『楽天市場、Y!ショッピング、Amazonの集客・使い分けを学ぶ。ECモール基礎講座』参加レポート

楽天市場、Y!ショッピング、Amazonの集客・使い分けを学ぶ。ECモール基礎講座 参加レポート

こんにちは。ウェブ解析士の笹川です。

会社では自社ECだけでなく、楽天市場やYahoo!ショッピング・Amazonなどのモールに自社の商品を出品してEC運営をしています。

今回はそうしたECモールに関連した「楽天市場、Y!ショッピング、Amazonの集客・使い分けを学ぶ。ECモール基礎講座」に参加した内容をご紹介します。講師はウェブ解析士マスターの資格を持つ株式会社電通デジタル デジタルプランナー・ECコンサルタントの髙木真樹さんです。

この講座はECの知見を高める目的で開催された基礎講座です。巨大ECモールを活用する意義を始め、巨大モールの特徴を学ぶことによってECの基礎的な情報を理解し、これからECを始めようとしている方や、ECに関する提案を行う方にピッタリの講座でした。

講座の内容は以下のとおりです。

  1. 日本3大ECと自社EC
  2. ECモールの基本
  3. モールにおける集客の考え方
  4. 商品ページについて
  5. 楽天市場の傾向と対策
  6. Amazonの傾向と対策
  7. Yahoo!ショッピング・PayPayモールの傾向と対策
目次

ECの市場規模について

まず、ECを理解する上で重要な市場規模の解説がされました。ECの世界の市場規模としては、直近では年20%程度の伸びがあり今後も年15%程度の伸びが予想されている大きな市場です。

国別では中国のECが米国の3倍以上、日本の16倍以上とダントツの市場規模となっています。独身の日(11月11日)はネットのニュースでも取引額が話題にされていますよね。

中国のECでの商取引が活発な大きな理由は「キャッシュレス決済の普及率」「中国電子商取引法の改正」が挙げられます。

日本のキャッシュレス決済の比率は20%程度といわれていますが、中国では60%程度となっており、ECと親和性の高い決済手段が非常に多く使われているため、ECの市場規模も合わせて大きくなっていると考えることができます。

「中国電子商取引法の改正」については2019年1月に施行された法律で、「販売事業者(個人を含む)の営業許可証の義務化やECプラットフォームへの消費者保護への厳しい責任」が課せられるようになりました。

こうした取り組みもあって「消費者が安心感を持って買い物ができる環境構築」がされたことにより、ECの市場規模が大きく伸びているといえます。

ただし、これは中国だけの話とするのではなく、ECの出店者も同様の「安心感を持って買い物ができる環境構築」を進めていくことが重要になります。

日本のECモールについて

さて、本題の日本のECモールですが、2019年の流通総額のランキングでは、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングがトップ3となっています。

※グラフの楽天は楽天トラベル・楽天ペイ・ラクマなどのグループのサービスを含みます

国内のネット通販売上ランキングで上位ランキングに入っている企業を見ると、独自EC店舗以外に、ECモールへの出店を行う多店舗展開(販売チャネルの拡大)を行っていることが特徴となっています。

これは、消費者との接点が多いかどうかも売上高において重要なポイントと考えられます。ECモールの役割はこうしたところにありそうですね。

ECモールの存在意義は何か

とはいえ「ECモールは手数料ばかり掛かるから自社ECだけで……」と考える方も多いと思います。私もECモールへ出店する前はそう考えていました。

ECモールが存在する意義とは何なのでしょうか?

ECモールは、漠然とした検索や、ランキングによる購入の後押し、クーポンやポイント還元キャンペーンなどによって新規層が開拓・獲得できる場です。

対して、自社ECは、消費者が買いたいお店・商品を求めて訪問する場です。販売している商品のことを何も知らずに自社ECに来ることはまずありません。

効果的な施策を実行するためには、ユーザーを理解するためのさまざまな情報、さらにはその情報の「質」と「量」が必要になります。ECモールの各社は顧客の性別・年齢・地域、そのほか多くの情報を持っていて、さらにテレビCMやキャンペーンによる集客力もあるので、それらを利用することで、効果的な施策を行えるということになります。

日本3大ECモールの基本知識

楽天市場・Yahoo!ショッピング/PayPayモール・Amazonはシステムや出店者数、商品ページのデザインなどで違いがあります。

ECモールのシェアに関しては、富士経済の調査(※)によると、全体の流通規模が伸びていると同時に、Amazonのシェア占有率が高まっているという報告があります。また2019年には楽天市場・Amazonでそれぞれ40%超のシェアを獲得しており、すなわち、市場のほとんどを「楽天市場とAmazonで占めている状態」なのです。(※Amazonは流通総額を公表していないので、あくまで富士経済の推計)

楽天市場は、楽天ポイントを通じた楽天グループのサービス利用を促す楽天エコシステム(楽天経済圏)の拡充や家電・スーパーとの協業による商品力のアップなどにより消費者に選ばれていると考えられます。

Amazonは、プライム会員向けのサービスや食品系の拡充、置き配やAmazon Hubなどによる物流の改善といった施策により、消費者に選ばれてシェアの拡大をしていると考えられます。

Yahoo!ショッピング/PayPayモールは、SoftBankやY!モバイル会員向けの施策を多く行っています。また経済産業省のキャッシュレス決済の移行推進施策によるPayPayの高い還元率によって消費者心理を捉えて、利用者の増加につながったと考えられます。

これらの3大モールの取り組みによって、商品ジャンルによるシェアが大きく異なります。つまり、シェアが大きいモールにて施策を行うことで、施策効果の最大化を図ることができるのです。

また、ターゲットや販促活動も以下の表のように異なります。各モールで行う施策もこうした傾向を意識した施策が効果的です。

楽天市場AmazonYahoo!ショッピング
メインターゲット30~40代の口コミや価格を重視する主婦30~40代のキャリア志向高めの男性楽天市場・Amazonよりも男性の割合が多い
販促活動楽天エコシステムの拡充や配送の拡充、送料無料ラインの施策によるわかりやすい購入の促進Amazon Cash導入によるクレジットカード敬遠層の取り込みやタイムセールなどの施策有名人を起用したTVCM透過や高い還元率のポイント施策

各ECモールでさまざまな取り組みが行われていますが、講座では「まずは自分でECを使ってみよう」ということが提起されました。

実際にECモールを使ってみて、「ココが便利/不便」とか「良い/悪い店舗」だと感じるポイントは「自分がECを運営していく上での成功の種になる」と同時に、「この店舗でなぜ買おうと思ったのか?」といった態度変容の理由を理解し、活かすことがEC運営で重要だと指摘されていましたが、本当にそう思いました。

確かに何も使ったことがないECモールに対して、良い悪いの判断はわからないですよね。

ECモールの集客はユーザーの心理状態を理解して行う

自社ECとECモールでは大きな違いがあります。

Googleの公式資料として「Four Moments Every Marketer Should Know(マーケターが知るべき4つの瞬間)」というものがあり、検索するときのインテント(意図)を「Know(知りたい)」「Go(行きたい)」「Do(やってみたい)」「Buy(買いたい)」の4つに分けて分析することがあります。

ECモールへの訪問は、この4つの検索インテントでは「Buy」が目的です。

対して自社ECや自社ウェブサイトでは商品・サービスに対するユーザーの「Know」「Go」「Do」の要望も叶えることも対象となるので、集客の施策が異なります。

商品購入に至るまでのユーザーの心理状態によって検索の仕方(場所)や検索キーワードが変化します。検索キーワードを想定し、検索キーワードに応じた対策が重要なのです。

最初はふわっとした「●● おすすめ」「●● 人気」などの検索キーワードから、最終的には具体的なブランド名での検索になります。つまり、検索キーワードが具体的になればなるほど購買意欲が高くなるということですね。

ECモールでは検索フォームにキーワードを入力すると、ほかのユーザーが多く検索している検索キーワードを表示してくれる「サジェストキーワード」という機能があります。このサジェストキーワードは多く検索されているキーワードになるので、多くのユーザーが求めているものといえます。

集客のためには、まずサジェストキーワードを元に商品ページ上で対策を行うことが基本で重要な施策です。ただし、サジェストキーワードに入っているキーワードだけを見て、そのキーワードを商品ページに埋め込んでも、購入には結びつきません。なぜなら、検索キーワードと商品が合っていなかったり、購入から離れているキーワードだったりする場合があるためです。売上に結びつくキーワードへの施策を忘れないことが重要です。

商品ページは接客体験を高めるものである

ECの売上は「EC売上=アクセス数(集客)×転換率(接客)×客単価(増客)」という公式で表します。これは楽天市場やYahoo!ショッピングの管理画面でも同じ内容が出てくるECの売上の基本中の基本の計算式です。

商品ページはその中でも「転換率(接客)」の部分を担当しています。

リアル店舗の例でいうと、通りからお客様が店舗に入ってもらうまでが集客ですが、店舗に入った後にお客様が商品を購入してもらうための対応をするのが接客になります。リアル店舗の接客であれば、お客様に声掛けをして、見ている商品の説明をしたり、ほかの商品をオススメしたり、セールの案内をしたりといったものがありますが、ECの商品ページでは、そうした接客ができていないページが多いと講師の髙木さんは指摘していました。商品ページの中で、訪問してきたお客様に最適な情報を提示することが購入のために重要なのです。お客様が感じる不安・不満・疑問を解消して、欲しいと思わせることが転換率向上につながります。

お客様が購入して失敗したと感じたくないのはリアル店舗もECも同じです。例えばECであれば、商品を手に取って確認することができないので質感やサイズなどの詳細がわかりづらいとか、実際に使うとどうなのかといった効能やアドバイスが得られないといった部分などでお客様の不安・不満・疑問が発生するので、その点を商品ページで対応して、解消することが必要なのです。

商品ページ作成で重要なメリットとベネフィットの使い分け

それではどのようにして商品ページを作成していけばよいのでしょうか。

その前に、なぜ商品やサービスをお客様が購入するのかを考えてみましょう。商品やサービスはお客様が得たい「結果」や変化を得るための「手段」でしかありません。

つまり、商品ページは、お客様が得たい「結果」や変化を得るための「手段」であることを納得できる内容とするべきなのです。そのためにはメリットとベネフィットの違いを理解して作成する必要があります。

メリットは「この商品は●●です」というもので売る側の視点のアピールで、ベネフィットは「この商品は●●をしてくれる」というもので買う側の視点のアピールです。

このベネフィットを商品ページでお客様にアピールして、購入することで得られる変化を具体的にイメージしてもらえると、購入につながるわけです。

では、商品ページに入れるベネフィットをどうやって考えたらよいのでしょうか。

講師の髙木さんによると、次のスライドにある3つのステップで考えれば簡単にベネフィットは作れるそうです。

①商品・サービスのメリット(売り・特徴)を書き出す

②書き出したメリットに対して「だから、どうなるの??」と考えてみる

③質問に対しての回答をテンプレートにあてはめる

ベネフィットを考えたら競合店舗の調査も行いましょう。

ECのメリットのひとつに「(リアル店舗と違って)ほかの店舗との比較が簡単にできる」というものがあります。「自分たちが考えた強みがお客様にとって訴求できるものなのか」や「お客様の不安・不満・疑問に対して穴はないか」をチェックする上でも実施するべき作業のひとつです。

調査は項目別に比較するというものや、競合店舗のレビューのテキストマイニングからお客様が競合店舗の商品・サービスの何に価値や不満を感じているかを把握する手法が紹介されました。

ここまでの準備ができたら商品ページを「キャッチ」「ボディ」「クロージング」の3つの要素に分けて考えていきます。

講座では「キャッチ」「ボディ」「クロージング」の3つの要素を作る考え方が紹介されました。

講師の髙木さんの所属する電通が提唱するACREA(エクレア)理論も合わせて紹介されました。これは「キャッチ」「ボディ」「クロージング」をそれぞれ何の要素を入れていけばよいのかを説明したものです。

また、講師の髙木さんからは「ECモールでランキングやアワード受賞の常連店舗の商品ページはキチンと作り込まれているので、ECモールのイベントの度にチェックするとECモールの商品ページを作る上だけでなく、自社ECを作る上で参考になる」とアドバイスがありました。

各モールの傾向と対策

各モールについての傾向と対策についても解説されました。ここではその内容の概略だけ紹介します。

楽天市場について

楽天市場の基本は以下のスライドにある「自走モデル」が基本となります。

簡単に説明すると、集客から販売実績ができると販売実績の積み上がりからランキングが掲載されるようになります。ランキングが掲載されることによってキーワードの検索結果にも上位表示されるようになり、次の集客につながります。こうしたループ型のモデルが「自走モデル」です。

自走モデルの集客に有効なのが「RPP広告(Rakuten Promotion Platform)」です。検索結果の面を獲得して、そこを起点とするのが基本となります。

よく「楽天市場の商品ページは長い」といわれますが、単に長く作ればよいわけではなく、購入してもらうための情報を与えるようにページを作っていく必要があります。集客したお客様に商品を買ってもらうためには、商品ページを「キャッチ」「ボディ」「クロージング」で構成して作成しましょう。

また、楽天市場ではランキング掲載は購入の強い決め手となるので、ランキングバッジなどの掲載ができるように施策を行うことも大切です。ランキング確認で便利な「毎日伝令くんLight」というツールの紹介もありました。

リピート施策において、楽天市場では利用できるツールが少ないので、メールマガジン・サンキュークーポンなどを活用することが重要です。メールマガジンを読んで店舗に訪問してくれる人たちはまだまだいるので、活用していきましょう。

Amazonについて

Amazonでも検索結果の面を獲得することが重要です。Amazonでは「スポンサープロダクト広告」という広告を活用します。

Amazonではプライムマークの獲得も重要な施策のひとつです。商品検索でプライムマークの絞り込みがあるので、機会損失を起こさないためにも検討してみましょう。

他のモールに比べるとAmazonの商品ページは、作り込みの自由度が低いです。そこで、最初に目に入る商品画像と箇条書きがポイントのひとつとなります。また「商品紹介コンテンツ(A+コンテンツ)」では、レイアウトの種類は多くはないですが、商品画像を追加したり、説明文を追加したりできるので、購入率改善のために必ず設置をしましょう。三菱電機のブレッドオーブンが参考になるそうです。

なお、Amazonに限りませんが、悪い評価のレビューを放置せずに必ず対応しましょう。レビュワーへの適切な対応をするとともに、そのやり取りを見る第三者へのアピールになります。

Yahoo!ショッピング・PayPayモールについて

Yahoo!ショッピングの店舗数は非常に多いので、検索結果で上位表示させるために「ストアマッチ広告」「PRオプション広告」が有効です。

商品のサムネイル画像は楽天市場ではシンプルにしなければいけませんが、Yahoo!ショッピングは自由度が高く、訴求ポイントをかなり入れてもOKなので、サムネイル画像を作り込んでいくことが多店舗と比較されたときに有効になります。

関連情報:楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon、各ECモールにおけるデータ活用法(ネットショップ担当者フォーラム )

講座を受講した感想

初心者向けと聞いていたので概要的な話が多いのかと思いきや、(このレポートに掲載していない)具体的な施策や着眼点が非常に多く、すぐに店舗運営で実践してみようと思えた講座でした。

また、モールの基本的な機能でできることを使って愚直に店舗運営をしていくことの大事さも感じることができました。

ECモールと自社ECは対立するものやどちらかだけを選ぶものではなく、それぞれ別の役割があると理解できました。

各ECモールのさらに細かな施策についての講座もあったら、また受講してみたいです。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

楽天市場、Y!ショッピング、Amazonの集客・使い分けを学ぶ。ECモール基礎講座 参加レポート

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この記事を書いた人

ウェブ解析士。印刷会社の中で自社のウェブの制作を行う、いわゆるインハウスのウェブ担当者。ウェブの設計からデザイン・内容の作成・分析など基本的にすべてを担当している。今まではBtoB向けのサービスページの構築を行ってきたが、最近は自社製品の販売を行うECの構築も手掛けている。印刷会社出身なので文字の誤りやわかりづらい表現によく反応する。

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