初めまして。上級ウェブ解析士の飯川 慶子(いいかわ けいこ)です。現在はとあるEC業者でインハウスのSEOやデータ解析を担当しています。
以前、ウェブ解析士マスターの益子さんが「SEOのKPI設定と効果検証」という記事を書いてくださっているのですが、今回はそちらの記事を大変参考にしつつ「SEO施策のレポーティング」として、私が比較的よく行っているインハウスのSEOのレポートの書き方についてご紹介します。
必須に近い?私が過去半年間のSEOレポートにほぼつけていた項目5つ
本記事を執筆するにあたって、過去半年間私が社内に提出していたSEO関連のレポートを見直してみたところ、ほぼ必ず入っていた項目は以下の6つでした。
「上司からレポート提出を頼まれたものの、最低限何を書けばいいのかよくわからない」
という人はそれぞれを理由と一緒にチェックしていきましょう。
1:自然検索トラフィックのGoogle アナリティクスでのセッション推移
まずはこちらの「検索エンジンを経由したセッション数」をGoogle アナリティクスから引っ張ってきます。
「サーチコンソールのクリック数でもほぼ同じなのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、ここで私がGoogle アナリティクスデータを引用しているのには、
- Googleサーチコンソールで確認できるクリック数は「Google以外のサーチエンジンからの流入」をカウントしてくれないから
- サーチコンソールでチェックできるクリック数は正確な流入数とは限らないから
という2つの理由があります
あなたにも
- 気になった検索結果をタップしたつもりだけど、間違えてその上(もしくは下)のタイトルをタップしてしまったので戻るボタンを押した
- 興味のあるサイトをクリックしたけど、サイトが重くて開かないので戻るボタンを押した
こんな経験、ありませんか?
サーチコンソールのクリック数で計測した場合、こんな「セッションには至らなかったクリック」も1としてカウントされてしまうんです。
できるだけ正確な値を報告するためにも、流入数はGoogle アナリティクスのものを使いましょう。
2:Googleサーチコンソールでの表示回数
SEO施策というとどうしても上司やメンバーと決めた特定のキーワードでの上位表示や、検索エンジン経由での流入数ばかりを追ってしまいますが、それと同じぐらい「検索画面にどれだけ自分たちの手掛けた大切なコンテンツが掲載されているか」も大切です。
表示回数が増えることは、自社サイトへの入り口の数が増えることと同じだからです。
「狙ったキーワードの順位は下がってしまったけど、自分たちが手掛けたこのコンテンツが毎月10,000セッション集めてくれているんです。」
これもSEO施策のひとつの“成果”ですよね。
この項目はサーチコンソールの「検索アナリティクス」画面で確認できます。
3:新しく発掘された検索クエリのうち流入に貢献しているKW上位10個
SEO施策の効果は必ずしも狙ったキーワードでの上位表示とは限りません。
先ほどの項目でもお伝えしたこととも被りますが、「自分たちが本来狙っていたキーワードとは違うキーワードで盛んに流入活動が行われ、さらにはCVも発生している」という現象も決して珍しくないのです。
そこで確認しておきたいのがサーチコンソールの「検索クエリ」。
サーチコンソールの検索アナリティクス画面で確認できます。
前月(正確には過去28日間)との比較もできるので、過去と比べて「急増しているな」というキーワードと流入に貢献しているページを追いましょう。
たとえばこちらの画像の場合「4P分析」というクエリから流入が上昇していますが
どうやらこちらのPDFファイル(https://www.waca.or.jp/knowledge/wp-content/uploads/2013/09/marketing-framework.pdf)が1ページ目にランクインしているようですね。
4:検索流入からのCV数推移
「流入数は増えたけれど、実際のビジネスには貢献していない」
SEO施策をおこなっているとこんな状況も比較的よく起こります。
セッションが増えることはもちろんうれしいことなのですが、せっかくならそれに比例してCVも増えてほしいですよね。
組織の売上に直結するものかどうかは置いておいて、SEO施策をするときも必ずCVを設定して、どこからの流入がCVにつながっているのかを追いましょう。
5:クローラーの日別平均日別来訪数
セッション数や検索画面での表示回数・CV・組織で決めたキーワードの順位などの「施策の結果を示す」ももちろん重要ですが、そもそも「行った施策をGoogle側がしっかり検知してくれる状況が整っているか」をチェックすることも同じぐらい大切です。
それをチェックできるのがGoogleサーチコンソールのクローラー統計情報から確認できる「クローラーの日別平均日別来訪数」という項目。
旧Googleサーチコンソールの左メニューの「クロール>クロール統計情報」から確認できます。
クローラーが頻繁にサイトに来ているということは、すなわち自分たちがおこなったSEO施策が短い時間で検索画面に反映されるということ。逆に仮にクローラーが1週間に1回しか来ていないとすればどれだけ更新作業をしていても、検索画面に反映されるまでに時間がかかってしまうということです。
6:当月(四半期・半年)で狙っているKWの順位推移と流入推移
ここまではSEO施策に対する全体的な指標をレポート項目として紹介してきましたが、おそらくあなたの組織がSEO施策をしようと思ったきっかけは、上司の要望であれチーム内での希望であれ「このキーワードで最適化したい」というキーワードがあったのではないでしょうか?
その場合はGRCなどの検索順位計測ツールで当該キーワードの検索順位の推移をレポートに盛り込んでおきましょう。
(※ただし、検索順位は検索している場所によって変わってくるので、必ずしも順位計測ツールで表示された結果と自分たちが実際に計測した結果が同じとは限りません。)
インハウスのSEOレポートのコツは連続性を持たせること!
ここまでは、私が社内向けのSEOレポートを作成するうえでほぼ入っていた項目を紹介しましたが、これだけ埋まっていれば十分というわけではありません。
ここまでは、あくまで「前月(前の期間)と比べて、今月はこうでしたよ」というものなので、これだけを上司やチームメンバーに見せても、「ふーん、そうなんだ。」で終わってしまう可能性が往々にしてあります。
せっかくレポートを出すなら、上司にもメンバーにも“自分ごと”として捉えてもらって、前向きに協力してもらいたいと思いませんか?
そこで、私がやっているインハウス向けレポートの工夫を2点ここからはお伝えします。
1:レポートのはじめには「前回の施策結果」を記入する
上司やメンバーがレポートを見るときに一番関心を持っていること、それは「自分たちのやったことがどれだけ目に見えているのか」です。
なので、前回のレポート提出の際に提案・実行した施策があれば目次の次に織り込みましょう。
例:前回のレポート提出後に行った施策
状況:記事Aは本来狙っていたキーワードよりも○○というキーワードでの流入が盛んにおこなわれていた
施策:記事Aは○○に最適化した記事にリライト/本来狙っていたキーワードについては記事を別立て
結果:「○○」のキーワードで記事Aの流入数は変わっていないが、CVRが2%向上した。
本来狙っていたキーワードに最適化した記事Bは、狙ったキーワードで2ページ圏内にいる。
改善案:記事Bに向けて、関連する記事から内部リンクを○本送ってクローラーの回遊性を上げる。
どの施策にも言えることかもしれませんが、SEOは特に「今日着手して明日からすぐに結果がでる」なんてことはほぼほぼありません。むしろ、「気が付くと結果になっていた」ことのほうが多い“長距離戦”です。
長期戦になるにつれて上層部もメンバーも、そしてレポートを作成している自分自身もモチベーションが下がるのは当然のことなので、モチベーションを保つためにもこの項目は織り込みましょう。
2:これからの施策についてはあえて「メモ程度」にしておこう
また、私がインハウス向けのレポート作成であえてやっているのがこれからの施策のページはあえてメモ程度にするということです。
無論、クライアント向けのレポートではやってはいけませんし、インハウス向けのレポートであっても組織によってはNGなこともあるでしょう。
しかし、メモ程度にして「一緒に考えていただきたいんですけど……」という枕詞をつかうことでこんなメリットも生まれます。
- アイデアベースの話なので、かなり思い切った提案もできる
- まだがっつり施策を組んでいないので、上司や上層部のベクトルと自分のベクトルが違っても、早い段階で認識の修正ができる
- がっつり施策を組んでいないので、チームメンバーの意見を聞きやすい(控えめな人からも意見を聞きだしやすいし、そういう人に限っていい意見を持っている場合もある)
- 自分だけではなく上司やチームメンバーに“考える”機会を半強制的に与えているので、自分以外のスキルも上がる
できる組織は限られているかもしれませんが、メンバーに向けたレポートから徐々にやってみるのもいいかもしれませんね。
インハウス向けSEOレポートの書き方まとめ
以上今回はインハウス向けのSEOレポートに最低限入れておきたい項目や、インハウス向けだからこそ気を付けたいポイントをまとめてみました。
しかしこれはあくまで一例なので、厳密に何を書いたらよいかは場合によっても変わってきます。そんなときに必要なのがウェブ解析の技術。
ウェブ解析士は「いつ・どんなときに・どんな指標を持ってくればいいのか」というデータ活用の力を高められるので、おすすめです。