esports(eスポーツ)が盛んになって来ているという事は、ニュースやコラムなどで時折見かけ、何となく知っている気持ちになっていたけど、まだまだマイナーな世界で、オタクとまでは言わないけど一握りの人達が楽しんでいるものだと思っていました。
このセミナーを聞くまでは。
現代の日本のリアルスポーツで最も盛んだと思われる「野球」が日本に入ってきた頃、新渡戸稲造が「野球は賤技なり剛勇の気なし」として巾着切りの遊戯、対手を常にペテンに掛けようベースを盗もうとなどと眼を四方八方に神経を鋭くしてやる遊びであると、ボロクソに評価したという事実があり(『1911年8月29日東京朝日新聞』)、つまり今の僕たちの感覚がこれに似てていて「知らないものを拒絶する」というところにあるのかも知れないと思いました。まずちゃんと知りましょうと言うのがこのセミナーでした。
お話しは、NYに本社を置くスポーツマーケティング会社Blue United Corporationにてプロesportsチーム運営と米国サッカー留学のサポートを担当している平出直樹さんでした。
まずは「市場規模」すでに10億ドル規模の大きさを持っている事がわかりました。
大きいとは思ってたけど、ここまでとは。日本の感覚でいるとわからないですよね。
そしてその集積がどのように成り立っているのかという説明でした。
登場人物が何種類もいて、思っていたより大きなエコシステムになっているんだなという事も理解できました。
そして重要なポイントはこのesportsの仕組みが「スポーツ」そのもののマネジメント手法をそのまま使えると言うところ。
ここに気づいた世界の企業や個人がどんどん参入してきたという事でした。まったくこれまでにないエコシステムではなく、現行のスポーツビジネスの仕組みにスパンとはまったところが、大きな市場を作っていったというところがよく理解できました。
そしてesportsのジャンル分け、MOBAというジャンルが一番大きな市場になっています。
世界大会だと1チーム5人で構成され約17億円の賞金レベルだそうです(!)
格闘ゲームは、ゲームセンター文化があるので日本で大人気ですし、日本人で有名なプレーヤーはほとんどこの格闘ゲームのプレーヤーです。
平出さんが参加しているチームはスポーツゲームのジャンルにある「FIFA」ですが、世界で4500万人ぐらいのプレーヤーがいるそうです。
そして2020年2月の最初の週、コロナ禍の初めの頃で、アジア人のバッシングの中、どアウェイの状況で参加したFIFAeClubワールドカップのもようを流してもらいました。
え? こんな風景なの?? がセミナー参加者の大半の印象だったのではないでしょうか。
しかもこれはリアルなFIFAが主催しているという事も少し衝撃でした。
(平出さんのチームは2021年もアジア代表で本戦出場しています。)
Team line-up for FIFAe Club World Cup 2021 completed
質問コーナーでは、「練習の方法」と「各ゲームプレーヤーの切り分け」などの話になりました。
そして後半はさらに二人のスピーカーに入ってもらったセッションでした、
まずSAPの福岡さんがその取組を説明してくれました。esportsのスポンサーをしていたり、技術的なバックアップもしています。こちらでも「スポーツと同じものだと考えている」という事が印象的でした。
富田さんはビジネススクールでデザイン思考や経営を教えておられますが、sportsX initiative という社団法人の代表理事で、「社会とスポーツの関係(関係というより社会の中のスポーツ、スポーツの中の社会)」を考えておられ、その中でもesportsにも取り組んでおられます。
トークセッションは江尻さんの「モバイルとの関係」の質問から始まり、日本がなぜ欧米の後手に回っているのか。法律の足枷や、ゲームとしてのガラパゴス性などの話がありました。
ゲームをスポーツ化するのかスポーツをゲーム化するのかの視点があるという、アメリカでの例からの富田さんの投げかけから、ゲームとしての産業構造でなくスポーツの一つとして捉えることで、日本でも大きなものになっていくのではないか。
さらに選手のプロ意識とか、リアルの選手との差とか、メンタルやフィジカルのプレーヤーやチームのミクロな話題にもなり、短時間ながらesportsの世界を立体的にみっちり知れた気がしました。リアルスポーツでのデータ分析の難しさから、esportsからデータマネジメントを把握すると言う、新しい視点も生まれてきたという話題も新鮮でした。
プレーヤーの年齢限界の話から、これを「脳トレーニング」のツールをして考えて、「おいついていない世界」に追いつこうとするのではなく、別の考えを持って「プラットフォームの設計」をすると言う考えが大事でないかと、このセミナー参加者にふさわしい話でまとまりました。