脱ショッピングモール!北海道のグルメECサイトにおけるインハウス事例

こんにちは。ノース物産株式会社の鈴木と申します。
当社の運営している北海道のグルメ通販「最北の海鮮市場」の取り組みについてご紹介します。

この記事を読んでいる方は、外部からクライアントさんを支援する方が少なくないとは思いますが、内部でウェブ活用を行っているインハウスの事例として、参考になれば幸いです。

目次

ショッピングモールで急成長。安さで勝負!

「最北の海鮮市場」は、ネット通販の黎明期から北海道の海産物専門店としてショッピングモールにオープンしたお店です。港町の地元価格が評価され、出品した先から売れていき、急成長することができました。しかし、数年経つと競合店が多く出店し、気がつくと価格を下げないと売上を伸ばせない状況に。地元価格というウリを損なわないよう、仕入れ交渉で1円でも安く仕入れ、競合店に負けない安さで勝負をしていました。

「北海道の美味しい食材でお客様を喜ばせたい」と始めたはずのお店でしたが、気がつくと、「売上が上がっても儲からない」
「競合店の価格ばかり見てしまう」という状態に。いつの間にかお客様のことを忘れ、他店より安く提供し売上ランキングの1位を死守することばかり追いかけている日々でした。

ショッピングモールでは多くのことを学べましたし、お客様も喜んでくれました。しかし、この時のお客様は「商品の安さを喜んでくれる方」だったのです。この葛藤に向き合うには、勇気と時間が必要でした。

脱ショッピングモール・脱価格競争を決断

そして、私たちの目指すお店を実現するためには、販売方法に制約がなく、他店との比較を気にしなくてもよい自社サイトの運営に集中することを決断しました。この自社サイトのサービスを高めるためにウェブ解析を学び、資格を取得したのですが、改善までの道のりは一朝一夕でなんとかなるものではありませんでした。

自社サイトはショッピングモールのようにすぐ他店と比較されることはありませんが、ライバルはショッピングモールどころかインターネット上にいるため、ある意味、ショッピングモールで出店している時よりも大変です。ですから、ショッピングモールからの退店をやめようと思ったことは何度もありました。

それでも試行錯誤を繰り返しながら自社サイトを改善し続け、徐々に売上を伸ばしていくことができました。

そしてついに5年後、売上の7割を占めていたショッピングモールを退店し、自社サイトに100%注力できるまでになったのです。しかもその売上高は、今までの3倍以上にもなりました(上図参考)。

10年経って気づいたこと

実店舗と異なり、ネットショップではお客様の顔を直接見ることができません。それでも、どうすればお客様を笑顔にできるかと考え運営してきました。

お客様にご満足していただけるために……と、商品開発や商品開拓に力を入れていましたが、意外なところに答えを感じました。多くの試みの中から気づいたその答えとは、「北海道の魅力を発信する」です。

以下に、当店が取り組んだ事例を2つご紹介します。

事例1)生産者の想いを届けてロングセラー商品に

自社サイトでネットショップを展開するために、まずは白いとうもろこし「ピュアホワイト」の販売を開始しました。10年ほど前に流行ったので、ニュースなどでご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。甘くて生でも食べられるという魅力から、大人気商品になりました。

そこで、翌年にもっと多くの販売をしたいと思い、8月の収穫時期より3ヶ月も早い5月頃から予約を受けることにしました。予想通り収穫前に予約で完売となり、収穫時期の8月は他の商品の時期とも重なって大忙し。そんな中、お客様よりご連絡が……

「3ヶ月前に注文したのにまだ届かない!!」
「こんな商品を頼んだ覚えがない。勝手に送りつけるな!」

長期間お客様を待たせてしまうことへの配慮が足りなかったと反省しました。

そして、次の年からはスタッフが定期的に畑に足を運び、とうもろこしの生育状況を農家さんに確認して、その内容をホームページへ掲載することにしました。また、発芽した頃から背丈を越える大きさになって、収穫するまでの状況を月に1回程度、予約をいただいたお客様にお知らせすることにしたのです。これによって、クレームが前年の5分の1に激減し、お喜びの声を多数いただくこともできました。

それから数年経ち、安全・安心への要望が高まってきたことを受け、契約している農家さんが有機栽培へ切り替えることになりました。手間とコストがかかるものですが、当社ではできるだけ価格据え置きで、自信を持ってお届けしたのです。しかし……

「今までより、とうもろこしが小さくなった!」
「とうもろこしに虫がついていてビックリした!」

と、一部のお客様よりご意見をいただきました。

同梱したおたより

あわててお客様の声を農家さんにお伝えすると、「化学肥料を使えばとうもろこしは肥るけど、お客様に自然な美味しさのとうもろこしをかぶりついてほしいから、化学肥料は使いたくない。虫が付くのは安全な証拠。葉の隙間にいる虫など完全に取り除けないので、お客様に理解してほしい」という回答をいただき、お客様と農家さんの思いにギャップがあることに気づきました。

とはいえ、お客様に「お願い」するのは、とても勇気がいることです。売上が下がるのではないか、常連さんに嫌われてしまうのではないか、企業努力が足りないと言われるのではないか、など、悩みは尽きません。しかし、農家さんは何よりもお客様のことを考えて無農薬栽培をしているのですから、その背景を正直に伝えることにしました。

とうもろこしに虫がつく理由や、今までよりも小ぶりになっている理由など、農家さんから聞いた話をホームページやパンフレットに正直に掲載したところ、なんとクレームが無くなったのです。この一件から、商品だけでなく、その背景にある生産者の想いを届けることが大切だと感じるようになりました。

それから、農家さんとはBBQでお酒を飲み交わし、就農した想いや将来の夢などを語り合う機会を増やしました。そこで交わした熱い思いを生育状況のお知らせメールやブログでもお客様と共有した結果、「白いとうもろこし」のファン以上に、「農家さんがつくるとうもろこし」のファンが増え、ロングセラー商品となったのです。

「商品だけでなく、北海道の魅力を伝える」ということが大切だと実感しました。

事例2)じゃがいも販売に工夫を加えてリピート率40%

北海道の情報を集めていると、「北海道で食べたジャガイモがすごく美味しかった!」という感想を頻繁に目にします。
そこで、ジャガイモの販売を始めることにしました。しかし、北海道産のジャガイモは、多くのネットショップやカタログ通販、大手量販店でも手に入ります。どうすればお客様に喜んでいただけるかをスタッフみんなで考えました。

秋にジャガイモがただ届くなんてつまらない。畑に植えた種芋から芽がでて、成長し、花が咲き、枯れて、収穫という体験を共有できないかと考えました。つまり、ジャガイモ畑のシェアリング(共同オーナー制度)です。春先にジャガイモ畑の共同オーナーを募って、生育状況をホームページとメールで定期的にお知らせします。収穫されたジャガイモは、共同オーナーで山分けという仕組みです。

「北海道に畑をもっている」とワクワクしていただくことが、収穫されたジャガイモの美味しさにもつながるだろうというのがスタッフみんなの共通意見でした。そこで、(擬似的ではありますが)自分が北海道の畑でジャガイモを育てている気持ちになっていただきたいと考え、オーナー様には、ご自身の名前が印刷された名刺サイズのオーナー証明書をお送りしました。オーナー証明書は10枚セットにして、10枚並べると畑の写真になるというちょっとした工夫も入れています。このような取り組みを考えている間、スタッフみんながワクワクしながらお客様を喜ばせようとしていたのが印象的でした。

そして、種まきから収穫まで、約半年ものあいだ生育を見守ってくれたオーナー様のご自宅にジャガイモをお届けしました。召し上がっていただいたオーナー様から、こんな嬉しいお便りをいただきました。

初めてオーナーにならせていただきました。
いつも発育状況をメールで知らせてくれたので、すごく楽しみに見守っていました!
今回は11キロのジャガイモとかぼちゃが入っていて、とても感動しました!
やっぱりスーパーで買うものより思い入れ?がある分、とても美味しい(笑) こんなワクワクするネットショッピングは初めてだったので、家族で感謝しています。
育ててくださった農家の方々に感謝です。楽しい時間をありがとうございました!!

このお便りによって、「工夫を加えた待ち時間は魅力的」であることを気づかせていただきました。

さらに、これを読んだスタッフからは感動とともに「もっとこうしたい」「こうしたらもっといいのでは?」と自然にアイディアが生まれてきました。お客様目線のアイディアが自発的に生まれるので、お客様がスタッフを育ててくれるという素晴らしい経験でした。

まとめ

「商品だけでなく、背景ごと魅力を伝える」こと、そして「工夫を加えて、待ち時間も魅力的にする」こと。この2つに気づいて実践したことで、私たちの目指すお店を実現することができました。

これを継続するためには、スタッフ一人ひとりの「おもてなしの気持ち」を高めることが大切です。これは効率化を求めていては得られません。反面、ITは刻々と進化し続けており、AIが一般化する時代もそう遠くはないでしょう。

このITを活用して「おもてなしの気持ち」をどのように伝えれば、自社にとってもお客様にとっても最高の状態になれるのか、日々考えております。
まずは、私たちが楽しく魅力的な人間になれるよう、お客様とのやりとりを通しても学んでいるところです。

IT活用やウェブ解析というと、データとにらめっこして売上をあげようとするイメージが強いかもしれません。数字も大切ですが、まずはお客様が自然に集まってくるようなワクワクをもって、その裏づけや効率化のためにデータを活用してみてはいかがでしょうか。

参考サイト(外部リンク)

白いとうもろこし「ピュアホワイト」

白いとうもろこし「ピュアホワイト」の生育日記

ジャガイモ畑のシェアリング(共同オーナー制度)

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

ノース物産株式会社常務取締役。外食チェーンの店長・エリアマネジャーを経験し、インターネットの可能性に心を惹かれてIT業界へ。サラリーマン勤めをしながら独学でECサイト構築と運営する。縁があり、現ノース物産株式会社にECサイトの責任者として入社し、現在は自社ECサイト「最北の海鮮市場」https://www.saihok.jp/、「北海道わけあり市場」https://www.wakeichi.com/の2店舗の運営を統括する。

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