顧客の理解はセリフの理解!元声優のウェブ解析士が考える、コミュニケーションデザインのキモ。

こんにちは!上級ウェブ解析士の渡部誠(わたなべ まこと)です。

今はウェブ制作全般の仕事をしていますが、IT業界前は声優として事務所に所属し、吹替やナレーターとして活動していました。よく経歴を話すと驚かれるのですが、確かに少し異色なのかもしれません。声優で培ったコミュニケーション力はどの職種でも活かせるスキルだし、「凄く良い声ですね!」と言われるのもきっと無駄ではないと思いたいです(笑)

今回執筆の機会をいただくことになったので、どうせなら他の方があまり経験されていない部分=自分が声優をしてきた経験を絡めての記事が良いなと思いました。

そこで改めて考えてみたところ、今まで気付かなかった「演技の方法論」×「顧客(カスタマー)の理解」の意外な共通点や、声優の経験で今に活かせている部分が少し見えてきたので、今回はその経験をお話しいたします。

目次

「演技の方法論」×「顧客(カスタマー)の理解」の共通点

皆さんは「演技」をした事はあるでしょうか?まったく経験がない方は、率直に「演技って具体的にどうやってるんだろう?」と思われる方が多いかと思います。実は、私もそうでした。

私は専門学校で演劇系の学科を履修していましたが、方法論らしい方法論を教わる事はなかったため、独学でやっていたに過ぎません。当時は方法論を知らなかったため、自分の考えた自由な演技をすれば良いと思っていましたし、台詞を深く掘り下げることもできなかったので、今思えばこの時の演技は大雑把すぎて恥ずかしくなるほどです。

その後入った声優事務所の養成所でしっかりとした演技の方法論を学ぶと、世界が一変しました。

役者とは「考える+表現する」職業だということをまず教わります。「表現する仕事」というのはそのままの意味でわかりやすかったのですが「考える仕事」については「???」と、あまり良くわかっていませんでした。しかしよくよく聞くと、「表面的な文章を読むんじゃない、人間を表現するんだ」という本質につながりました。

その役が何を考え、何を感じて、どう思うのか。台詞の1文1文でキャラクターは必ず何かしらを感じ、行動をしている。それは台詞だけではなく、ト書(台詞以外のその場の状況・演出など色々書かれている文章)にも含まれていますし、相手の台詞を受ける前と受けた後でも当然変わりますから、相手の台詞を聞けとはよく言われたものです。

つまり、人間を表現するためには、その人間の深掘りが必須。この頃から、人間の心理に強い興味を持つようになりました。

顧客理解に通じる演技の方法論

「演技の方法論」のノウハウを知りたいという方もいらっしゃるかもしれません。人によって考え方・解釈は異なってきますので、今回お話しするのはあくまで基礎的な内容です。

人は常に何かを感じ、行動(アクション)しています。日常生活とはその連続です。例えば「暑さで汗ばみ不快に感じる(感情)」⇒「冷房で涼みたい(思考)」⇒「冷房をつける(行動)」⇒「汗が引いて快適に感じる(感情)」といったことを経験した方は少なくないでしょう。

演技における登場人物もすべての文章の1文1文で必ず何かを感じ・行動(アクション)をしています。これを「1センテンス・1アクション」といいます。
※ここでの「1センテンス」とは「1つの文章の塊」、文頭から「。」で終わるまでのまとまりを指します。

たとえば「泣く」という行動を考えてみましょう。

  • 文字通りにバックボーンがないまま、ただ泣くという行動
  • 大切な人が亡くなる → もっと何かしてあげる事は出来なかったのかと後悔 → 思い出が頭を駆け巡り、涙がこぼれる

単純な動作である前者と、すべての行動が繋がっている後者。どちらが表現に深みがでるかといえば、後者を選ぶ人が大半でしょう。このように、1つ1つの行動の細かい意識を繋げること(意識の連続、意識を流すと言います)で情景が浮かび、見ている人が共感できるなど、自然な良い演技に繋がるのだと思います。

役の掘り下げ=ユーザーの掘り下げ

「カスタマージャーニーマップ」のように、ユーザとのコミュニケーションをデザインをする上でも「ペルソナ」と呼ばれるリアルな仮想ユーザーを想定しますが、ここでも先程の役を掘り下げていくのと同様に考える事ができます。

「なぜこの結果になったのか?」「どのポイントで変化が起こったのか?」「どのような変化(行動・感情・思考)が起こったのか?」などを掘り下げて考えることで、ターゲット像がより明確になり、ユーザーの理解を深めることができます。

演技において「相手の台詞を聞く」というのも、「顧客の欲求に耳を傾けろ」と言われているのと似ています。やはり、何をするにも「人(役・カスタマー)」を考え、理解することが重要なのだと。顧客の欲求を理解して満たし、顧客満足度を高めることが、最終的に事業の成果にも結びつくのではないでしょうか。それは、すべてのビジネスに共通して言えることだと思います。

結果のみではなく、そこに至る意識の流れが重要

意識の連続を捉えることが顧客を考える上では非常に重要という「役を考える上での方法論」と「顧客を理解する考え方」が共通しているということを、もう少し具体的に見ていきたいと思います。

  • 演技的に言えば「意識の流れがなく結果(行動・感情)のみでは、内容がなく非常に薄っぺらい表面上の演技になりつまらない、何も感じない(見ている人に伝わらない)」
  • 顧客の理解では「結果だけの数字・データを見ていては重要な心理変化(感情・思考)・行動理由がわからない(顧客を理解できない)」

ということです。

意識の流れを捉えるとは

具体的な例で考えてみましょう。台本で下記の台詞があったとします。

「(泣く)」

これを見て単に「泣く」という行動だけを切り取っても、「なぜ泣いているの?」「どういうシチュエーション?」「場所はどこ?」「周りには誰かいるの?」などのバックボーン・設定がない演技では聞いている人には何一つ伝わりません。

結果的に繋がるのが「泣くという行動」や「哀という感情」なのであって、単純な行動のみ・感情のみ(喜怒哀楽)を表現すると非常に内容のない薄い表現となってしまいます。聞いている人はどう思うでしょう?恐らく何も伝わってこないからつまらないですよね。

そこで「結果のみではなく、そこに至る過程(意識の連続)」までを見てみます。

  • 「この役の年齢は?性別は?職業は?」⇒ 17歳の都内の高校に通う男子
  • 「シチュエーションは?」⇒ 野球部に所属・主将、ポジションはピッチャー、毎日の厳しい練習に耐え、3年で目標であった甲子園に出場。しかし決勝戦を僅差で敗北、練習の日々が頭を駆け巡り、普段周りには弱い部分を見せなく努めてきたが悲しみをせき止められず、思わず声を上げて泣く。
  • 「場所は?」⇒ 誰もいない1人っきりの野球部部室

のように役を掘り下げていく事で肉付けされ、リアルで自然なものに繋がっていきます。

「泣く」という行動1つとっても、「急に堰(せき)を切ったように声を上げて泣く」「始めは悔しさを我慢しようとするも、今までのさまざまな場面が頭をめぐり、我慢できずに声を上げる」など演じる人によって表現は千差万別です。だから面白いんです。

私は今も演技を考えるのも、するのも好きです。なので上級ウェブ解析士を学んだ時に知った「コミュニケーションデザイン」がとても面白く好きになりました。

まとめ

ウェブ解析士としてコミュニケーションデザインなどで顧客を考える上でも、重要なことは同じなのだと思います。「何故この結果になったのか?」「どのポイントで変化が起こったのか?」「どのような変化(行動・感情・思考)が起こったのか?」などの結果に至る行動・感情の流れを読むことで顧客への理解を深めることができ、より高い満足度に繋がります。

結果だけを見ていては「何故売り上げが上がったのか?何故この人は購入に至ったのか?」がわからず、顧客を理解することができません。

今回執筆の機会をいただきあらためて考えてみると、役を掘り下げていく工程も、顧客を理解するときの考え方も共通点が多く、大事なのはやはり「人(カスタマー)を知る・考える・理解する」ことなのだと改めて感じました。

実例として、クライアントの中でも、ターゲット層がぼやけてしまっていて売り上げが思うように伸びず、よくよく話を伺ってみると「フレームワークでしっかり分析したことはない」「なんとなくの目安」「んー、勘かな」という方も少なくないと感じます。

そのような場合は、フレームワークを用いることでクライアントとの間で共通言語を持ち、分析が筋道立てて行えるようになります。結果、今まで見えてこなかったターゲットの動きや考え方も明確化され、サイトの改善・売り上げに貢献することができました。

上級ウェブ解析士はウェブ解析士に比べ、より実践的・体系的な知識・技術を学んでいます。ウェブの改善だけがゴールではなく、組織・現場の方をどんどん動かしながら・巻き込みながら解析・提案を行っていかなければなりません。「人を知る・考える・理解する」ことで、コミュニケーションを円滑に運び、それが最終的に事業の成果へと繋がれば最高ですよね!

ぜひ「結果のみではなく、そこに至る過程・意識の流れ」に注目して見てください。今まで見えてこなかったものが見えてくるかもしれません。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

福島県会津若松市出身。IT業界前は「声優」として事務所に所属、吹替やナレーターとして活動。職業の性質上、特に必要スキルであった「コミュニケーション力」を重要視して磨く。その後IT業界に入り、EC・web制作会社、フリーランスと経験、現在は開発会社にエンジニアとして従事。デザインからフルスタックな開発、アクセス解析まで一貫して自走可能。

Googleアナリティクス認定資格者(GAIQ),WACA・上級ウェブ解析士保有(SWAC)

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