代は Google よりも Yahoo! JAPAN のシェアが高かったため、Yahoo! JAPAN からの流入拡大を最重要課題としました。
1. Yahoo!カテゴリに登録する
ご存じの方も多いと思いますが、Yahoo!カテゴリへの登録は、昔の常套手段でした。
飛躍的に検索結果の上位にあがったので、毎日のようにカテゴリ登録をしていた方も読者の中にいらっしゃるのではないでしょうか。そのうち無料では受け付けられなくなり、ヤフービジネスエクスプレスという有料サービスを使うようになりました。
なお、「Yahoo!カテゴリ」「Yahoo!ビジネスエクスプレス」サービスは2018年3月に終了します。
参考:「Yahoo!カテゴリ」「Yahoo!ビジネスエクスプレス」サービス終了のお知らせ
2. ページを増やしてインデックス数を増やす
検索エンジンにページをたくさん認識されると上位に表示されるという情報があり、とにかくページ数を増やし沢山認識してもらえるようにしました。
今では、ただページを増やしても効果はありません。検索エンジンは、より「コンテンツの品質」の評価を重要視します。手を抜いて作られた質の低いコンテンツを多く持つウェブサイトは、それだけで全体の評価を大きく下げてしまう時代です。
3. 外部リンクを増やす
無料ブログを沢山立ち上げてウェブサイトへリンクしたり、協力関係にあるサイトやアパレルのポータルサイトなどに登録し、相互リンクページを作ったりして、外部リンクを増やしました。
これは現在、スパムと見なされてもおかしくない行為です。低品質な外部リンク対策のほとんどが Google から何かしらのマイナス評価や順位下落ペナルティなどを受ける対象となり得る、と考えなければなりません。中には、対象のウェブサイトとはまったく関係ない海外の掲示板からリンクして外部リンクを稼いでいたという悪質なサービスもありました。
これら3つの施策によって、安定的に検索結果の上位を占めることができ、新規顧客獲得には一定の効果がありました。
しかし「Yahoo!カテゴリ」「Yahoo!ビジネスエクスプレス」のサービス終了に象徴されるように、今では効果が見込まれない施策であるため、もし上記のような施策を提案されることがあれば、相手の知見をよく伺うことをお勧めいたします。
メールマガジンでリピーターを育成する
次にリピート販売のためのメールマガジンですが、まず、メールマガジンの配信スタンド選びから始まりました。この頃は「まぐまぐ」などのメールマガジン配信スタンドや、外部のメールマガジン配信サービスもたくさんあり、メールマガジン全盛期だったといえるでしょう。
しかし、今回の場合はネットショップで購入した人に対してメールを送りたかったので、メールマガジン配信機能を持ったショッピングサービスを採用しました。これによって商品を購入する段階でメールマガジンに登録することが可能になり、リピーターを増やすことにつながりました。
検索エンジンの変化と、スマートフォンの普及に伴うSNS時代の到来
2010年、Yahoo! JAPAN のアルゴリズムは Google の検索テクノロジーを使うようになり、更にスマートフォンが普及するにつれ、Google の利用率が高まってきました。
そしてついに、意味のない外部リンクを持っているウェブサイトはユーザーにとって価値が薄いと判断されるようになり、今までの SEO のやり方では通用しない時代がやってきます。
Twitter や Facebook の到来で、SNS からファンを作る
2012年頃から Twitter や Facebook が広がりはじめたことで、潜在的に興味のある人をファンにすることができるようになりました。とはいえ、ウェブサイトから SNS へリンクするだけでは、ファン数の増加は見込めません。
そこで、アパレル系で有名なインフルエンサーの方に SNS で取り上げてもらうことにより、ファン数を増やすことができました。これによって、新商品の紹介投稿が販売につながるようになったのです。
本格的にアクセス解析をはじめる
SNS の到来以前の時代は、アクセス解析と言っても「アクセスカウンター」など訪問者をカウントするものが多く、サーバーログ型のアクセス解析ツールが多かったものですが、ウェブビーコン型の Google アナリティクスなどの数値の信憑性が高まった頃から、活用が盛んになってきます。
マーケティングツールとしてのアクセス解析ツールによるウェブ解析を行なうようになってから、3つの現状と改善点が判明しました。
1. スマートフォンユーザーの増加
2015年頃からスマートフォンからの流入が非常に多くなり、実に7割近くがスマートフォンユーザーでした。これからも更に増加することが想定されたため、スマートフォン用サイトの改善に注力しました。
特にパソコンユーザーと大きく異なる点は、1ユーザーに対するPV数が約半分になっていたことです。行動の変化に合わせ、少ないPV数でも購入しやすい改善を行なうことになりました。具体的には、カテゴリを選びやすい名称に変更し、カテゴリ内の商品アイテムを減らし、特に売れ筋をカテゴリの上位に置くことにより買いやすさを改善しました。
2. 年齢層が高めになっていた
ウェブサイトにアクセスするユーザーの年齢層は、30代後半~40代が中心となってきました。Facebook を中心に活動してきたことに起因したようです。こちらはリピーターさんが非常に多く、以前は20代だった方が、運営とともに30~40代となってしまったのです。落ち着いた商品は売れますが、すこし派手な若年層向けの商品が売れなくなってきました。そこで、新たな販売促進を考え、新しいSNSによって若年層のファンを増やすための施策を行なうことになりました。そう、Instagram の導入です。
Instagram はビジュアルがメインのコミュニケーションツールなので、2017年の流行語にもなった「インスタ映え」する商品画像を中心にアップし続けました。各投稿にはハッシュタグをなるべく多く挿入し、さまざまな関連キーワードで検索されるようにして、若年層のフォロワー数を増やしていきました。
3. メルマガの開封率の減少
メールマガジンの開封率を調べると、以前より明らかに減少していました。メールアドレスの変更や到達率が下がっていることが原因であるとわかったので、メールマガジンに代わる新たなツールでリピート改善を行います。
そこで、若年層に使われているLINEからリーチできるよう、LINE@に登録しました。スマートフォンサイトのトップにリンクをはり、クリックをすると簡単に友達になれるため、すぐに人数は増えていきました。開封率と即効性が高いので、今でもリピーターへの新商品の販促にかなり重要なツールとなっています。
まとめ
これまで施策を中心にツールの活用方法をご紹介してきましたが、新しいツールを使えばどのような場合でも効果的というわけではありません。ツールの選択には根拠が必要ですし、何よりも継続が大切です。
しかし、私としてはまず「使ってみる」こと、そしてアクセス解析ツールなどで傾向や効果を検証して課題を見つけ、更に活用するにはどうしたらよいのかを考えて「やってみる」ことを勧めています。目的に応じたツールの最適化を行っていきましょう。
これからも、時代とユーザーに応じたツールで成長を続けていきたいと思います。最初の一歩を踏み出したい方は、どうぞご相談ください。