ウェブ解析士マスターの関原雅人です。
皆さんは新規にウェブサイトを作成する際に、検索フレーズをどのように抽出していきますか。
検索フレーズを楽しみながら考える
個人的にはこの「検索フレーズ」を考えていくのかが、とても興味深く「言葉あそび」のパズルを解いているような楽しい業務です。
クライアントにヒアリングできる場合は、その会話の中で、重要となるキーワードを探ったりします。
クライアントに初めてお会いするといった情報が少ない段階では、事前に競合サイトの分析を行う場合が多いのではないでしょうか。
例えば分析の際、「キーワード ツール Google AdWords ※以下、キーワード ツール」を使って、競合性を見ながら、検索ワード、検索フレーズを見ていきます。
「検索ワード」と「検索フレーズ」の説明を簡単にしますと、
「宝石」「アクセサリー」は単一の言葉で『検索ワード』、
「宝石 アクセサリー」「宝石 結婚」「宝石 マリッジリング」という2つ以上が組み合わさると『検索フレーズ』と呼んでいます。
意外に「検索ワード」と「検索フレーズ」を共通の意味で使っていたりするので、区別するためにこう覚えておいてください。
では、検索フレーズとして、挙げた3つについて考えてみましょう。
検索フレーズを考える
【問題】
「宝石 アクセサリー」「宝石 結婚」「宝石 マリッジリング」は、検索するユーザーにとって、どのような目的要素が含まれているでしょうか?
【解答例】
下記のような目的要素があるユーザーが想定できます。
「宝石 アクセサリー」
- 宝石のついたアクセサリー全般を考えている
- 誰かへのプレゼントを考えている
- 自分へのご褒美を考えている
「宝石 結婚」
- 結婚式で必要な装飾品を考えている(ティアラ、ネックレス、ピアスなど)
- マリッジリング(結婚指輪)を考えている
- エンゲージリング(婚約指輪)も含めて結婚に必要な宝石を考えている
「宝石 マリッジリング」
- マリッジリング(結婚指輪)のみを考えている
- 値段が知りたい
- デザインが知りたい
- 結婚指輪を求めているユーザーが想定できる。マリッジリングというワードが出てこないユーザーのためには、「宝石 結婚指輪」も含める方がよいだろう。
こうしてユーザーの目的要素を確認していくと、「宝石」から抽出された検索フレーズのユーザーが相違している点に気づきます。
「キーワード ツール」から抽出された言葉をそのまま真に受けてしまうと、目的と違ったユーザーを集客してしまうことになります。
いわゆる検索ワードと、閲覧ページの相違により直帰が発生しやすくなる状態です。
集客するユーザーが違うということ
集客するユーザーが違うということは、運営側として、
○余分な広告予算(リスティング広告)の増加
○余分な工数増加(文書構成立案、内部SEO等)
につながります。
最もダメージが大きいと考えられるのは、
集客したユーザーを失望させ、リピート訪問の機会を失うことです。
「キーワード ツール」は、ひとつのツールです。
ツールの結果からお客様の成果につながる情報を、自分なりに取捨選択して利用する技術が必要になります。
「キーワード ツール」が、広告予算を確保するだけの目的になっていないか、お客様の事業の成果を上げるための目的に叶っているかを考える必要があるのではないでしょうか。
検索フレーズのヒアリングのヒント
キーワードツールで抽出された「検索ワード」と「検索フレーズ」の目的を考えることは「ウェブ上での検索されている」ことが前提での話です。
しかし「ウェブ上での検索されている」という状態にならないニッチな業界での用語は、抽出できないことがあります。
そこで、ヒアリングで業界用語の取りこぼしを防ぐために、『ヒアリング手法を工夫する』ことが大切です。
一般的に、ウェブ担当者がクライアントから情報を仕入れる方法は、
- 自らクライアントと商談する
- 営業担当者など第三者を介してヒアリングする
になってきます。
ウェブ担当者が自らクライアントと商談する場合
クライアントとの会話の中で、キーワードとなる要素が含まれていないか、業界用語(専門用語)を抽出していくことです。特にB to Bの場合に、業界的に使われている用語は重要です。
業界用語だからといって、知ったつもりで聞き流し、正確な意味をとらえないと、「検索ワード」や「検索フレーズ」の目的要素を練る機会を失います。
担当者が話していた用語のニュアンスが違ったりすることもあります。
検索して後から調べればいいという考えでは、ニッチな業界用語は、検索してもでてきませんし、キーワードツールで抽出されないこともあり、わからないままとなってしまいます。
営業担当者など第三者を介してヒアリングする場合
クライアントからの話を、営業担当者Aさんがウェブ担当者Bさんに伝える場合に、「現場にわかりやすく伝わるように」という配慮で、クライアントが話した業界用語を、無意識に別の用語に置き替えていることがあります。別の用語で置き替えられていないか、聞き手は注意が必要です。
ウェブ担当者が把握しておくべき業界用語が、正確に伝わらないということに陥らないよう、商談でヒアリングをする際に「用語比較リスト」を作っておくとよいでしょう。
クライアントが話す業界用語(キーワード)と、一般的な用語を置き替えたものです。簡単にいうと英和辞典や方言などの翻訳ですね。
「英和辞典/ car = 車」、「大阪弁/ あかん = ダメ、いけない」
といったものです。
例えば、『ベンダー』という用語をみると、
○クライアント担当者=「ベンダー」
○一般的、家庭表現=「自動販売機」「自販機」
となります。
『ベンダー』=「自動販売機」??
という反応が多かったのではないでしょうか。
IT系業界の方が読まれていると、ベンダーは「システムやハードウェアを提供している会社」と想像してしまうのではないでしょうか。
あえて、ドリンク飲料業界の自動販売機の呼び名を例にいたしました。
先の事例に戻りますと、営業担当者Aさんが、ウェブ担当社Bさんに「ベンダー」だとわかりづらいので、「自動販売機、自販機」というように伝えた場合は、Bさんは「ベンダー」という用語にたどり着かないこともあるのです。
こうして、重要な業界用語の聞き損じが生まれます。
用語比較リストを持っておく
用語を「見える化」できる「用語比較リスト」を商談の際に用いることで、「検索ワード」「検索フレーズ」となる業界用語の聞き損じを防ぐことがきます。
もちろん、リストの項目は、クライアントが発した言葉を、ビジネスのターゲットとしているお客様に割り当てて項目を用意します。
○企業向け
○家庭向け
○学生向け
○F1 : 20〜34歳の女性
○M1 : 20〜34歳の男性
など、ターゲットに響く用語としてリスト化すると、キーワードツールで抽出されてこない用語でも検索ワードとして組み立てることができます。
ウェブサイトの説明やキーワードが、誰に伝えるのかという視点で、ターゲット層にわかりやすい言葉で伝わっているかを忘れてはなりません。
競合分析をした際に「検索ワード」「検索フレーズ」を競合と同じにすれば、それで解決という訳ではないのです。クライアントは競合と同じ会社ではありません。
クライアントの独自性あるビジネスに共感した提案を行わなければ、クライアント(お客様)企業の想いをウェブサイトでは伝えきれないのではないでしょうか。
「見える化」された「用語比較リスト」は、定期的に見直し、社内共有、クライアント共有し、複眼的視点で見ることで新しい発見につながります。
クライアントの発した言葉から、ターゲット層に対して響く言葉を創出していくことを、検索ワードのヒントといたしました。