はじめまして。ウェブ解析士見習い(?)の五島聖也です。
今回は『自社サイトをコストで終わらせないために〜ウェブ解析士の事例発表集(35)』のブックレビューをお届けします。
シリーズ35巻目となるこちらの書籍は、2020年8月8日にオンライン(Zoom)で開催されたウェブ解析士による勉強会での発表を編集したBtoB向けの内容です。
実際のアクセス解析はもちろん、勉強会の内容がわかりやすくまとめられているので、実践にも役立つ書籍となっております。
なお、レビューでは各講師の内容を一部転載してお送りします。
※転載に関しては、著者の許諾をいただいています。
ローカルビジネスのWEBサイトの育て方 ~造園業一人親方編~(山田修史氏)
『わかりやすい情報を探している人へ』をモットーに、クライアントの事業に貢献できるWEB集客を目指す山田さん。
2度目の登壇となる山田さんの発表は、過去に発表したテーマ(2016年7月『自社サイトをコストで終わらせないために ウェブ解析士の事例発表集(13)』)に加えて、現在の比較データも加わったものです。
山田さんのテーマは以下の通りです。
- 1.0 発表タイトル
- 1.1 自己紹介
- 1.2 まず初めに
- 1.3 他業種でもつかえる
- 1.4 造園会社の背景
- 1.5 2010年4月のリニューアル
- 1.6 2013年2月 WordPress化とリニューアル
- 1.7 WordPress化した時の失敗
- 1.8 対応可能地域外の相談を減らす
- 1.9 対応地域からの問い合わせを増やす
- 1.10 フリーダイヤルから市外局番へ
- 1.11 スマートフォンの改善
- 1.12 効果的だったお問い合わせフォームの改善
- 1.13 お客様から頂いた意見をサイトに反映
- 1.14 専門サイトの立ち上げ
- 1.15 発表から5年間後はどうなった?
- 1.16 小さな会社のサイト運営に大事なこと
前職時代から付き合いのあるクライアントに行った施策事例の数々。
本書ではアクセス解析と共に、WEBサイトの改善すべきポイントや実際に行った施策、その後の推移データまで詳しく紹介されています。
山田さんの施策を受けて、WEBサイトはどのような成長を遂げたのでしょうか?
(一部転載)1.2 まず初めに
2016年7月に登壇した内容のアンコール講演として2020年8月に発表したスライドの内容を、「自社サイトをコストで終わらせないために ウェブ解析士の事例発表集(13)」に加筆しています。
ここでいう「ローカルビジネス」は「地域密着型のビジネス」のことをいいます。
自己紹介でも書きましたが、小企業(売上5000万円以下または、社員数1~5名程度)の企業または個人事業主のウェブサイトのディレクションや運営サポートを主に担当しています。
キーワードさえマッチすれば日本全国に露出できるウェブサイトですが地域密着型のウェブサイトではメリットもありますがデメリットも出てきます。デメリットの例としては、対応できる地域のコンバージョンが欲しいのに対応できない地域のコンバージョンが発生してしまうことや、クライアント側で対応できるキャパが限られているなどです。
また、小企業の方は、WEB集客に期待をする一方で、リアルでのお客様の対応や仕事が優先されWEB集客に割ける時間を取りにくいのも現状です。その結果ウェブサイトを制作したはいいが更新されず放置されているサイトも数多く見かけます。運営サポートとしてクライアントが無理なくできることでウェブサイトを成長させていった事例をご紹介します。
(一部転載)1.15 発表から5年間後はどうなった?
「自社サイトをコストで終わらせないために ウェブ解析士の事例発表集(13)」から5年後にどういう状態になったのか?
2020年7月のユーザーデータ。
2020年7月の目標の完了数。
5年分のユーザーデータ
5年間のユーザーデータは右肩上がりで伸びています。季節要因がある業態なので、毎年同じ時期にグラフの山ができるのはみているとおもしろいですよね。
2020年7月のデータはセッションが13,551で目標完了数が18件です。
5年前のデータとくらべると少なくなったと思われているかもしれませんね。
大きく減ったのは電話のタップです。0になっています。
実は092の局番にしても電話のお問い合わせが増えすぎてしまったので、CTAに電話番号の記載をやめて、タップさせるところも削除をしました。
基本的には、フォーム経由のお問い合わせのみにしています。
それでも会社概要などの情報から電話かけてくる方もいらっしゃいます。
5年間の目標の完了数の変化です。
フォームの項目をさらに増やしているので、サンキューページの到達率は12.07%から6.41%に下がっています。お問い合わせフォーム到達数が増えているためにサンキューページ到達数は5年前より増えています。
より質の高いお問い合わせになっています。
2020年8月現在では、3回目のリニューアル中です。2020年中には新しいサイトでの運用が始まります。
(転載ここまで)
2016年の発表から5年。「クライアントができること」と「ユーザーが求めていること」を一致させたことによって大きな成果を生み出していますね。
読んでいる皆さん自身の立場に置き換えてみても、山田さんの発表は施策に合わせてテーマを細かく設定してくれているため、自社が抱えている悩みをピンポイントで解決できるかもしれません。
興味のある方は発表をお読みいただき、山田さんに相談されてみてはいかがでしょうか。
小さなお店のFacebook活用術(足谷保典氏)
Webマーケティングに必要不可欠といっても過言ではないSNS運用。登壇者の足立さんは、「規模の小さな店舗においてはSNSの中でも『Facebook』を活用するべきだ」と考えています。
今回は、その根拠を示すために、個人経営の飲食店がもつFacebookアカウントを使ったある実験を行いました。事前準備はもちろん、具体的な施策とその効果が書かれた内容です。
さらに、Facebookをより活用できる施策として「Google マイビジネス」についても触れられています。FacebookとGoogleマイビジネスの合わせ技は、小さな店舗にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?
足立さんのテーマは以下の通りです。
- 2.0 発表タイトル
- 2.1 自己紹介
- 2.2 はじめに
- 2.3 小さなお店とそうでないお店の違い
- 2.4 なぜFacebookなのか
- 2.5 今回ご協力いただいたお店の紹介
- 2.6 今回実施した内容の流れ
- 2.7 現状分析
- 2.8 現状分析の報告と目標の確認
- 2.9施策の検討及び実施
- 2.10 施策の具体的内容について
- 2.11 施策の結果分析
- 2.12 おまけ
- 2.13 まとめ
(一部転載)2.3 小さなお店とそうでないお店の違い
今回のタイトルは「小さなお店のFacebook活用術」とさせていただきました。最初になぜ小さなお店なのか、なぜ、Facebookなのかの部分について説明をさせていただきます。
皆さんは小さなお店というとどんなイメージがあるでしょうか?
逆に大きなお店というとどんなイメージがあるでしょうか?
もう少しわかりやすくイメージするために大きなお店の代表としてチェーン飲食店、小さなお店として近所にある個人でやっている飲食店を思い浮かべてみてください。
いかがでしょうか?いろいろと違いが見えてきましたか?
チェーン飲食店の場合は
[メリット]
・いつでも同じものが食べられる安心感がある
・全国展開なのでどこに行っても食べられる
[デメリット]
・どこに行っても同じメニューしかない。
・顔見知りになっても個人的なサービスが受けにくい
個人経営の飲食店の場合は
[メリット]
・その店にしかないオリジナルのメニューがある
・顔見知りになると個人的にサービスが受けられる可能性がある。
[デメリット]
・入ってみるのに勇気がいる
・店名を知ってもらうのが難しい
等々他にもいろいろあるかと思いますが総じて以下のようなポイントがあります。
チェーン飲食店
・ブランドという安心感がある
・同じような企画が多い (自由度が低い)
個人経営の飲食店
・知名度が低いと集客が難しい
・オリジナルの企画が行いやすい(自由度が高い)
業態によって強み弱みがあります。今回の場合個人経営の店舗の場合は自由度が高いという部分が強みであると思います。そこを生かしていこうという提案をさせていただきます。
チェーン店は「どこでも一緒だから近くの店でなくても帰り道によればいいや」となりますが個人経営の店舗の場合は「あれが食べたいからあそこの店にいこう」となりやすいです。そのためにはお店の思いやコンセプトも大切になってくると思います。
(一部転載)2.6 今回実施した内容の流れ
今回実施した内容について順を追って説明をしていきます。
- 現状分析
- 現状分析の報告と目標の確認
- 施策の検討及び実施
- 施策の結果分析
次から一つずつ確認をしていきたいと思います。
(転載ここまで)
この章では、現状の把握と目標を確認した後、Facebookの投稿にある工夫を加えています。
さらに、FacebookとGoogleマイビジネスを組み合わせたことで、Googleの検索結果にもある変化が…..。
結果が気になる方は、ぜひ本書をお読みください。
SNSを運用していくためにも、何かしらのヒントを得られるはずです。
デザイナーとWeb解析(魚返真哉氏)
10年以上に渡って、さまざまな規模のWebサービスに関わってきたというWebデザイナーの魚返(うおがえし)さん。
魚返さんが日頃から感じていることは「Webサービスやサイトは十分に機能できているのか?」という疑問です。Webサービスを提供する人と制作する人。そして、そのサービスを使う人。
魚返さんは「全員が満足してWebサービス本来の機能を発揮するためには『制作者(デザイナー)が起点となって動く』ことが大切だ」と考えています。
そんな魚返さんのテーマは以下の通りです。
- 3.0 発表タイトル
- 3.1 自己紹介
- 3.2 Webにデザイナーが関わり続ける意義とは?
- 3.3 Webをチューニングする
- 3.3.1 切り口1:まずは、評価から始める
- 3.3.2 切り口2:まずは、ユーザー体験から考える
- 3.3.3 切り口3:まずは、ヒートマップツールを見る
- 3.4 Web制作サービスのサイトを事例に
- 3.4.1 事例サイト:Quiipo(クイーポ)とは
- 3.4.2 Capdo(キャップドゥ)
- 3.4.3【評価・分析(C)】ユーザー体験の仮説を立てる
- 3.4.4【評価・分析(C)】ユーザーフローを想定する
- 3.4.5【評価・分析(C)】ヒートマップツールで課題抽出する
- 3.4.6【評価・分析(C)】課題ごとに対応可否を検討する
- 3.4.7【改善(A)】対応案を考える
- 3.5 おわりに
ここではこの発表の前提となる「2.3 採用戦略の見直しのポイント」と「2.4 集める」をご紹介します。
(一部転載)3.3 Webをチューニングする
さて、「制作する人は作っておしまいのWebを改めて、公開後のWebに積極的に関わり続け、Webの改善サイクルを回し、チューニングしていくことで、提供する人、使う人をハッピーにできるのでは?」を実際に体現していくためには、どうしたら良いのでしょうか?
ここでは、3つの切り口で考えてみることにします。
3.3.1 切り口1:まずは、評価から始める
皆さんは、PDCA(ピーディーシーエー)という言葉をご存知ではないでしょうか?これは、計画(P)、実行(D)、評価・分析(C)、改善(A)の四つの活動を一サイクルとした改善手法のことで、ビジネスの現場や、はたまた個人単位でもよく耳にする言葉かと思います。こちらの言葉が有名なだけに、何かしら改善を行おうとした場合、PDCAが頭に浮かんできて、計画(P)の部分から着手して、計画(P)で頓挫してしまう、といったことはよく聞く話です。
PDCAに対して、CAPDo(キャップドゥ)という手法があります。これはPDCAの活動の順番を変更したもので、評価・分析(C)からスタートし、改善(A)、計画(P)、実行(Do)と進めていくものです。現状に対しての評価から始まるので、気軽に改善サイクルに着手できるのが一番のポイントかと思います。
3.3.2 切り口2:まずは、ユーザー体験から考える
さて、CAPDo(キャップドゥ)の改善サイクルを採用することになり、実際に評価からスタートすることになりました。そこで、皆さんは現状分析のために何を確認しますか?
Webサービスやサイトに少しでも携わっている方であるならば、Googleが提供しているGoogle アナリティクス というツールを思い浮かべると思います。確かにこのツールは無償プランであっても多くの指標を確認できる、非常に優れたツールだと思いますが、そこに落とし穴があると感じています。
「ページビューはどれくらいあるのか」「セッションが多いのはどの曜日のどの時間帯か?」「どこからの流入多いのか?」といった指標を一通り確認し、現状を把握すると思いますが、Web改善を始めようとする人にとって、ここから改善の考察を得るのは非常に難しいと感じています。
そこで、ユーザー体験から考えるのはいかがでしょうか?デザイナーなら、「どういった想いを持ったユーザーが、どこどこのページにランディングするから、ここには、このラベルのボタンがあるべき」といったコンテキストを考えてデザインをしていると思いますが、これと同じことです。Googleアナリティクスに代表される解析ツールの数字を見る前に、当該サイトのユーザー体験を考えてみるのです。
3.3.3 切り口3:まずは、ヒートマップツールを見る
ヒートマップツールとは、サイト内のユーザー行動を可視化したもので、切り口2でデザイナーが考えるユーザー体験の仮説について、その仮説がさらに正しいことを確認したり、逆に間違っているのではないか?といった考察を可能にするツールです。以下に、私自身が使用しているmouseflowというツールをご紹介します。
(一部転載)3.4 Web制作サービスのサイトを事例に
前述のCapdoにのっとって、これからやっていくことを整理したいと思います。
3.4.3【評価・分析(C)】ユーザー体験の仮説を立てる
さて、ここでは事例サイトのユーザー体験を考えたいと思います。まず、プラグマティックペルソナと呼ばれる簡易ペルソナとユーザーシナリオを以下のように設定します。
「IT関係に疎い、地方の中小メーカーの、HPを持ちたい社長。最近はHPがないと採用活動ができない(応募がこない)と痛感しており、HPを持ちたいがどうしたら良いかわからない。とりあえずYahooで検索し、Quiipo.comにランディング。サービス内容などを確認し、やはり直接話を聞きたいので、コンタクトフォームから問い合わせた。」
3.4.4【評価・分析(C)】ユーザーフローを想定する
続いて、上記のユーザーシナリオに基づいて、ユーザーフローを想定します。
3.4.5【評価・分析(C)】ヒートマップツールで課題抽出する
続いて、ユーザーフローの各画面(1.サイトトップ→2.サービスページ→3.価格ページ→4.Quiipoについて→5.お問い合わせ)について、ヒートマップツールでの分析を進めます。ここでは、サイトトップを例に課題抽出を行います。
図:Quiipoのサイトトップ
Quiipoのサイトトップの構成は、以下の通りです。
上から、
- メインナビゲーションで構成されたヘッダー
- 自動でスライドするメインビジュアル(スライドは2枚)
- 新着のお知らせ
- 特徴紹介
- 他サービスとの対比表
- 導入事例
- よくある質問
- お問い合わせボタン
- サービス概要や新着ブログの一覧などから構成されたフッター
・クリック分析で見えた課題
グローバルナビゲーションは、全般的にマウスオーバーしてからクリックに至る割合が10%で、他ページと比較して極端に低い
・クリック分析で見えた課題
メインビジュアルのスライダーの次へのクリック数は、ページ内で相対的に多いが次のスライドからの導線がうまく機能していない(ランディングページへの導線設置するも、そのページへの遷移が少ない)
・スクロール分析で見えた課題
スクロールが7割ぐらいあるのに、Googleアナリティクスで確認できる平均ページ滞在時間が13秒と少ない
・クリック分析で見えた課題
導入事例から導入事例一覧ページへの遷移が少ない
・ムーブメント・クリック分析で見えた課題
グローバルナビゲーションの「価格」ラベルが赤く染まり、マウスがそこに頻繁に動いているようだが、クリック数は少ない
(転載ここまで)
アクセス解析と合わせてWebサイトの課題を洗い出し、仮説をたてて実行していく。一見するとただの「PDCAサイクル」に見えますが、魚返さんの場合は違います。
どのような検証をして課題を見つけ出すのか?そして、どこを改善していくのか?
「CaPDo」に則った改善プロセスは、読み進めていくうちに自分もチームに加わっているような錯覚になりました。
「自社のWebサービス機能は存分に発揮できているのか?」
このような悩みをお持ちの方は、魚返さんに相談されてみてはいかがでしょうか。
おわりに
『自社サイトをコストで終わらせないために』は、シリーズごとにBtoBやBtoCに向けて、違ったテーマが設定されているため、一度購入しておけば、場面に応じていろんな事例を参考にすることができはずです。
しかも、Kindle Unlimited 会員だと、このシリーズを無料で読むことができるんです!会員でなくても、たったの480円。大盤振る舞いもいいところですよね!
ウェブ解析士の皆様が、どのようにして課題を見つけ、そこから仮説を見立てて改善するのか。その術を知りたいという方は、本書を購読することをオススメします!
自社サイトをコストで終わらせないために
ウェブ解析士の事例発表集(35)
山田 修史(上級ウェブ解析士)
足谷 保典(上級ウェブ解析士)
魚返 真哉(上級ウェブ解析士)
監修 ウェブ解析士協会
発行 亀井 耕二(ウェブ解析士協会 理事)
Amazon のKindleUnlimited なら無料で読めます。
自社サイトをコストで終わらせないために ウェブ解析士の事例発表集(35)