ごめんください。新潟のウェブ解析士マスター、コスギです。
去る11月30日、岐阜の株式会社アクシス様を会場に、「コンセプトダイアグラム入門講座」をエキスパート講座として開催しました。
「コンセプトダイアグラム」は2008年から清水誠さんによって提唱されているコミュニケーション戦略マップであり、顧客志向のマーケティングメソッドです。一時期ウェブ解析士のカリキュラムにも入っていたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、現在は更に進化しており、クライアントとのワークショップによって徹底した顧客志向の戦略を立て、カスタマーアナリティクスを実現するために非常に有効なものとなっています。
そんなコンセプトダイアグラムのエバンジェリストとして、「コンセプトダイアグラムの可能性を実感すること」を重視した入門講座という位置づけで、エキスパート講座の講師を努めてまいりました。今回はそのレポートです。
10人3グループの濃い時間に
3・4人ずつのグループに分かれ、「ママ向けエクササイズ」のサービスをテーマにコンセプトダイアグラムをつくりました。出産経験のある参加者が1人しかいなかったため「ママ」という顧客像に四苦八苦していたものの、逆に自身の経験からは切り離して俯瞰的に考えられたり、パートナーが同じように抱える悩みを想定しながら、自由に考えられたようです。
最後はつくったコンセプトダイアグラムをチームごとに発表し、フィードバックを行います。施策までは行かなかったのでステップの妥当性を検証することはできなかったのですが、どのチームも一通り顧客志向の戦略を考えられていました。
コンセプトダイアグラムに正解はないとはいえ、「良い」コンセプトダイアグラムは活発なコミュニケーションの先にあります。クライアントとコンテキストを共有し、引き出し、理想を実現するための戦略マップですから、一度経験しただけでは身につきません。
更に、コンセプトダイアグラムは単なる手段ではなく、組織のコミュニケーションを円滑にしながら、長期的なビジョンを追求し顧客志向の文化を醸成するためのものでもあります。ぜひ今後も一緒に深めながら、そんな組織を支援していく仲間を増やしていけたらと願っています。
アンケートの結果
①楽しかった → 4.9
レクチャーよりもディスカッションを重視しているので、
②ボリューム → 3.8
少ないと感じた方が多かったのですが、
③理解できた → 4.0
これはもっと低いと仮定していたのですが、できた/できない が分かれた結果となりました。今回は特に男性陣がコンテキスト(
④参考になった → 4.6
コンセプトダイアグラム、
NPS は 67 ポイント
今回の入門講座は今までの内容とは少し変えたので、引き続き NPS を定点観測していきます。以下のような理由をいただいたので、今後の講座に盛り込みながら、切磋琢磨できるコミュニティを目指していきます。
- グループでできることがメリット
- 数字だけではなく、顧客視点に立った分析ができるため
- ウェブ解析を学ぶ人に限らず経営者の方々に知っていただき実践し
ていきたい(ホワイトな企業が増えるのなら◎) - 事前の予習とかをしてから講座に臨めればより良いかと思います。
- カスタマージャーニーも良いですが、
行動だけではなく心理の面から2軸で考えるコンセプトダイアグラ ムも使いこなせるとより顧客視点で施策ができそうだと感じたから 。 - しっかり理解できれば試していったほうがいいと感じます。
ある程度経験しないと間違ったやり方をしてしまう可能性も。 - ウェブなんて所詮過去ログだから
- 理詰めだけでは本質が見えないことが体感できるから
今回は入門講座でしたが、過去にコンセプトダイアグラムを描いたことのある方にも、知っておいていただきたいことがあります。
コンセプトダイアグラムは提案手段ではありません
「コンサルタントがクライアントに提案するための方法」という認識を持たれていたら、それは大きな間違いです。「クライアントを理解するための方法」でもありません。
コンサルタントの立場で関わるのなら、ファシリテーターであらねばなりません。すべての答えはクライアントが持っています。クライアントの思いを引き出し、言語化し、整理して図に落とし込むのがコンセプトダイアグラムです。コンサルタントの思惑が入ってしまうのは適切ではありません。
コンセプトダイアグラムは描いて終わりにしない
手段が目的化しないよう、コンセプトダイアグラムを描いたからにはコミットしましょう。
部門や役割ごとの目標設定や施策へ落とし込み、データや調査で検証し見直しながら、全社的な方針として組織に啓蒙していく必要があります。全体的な施策プランニングから部署・人・施策の評価まで行い、顧客理解とデータ活用によってビジネス上の意思決定を推進していきましょう(これはカスタマーアナリティクスの分野になるので、また別途知見をまとめておきます)(カスタマーアナリティクスに関しては私も現在実践中のため)。
コンセプトダイアグラムは、顧客を理解するための仕組みを構築し、知見を蓄積していくことができるので、関係者が変わっても共通言語として周知できます。一度描いたものを完成版とせず、必要に応じて柔軟に見直し・改善していきましょう。
短期的な利益を求める企業には向かない
コンセプトダイアグラムは「長期的に徹底的な顧客志向で社会をつくっていく」ためのメソッドです。だからこそ、お互いがフラットにディスカッションしながら「自分たちが信じたくなる未来図」を一緒に作り上げ、それを実践するものです。
未来を信じ、価値観がそろった仲間と長期的に取り組めば、世の中が良くなります。仕事としてすべきことが明確になれば、誇りを持てます。そんな自分が大好きになり、子どもにも誇れます。コンセプトダイアグラムはそこまでを大前提にした、ホワイトでエモいメソッドなのです。
ですから、短期的な利益を求める企業や、変革を恐れる組織、ヒエラルキー(ピラミッド)型の根強いチームにも向いていません。「クライアントや社内の説得に便利そうだから使いたい」という利己的な手段としても推奨するものではありません。
“事業の目的は、顧客を作り出して維持することだ”
ピーター・ドラッカーは、自著 Marketing and Innovation produce results において、以下のように伝えています(抜粋)。
Because the purpose of business is to create a customer, the business enterprise has two–and only two–basic functions: marketing and innovation. Marketing and innovation produce results; all the rest are costs.
(和訳)事業の目的は、顧客を作り出して維持することだ。企業には2つの基本的な機能がある。すなわち、マーケティングとイノベーションである。成果をもたらすのはマーケティングとイノベーションであり、それ以外はすべてコストでしかない。
深掘りすると長くなるので部分引用に留めますが、「事業の目的は顧客を作り出して維持すること」がビジネスの本質だというのは頷けることでしょう。マーケティングとイノベーションにも様々な解釈がありますが、お客様が存在しないマーケティングもイノベーションもあり得ません。
ずっと「ホームページをつくっただけでは売れない」と言われていますが、近年、それが本格化しています。この言葉には「企業都合のホームページばかりつくられている」という手段が目的化していた背景がありますが、ドラッカーの言葉を借りれば、これはコストにしかなりません。それでも試行錯誤を続けている企業も少なくありませんが、本質に立ち返れば、顧客志向こそが成果につながる鍵と言えるでしょう。
「今、成功している経営者」といえば、誰が思い浮かぶでしょうか。
彼らの言葉を思い出してみてください。コスト削減や売上の最大化、価格や品質の訴求以上に、お客様(消費者)のことを真剣に考えている企業がほとんどなのではないでしょうか。
「そんなこと言っても、うちは弱小企業だし、お客様のことを考えようとしてもよくわからない」
という企業も実際いらっしゃいます。
私は普段から個人事業主の方と関わっているので、正直、予算はほとんどありません。だからこそ、どこを尖らせていけば良いのか見極めることを行っています。そして個人事業主の方は特に「自分がやりたいから始めた」という方も少なくなく、顧客志向に慣れていません。そのような方が顧客の立場からご自身のコンテンツを見直したとき、まるで素直な子どものようにワクワクに満ちた表情になります。私はコレを見るのが大好きです(笑)
これは個人事業主に限った話ではなく、企業向けのワークショップを行なうと、一番表情が変わるのは経営者です。
とはいえ、企業の理念が浸透している組織なら顧客志向による気づきがどんどん出てきてディスカッションが盛り上がるのですが、理念が形骸化してしまっている企業は雰囲気が違います。できあがったダイアグラムの主語は顧客になっていても企業都合が色濃く残っていると、納得解ではなく妥協案になってしまうこともあります。
本当に今のままで良いのか、と考えられる企業が顧客志向になれば、より良い体験を提供することで顧客を作り出し、さらに維持できるようになります。とはいえ、長期的に取り組むべきことでもありますから、今のうちに土台を固めることができれば、数年後の成果につなげることができます。コミュニケーション戦略マップである「コンセプトダイアグラム」は、そのためにあるのです。
ここで質問です。
「もし、今が5年後の未来からやり直せている人生だったとしたら?」
あなたが企業の経営を担うひとりなら、マーケティングの本質に向き合うのも悪くないのではないでしょうか。
コンセプトダイアグラムの公式サイトでは、ワクワクする顧客志向に共感できる仲間同士のコミュニティを構築中です。ファーストペンギンの皆さまをお待ちしています。