こんにちは。上級ウェブ解析士の佐藤佳(さとうけい)です。
株式会社スノーピークビジネスソリューションズという会社で、デジタルマーケティング・ブランディング・広報を担当しています。
これまでに、
知識ゼロ・経験ゼロの状態で、まずは何から始めたのか?(第1回)
4年連続で200%の成長を支えた軸である、3つのポイント(第2回)
をお伝えしました。
ウェブサイトは‶作ったら終わり″ではありません。自社の成長や環境の変化に合わせて、育て続けてこそ意味があります。そこで最終回は、課題の見つけ方や、見えてきた課題をどうやって解決していけばいいのかを、事例をもとにご紹介します。
課題の見つけ方
これまでにウェブサイトを作ったことがない、または運用した経験がないなど、初めての人は「そもそも課題が分からない」ということもあると思います。そこで、私なりの課題の見つけ方を2つのポイントに絞ってご紹介します。
1)重要項目に絞って‶気づき″を見つける
Googleアナリティクスを使うと、サイトに訪れた人の数や、どんなページが良く見られているのかなど、ウェブサイトのさまざまな情報が見られるようになります。一方で、見られる情報が非常に多いため、慣れていない人からすると正直どうしたらいいのか分からなかったり、日ごろの業務に追われてデータを見るのが面倒に思ったりすると思います。そこでお勧めなのが以下の方法です。
①重要な項目だけに絞ってアクセスデータを集計する
重要な項目とは、セッション数、ユーザー数、ページビュー数、平均滞在時間、直帰率、問い合わせ数です。ウェブサイト全体の平均値と、主力製品(トップ10)の数値を毎月集計するだけなら30分もかからないので、とても始めやすいと思います。
②時間軸を変えて俯瞰してみる
重要な項目の情報をどんどん溜めていって、前月のデータあるいは半年間の平均値など、時間軸を変えながら比べてみることで、何か気づくことはないか?探してみましょう。
まずはこれらの方法を試してみると、「ん?」と思うことが出てくるはずです。
2)‶なぜ?″を掘り下げる
データを見て気が付いたことや、変化を見つけたら、‶なぜ?″を掘り下げて考えることで、その事象の要因を探してみましょう。例えば、自分たちのマーケット(市場)で何か動きがなかったか? 世の中の情報を調べてみたり、営業さんに最近の状況や行っている施策を聞いてみたり、ユーザーさんに直接聞くのもよいと思います。
ここでポイントなのが、すぐにGoogleアナリティクスを頼りにしないことです。なぜなら、Googleアナリティクスだけでは取得できない情報もあるため、知らないと数字のマジックにかかってしまって、真実が見えなくなってしまうこともあるからです。あくまで参考程度にして、まずは自分の頭、世の中の情報、営業さん、ユーザーさんなどの情報から考えてみましょう。これだけでも、次への足掛かりを作ることができます。
その後、もしチャレンジできそうだったら、Googleアナリティクスを使って‶ご自身の考えを裏付けるような情報″を探してみましょう。Googleアナリティクスの本を買って自分で触ってみるのもよいですし、セミナーや勉強会に参加してみるのもよいと思います。もっと知識を深めたかったら、ウェブ解析士の資格を取得してみるのもひとつの方法です。
課題解決の事例
次に、私がウェブサイトリニューアル後に直面した課題について、どのように解決あるいは改善したのか?その一部をご紹介します。今の自分からすると、そもそもの施策から思うところもありますが(笑)、あくまで当時の自分が何を考え、どうしたのかをご説明します。
1)コラムが強すぎて商品ページが見られなくなってしまった
私の会社は、在庫管理システムをはじめとした現場のIT化を支援していました。そこで、在庫管理を行いたいお客様にとって役立つ情報を掲載すれば、検索エンジンで上位に入れるのではないかと考え、在庫管理のコラムを執筆したのです。その目論見は見事に成功し、アクセスは飛躍的に上がって、検索エンジンの上位入りも果たせました。
【出てきた課題】
お客様がサイトに訪れた際に一番初めに見るページ(閲覧開始ページ)が、商品ページからコラムに変わって、最終的にはトップページも超えてしまいました。全体的にアクセス数が上がっているので数だけ見ればお問い合わせは増えましたが、アクセス数に対するお問い合わせ率は下がって、ロスが発生していました。
【要因について】
商品ページではなく、コラムがヒットするのは、情報量(テキスト量)の差だと考えました。コラムは1章あたり約2,500文字で、合計5章(約10,000字)です。一方、在庫管理システムの商品ページは、情報量が約800文字で圧倒的な差がありました。
【解決策】
在庫管理システムの商品ページを約2,000文字に増やして、サブページとしてさらに約3,000文字の追加を行い、コラムに近い情報量を持たせることにしました。追加したのは、在庫管理のよくあるお悩みとその解決法や、商品の詳しい特徴、カスタマイズ例(拡張例)などです。結果、商品ページの強化は成功し、ウェブサイトのアクセスをさらに増やすことができましたが、アクセス数に対する問い合わせ率は少しアップしただけでした。
2)情報系ページの直帰率が高い
ウェブサイトのパワーを上げるために、先ほどご紹介したコラムをはじめとして、メルマガのバックナンバーや用語集など、情報系ページをたくさん増やしました。
【出てきた課題】
情報系ページに訪れた人が、そのままウェブサイトを去ってしまうことが増えて、直帰率が高くなってしまいました。
【要因について】
Googleアナリティクスを見る限り、探しているものと違ったので帰った、といったような、お客様とウェブサイトの間に大きなギャップはないと判断しました。そこで、
①ページの作りが悪くて回遊しにくい(他のページを見に行きにくい)
②現時点ではページの情報に満足した
の2つに課題を分けてみました。
【解決策】
①については、思い当たるところがありました。というのも、情報系のページに訪れたお客様に対して、次にどういう行動をとってほしいか? 全く考えずに作ってしまったからです(笑)。そこで、関連する商品ページへの誘導バナーを設けたところ、直帰率が緩和されたと同時に、アクセス数に対するお問い合わせ率の改善も見られました。
②については、「この会社から定期的に情報がほしいな」と思っていただけたお客様とつながるため、メルマガ登録のバナーを設置しました。また、リマーケティングといって、一度サイトに訪れたお客様を追いかける広告を実施したところ、再訪問するお客様が増え、お問い合わせを増やすことにもつながりました。
初めはD(やってみて検証)、慣れたらP(仮説を立てて検証)から行うPDCA
最後に、ウェブサイトを成長させ続けるためのコツをご紹介したいと思います。いわゆるPDCAサイクルをまわしましょう、ということなのですが、一般的に言われている内容と少しだけ違うアドバイスをさせていただきたいと思います。それは、「自分のレベルに応じて、PDCAのどこからスタートするかを変えてみてはどうか」、というアイデアです。
なぜかというと、私がウェブサイト活用を始めたころ、P(=計画)をしようと思っても、そもそもの知識や情報、経験がないため、Pすらできなかったからです(笑)。ですから、初期はDO(=なにかやってみる)から始めることをお勧めします。内容は、自分がやってみたいことでもいいですし、他部署の人や、会社がやってほしいことでもよいです。
ただ、Pがない状態のDOでは、大きな成果が得られません。だったらどうすればいいかというと、検証すること自体を目的にすればよいのです。費用対効果も大切ですが、それを立証するために時間をかけるくらいなら、何かをやってみる方がよっぽど価値があります。ウェブサイトの開設は、1日でも早い方が良いのです。なぜなら、タイムマシンでも発明しない限り、100億円かけたって過去のデータを買うことはできないからです。
ただ、いつまでも考えなしにDOからやっていると、大きな成果が出せなくて会社の体力がもたないですし、ご自身の評価も下がってしまうと思います。ですから、自分に経験値が溜まってきて、要領がつかめるようになったら、必ずPから始めるようにしてください。そして、重要なのはPの中に必ず‶仮説″を入れることです。仮説を立てて実行することで、検証結果も、改善のアクションも、次の仮説を立てることも、どんどん精度が上がっていきます。そうすると、成果もどんどん上がるから、どんどん楽しくなって、PDCAが勝手に高回転していきます。
「小さくてもいいから、今できることを積み重ねていこう。」
そうすれば、気が付いたころには活躍するウェブサイトがきっと生まれているに違いありません。