落語サイトを女性向けに改善し、大好評を得るまでの裏側

こんにちは。ウェブ解析士の藤井と申します。
CENPIN design で Web デザインやディレクター、フロントエンドエンジニアなどを行っています。

今回は、私の運営している九州の落語の公演情報を網羅したサイト「落語 de 九州」についてご紹介します。

落語 de 九州

もともと、趣味が高じて制作したものでしたから、最初から完成していたわけではなく、開設後に改善を行ったのが現在のサイトです。今では “見やすさ” と “使いやすさ” が非常に好評を得ており、1日500ユーザーを集めるようになったことから、その裏側を「設計編」、「改善編」、「集客編」の3つに分けて解説しました。

  • 見にくい、わかりにくいサイトだといわれる
  • 見やすいサイトにしたいけれど、どのように設計・改善すればいいのかわからない
  • 使いやすいサイトにしたい

などの悩みを抱えた、プランナーやディレクター、デザイナーの方に参考になれば幸いです。

目次

設計編

以前から公演情報を発信しているサイトは個人のブログとして存在していましたが、主に新着情報のみが更新されている形で、あまり公演を探しやすいものではありませんでした。「ないならつくってしまおう!」ということで、自分の趣味である落語を観に行くための情報整理と、スキルアップも兼ねて制作しようと思ったのがきっかけです。

想定ユーザー層に基づく構成

落語の情報サイトですから、比較的年配層からの閲覧が多いと想定しました。これは自分が普段から落語会に足を運んでいるので、事前にリサーチ済みです。
(運用を行い、後にアナリティクスなどのデータから判明しましたが、実際のサイトユーザー層は30代〜40代からがもっとも多いことがわかりました)

現在はインタビューのページなどもありますが、当初は公演情報を主として、極力シンプルな構成にしました。

  • トップページ
  • 公演一覧ページ(各地域ごとのアーカイブ)
  • 公演詳細ページ
  • お問い合わせ

この4種類のみです。

メインとなる公演情報の内容は公演情報の内容イメージわかりやすさを優先し、リード文など極力余分な情報は入れないでおこうと、最低限必要な情報のみの掲載と考え、3W2H としました。

  • いつ公演があるのか? / 日時(W)
  • どこであるのか? / 会場(W)
  • 誰が出るのか?/ 出演者(W)
  • チケット代はいくらか? / 料金(H)
  • チケットはどのようにすれば買えるのか? / (H)
  • お問い合わせ先

公演日は規則的に並んでいる方がわかりやすいので、本日の日付から公演日が近い順に並ぶ形にしました。また、地域ごとにも分けて表示しています。
元々はBootstrapのコーディングを覚える必要があり、学習も兼ねての制作でしたので、Bootstrap既存のデザインをベースとしたレイアウトです。

開設してからの悩み

開設から半年ぐらいは中々アクセス数が上がらず、1年経った段階でも1日のユーザー数は100人弱くらいでした。また掲載している公演数が少なかったこともあり、アクセス数も350前後くらいでした。

公演情報については調べるのが主でしたが、なかなか全ては拾いきれません。そこで、公演元に問い合わせをするなどし、次回の情報をいただけるようになりました。これにより、運営を行いつつ1年ぐらいかけて、九州中の公演情報ソースを集めることができました。

2年目以降は更新頻度をもっと上げられるようになったので、1年目は飛躍する為の土台作りだったと思います。

改善編

サイトの開設から2年ほど経ち、自分のスキルが上がりサイトの見方も変わったことから、もっと見やすくかつ使いやすいサイトにしたいと思い、改善することにしました。当時のサイトと現在とを比較して、運用で得たデータを活用しどう改善したのかを解説します。

ペルソナにより、もっと便利で使いやすく改善

改善のために立てたペルソナは、自分の母親でした。スマートフォンの操作も不慣れであり、年代と性別もピッタリで、母親が使えるのであればおそらく誰でも使えるだろうと思いました。

  • 60代の女性で主婦
  • スマートフォンの操作は不慣れで得意ではないが、知りたいことは調べようとする
  • 落語を観に行きたいけど、近々いい公演はあるかな? → 自分の住んでいる地域の公演を調べる
  • 目当ての落語家の公演があるかな? → 落語家名で検索をする

最短で公演情報に辿り着けるように改善

上記を満たすため、「スマートフォンの限られた画面の範囲で」「最短で公演情報に辿り着けること」を最優先事項としました。

改善前

改善前1

改善後

改善後1

これには、九州全体の情報からまず見たい地域を選べるようにして、各地域カテゴリーと検索を上部に設置しました。そして、そのすぐ下にある検索で、お目当ての落語家の公演があるかどうかをすぐに調べられるようにしました。「今月の公演」と「来月の公演」のボタンもさらに下に設けており、近月の公演も調べられます。

内部検索の改善

当初の公演情報の検索は、WordPress のデフォルトの検索機能を使っていました。これを、最短で目当ての落語家の公演に辿り着けるよう、落語名の検索だけでなく、公演名や日付などでも検索にヒットするように改善しました。また、検索結果を最新の公演から表示するように変更しました。

さらに、2019年4月から、落語家名はひらがなのみでの検索にも対応しました。これにより、漢字がうろ覚えの落語家名でも検索できるようになりました。

この改善は、落語会にて隣でサイトを見られていた方から、「サイトの検索でひらがなでは検索できないんですか?」と言われたことがきっかけです。落語名での検索は漢字で検索するのが当たり前、という完全な固定観念にとらわれていたことに言われて初めて気づきました。

地図を見るボタンを追加

2019年1月からは、公演詳細ページの住所の下に地図を見るボタンを設置しました。

ボタンが無かった頃は会場の場所を調べ直す必要があったのですが、ボタンがあることにより、会場の場所がすぐ地図でわかるようになりました。これは自分の体験談で、他県に行った際に、当日初めて行く会場だったこともあり迷ってしまいました。その時に住所から会場を調べるのがいちいち手間だと感じたからです。

住所の下にあるボタンを押すだけで地図が出るので便利なこともあり、迷うことは少なくなります。実際に、ボタンの設置テスト期間中のクリック数を計測すると、よく押されていたことがわかりました。

全体的なボタンサイズも少し大きくし、タップできる範囲を広くするなど、スムーズに反応しやすくしました。

モバイルファーストのUIに改善

いくら目当ての公演に辿り着けても、見にくければ離脱の原因となります。スマートフォンからのアクセスが約7割ということもあり、モバイルファーストで操作性を見直しました。

文字間や段落の空きなど全体的に余白を見直し、直感的にわかりやすいよう、電話番号とメールにアイコンをつけました。やはり文字ばかりだと「読む」必要があるため、アイコンによってすぐに「わかる」ようになります。

さらに、公演詳細ページもスマートフォンで見やすいように改善しました。

スマートフォンでの表示

改善前

改善後

パソコンでの表示

改善前

改善後

2カラム → 1カラム に変更:解析データから、公演詳細ページでは右カラムのクリックがほとんど無かったので、より情報に集中しやすくするために1カラムへと変更しました。つまり、サイドバーをなくしたレイアウトです。

公演の概要は2列 → 1列に変更:2列だった概要を1列にすることで、情報に集中しやすくなりました。

アクセス表示の速度改善のために、スタイルシート(CSS)と JavaScript のファイルを圧縮しました。また、余分な読み込みをしているファイルもすべて除外しました。

改善後の結果

  • 見やすい・使いやすいという声が増えた
  • 離脱率が下がり、滞在時間が上がった
  • サイト内検索の使用率が約40%増加した

より便利にするために、ページ内ですべて完結する形を目指しており、今後はサイトからチケットを買える仕組みなども検討中です。

集客編

サイトの開設から約2年で1日に500ユーザーを達成しました。主に「SEOの強化」と「SNSの活用」の2つを重点的におこないました。それによって、更新頻度も上がっていきました。

SEOの強化

サイト制作の段階からSEOを強化した構成で制作していたので、九州圏内の「県名」+「落語」ですべて1位を獲得しました。競合は落語会を制作されている会社や団体、お店などですが、アクセス数の増加に伴い順位が逆転しました。また、ユーザーの行動を考え、地域と公演情報の更新によって実現できたと思います。

サイトへの流入の大半はいまだに検索からなので、成功だと言えます。

Twitter と Facebook の活用

公演情報を更新する度に、合わせてSNSでも情報を流しています。落語家本人がリツイートしてくれたり、サイトにリンクしてくれたりなど、より情報が拡散することでサイトへのアクセスが増えました。また、情報が拡散することでサイトの認知度も向上していきました。

下の図の通り、SNSの活用が最も伸び率が高かったです。

更新頻度の増加

一年を通して九州中の公演情報ソースをひととおり集めたことから、更新頻度を上げられるようになりました。情報がまだ揃っていない頃は週に数件程度だったのが、今ではほぼ毎日、情報を更新しています。「掲載公演数の増加×SNSでの拡散」により、集客もより伸びました。

現在のユーザー数とPV数

開設1年後から2019年4月現在のユーザー数とPV数の比較です。

  • 1日の平均ユーザー数:約100人 → 約620人(約6.2倍)
  • 1日の平均PV数:約350PV → 約3,000PV(約8.6倍)

ユーザー数、PV数ともに右肩上がりで成長しており、数値目標としては1日1,000人を超えるサイトにまで成長させたいと思っています。

運営を始めてから約3年で得られたこと

  • 約2年で1日に500ユーザーを達成した
  • 落語関係の制作依頼が増えた
  • サイトがきっかけで、より人脈が広がった
  • 自分の運営メディアでいつでもテストを行えるため、改善してみて効果があったのかどうかなど、分析力の向上 = マーケティング力の向上につながった

今だに新規ユーザー率が50%近くあることから、サイトのリピーターばかりではなく、まださらに伸びる可能性があります。この数から推測することは、それだけ需要があるということです。

落語というニッチな分野でかつ特定の地域のみを扱ったサイトでありながらも、約2年でここまで大きくできたことは自信につながりました。また、改善を行ったことがきっかけで、サイトの操作性(UI)にも以前より違う見方ができ、どうすれば使いやすくなるのか?どうすれば満足度が上がるのか?などを考えるようになり、気づきが増えました。

このサイトをきっかけに一人でも多くの方に落語を楽しんでいただける媒体となれるよう、今後も改善と成長を続けていきます。

CENPIN design(センピンデザイン)では制作のご相談や、改善のご相談などを随時受け付けております。お問い合わせはいつでもお待ちしております。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

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この記事を書いた人

20代初めより音楽イベントの企画・制作に携わりイベンターとして従事。20代後半にはカルチャーメディアの事業立上げや、企画・運営を行う。その後、Web制作を学びたいと思い、デジタルハリウッドWebデザイン専攻を受講。卒業後にWeb企画・制作会社を数社経て、独立。
企業、アーティスト、個人規模の商店など、幅広くWebサイトのディレクション、デザイン等を手掛けている。また、制作についてはWebサイトの制作だけに留まらず、音楽イベントの制作や落語会の制作など、イベントの企画・制作も行っている。
2014年に関西から福岡市に拠点を移し、現在、福岡市在住。

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