上級ウェブ解析士の高橋です。
今回は『自社サイトをコストで終わらせないために〜ウェブ解析士の事例発表集(29)』のブックレビューをお届けします。
2019年5月25日に大阪で開催された第30回ウェブ解析士勉強会『自社サイトをコストで終わらせないために』のセミナーを書籍化したものです。
各講師の内容を一部転載してお送りします。
※転載に関しては、著者の許諾をいただいています。
※発表者の勤務先、役職につきましては2019年5月当時のものです。
ウェブ解析士の使える”武器”を増やす、ツールトレーニング分科会のこれまでとこれから(佐々木 秀憲氏)
最初はウェブ解析士マスターの佐々木秀憲さんのセッションです。
佐々木さんは、500社以上の営業・企画・顧客へのシステム導入サポート、操作レクチャーを行ってきました。
その豊富な経験・実績をベースに、2016年4月より株式会社Task it の代表取締役として、Google アナリティクス講座を中心に、ウェブ解析士講座・上級ウェブ解析士講座の実施と、ウェブコンサルティングを中心に行っています。
今回の内容は以下の通りです
- 1.0 ウェブ解析士の使える”武器”を増やす、ツールトレーニング分科会のこれまでとこれから
- 1.1 自己紹介
- 1.2 ツールトレーニング分科会について
- 1.3 ツールベンダー様のご紹介について
- 1.4 ツールトレーニング講座について
- 1.5 マーケティングテクノロジーカオスマップについて
- 1.6 日本で利用できるマーケティングテクノロジーツールのカオスマップ
- 1.7 ウェブ解析士協会版ツールマップについて
- 1.8 最後に
ここでは、「1.5 マーケティングテクノロジーカオスマップについて」と「1.6 日本で利用できるマーケティングテクノロジーツールのカオスマップ」をご紹介します。
マーケティングテクノロジーカオスマップについて(一部転載)
皆さんは、「マーケティングテクノロジー」という言葉をご存知でしょうか。
アメリカでは、「MARTECH(マーテック)」というイベントが2011年より開催されています。(マーケティング+テクノロジーの造語)
そのMARTECHのイベントによると、2019年現在、アメリカにおいて、マーケティングで利用できるツールはなんと7,040にも及びます。
いわゆる、「アドテク」の分野などでは有名ですが、MARTECHでも「カオスマップ(英語ではLandscape)」が作成されています。
https://chiefmartec.com/2019/04/marketing-technology-landscape-supergraphic-2019/ より引用
こちらのカオスマップは、2011年から随時ツールが増えるたびに毎年更新をされています。2011年は150ツール未満でしたが、たったの8年で46倍にも増加しました。
https://chiefmartec.com/2019/04/marketing-technology-landscape-supergraphic-2019/ より引用
ただ、昨年2018年から2019年にかけては、思いのほか伸び悩み、毎年発表を楽しみにしている関係者の間では、ガッカリムードが伺えたのですが、捉え方としては、マーケティングテクノロジーが頭打ちになったわけではなく、一旦安定はしたもののまた来年に向けて大きくツール数が躍進するだろうというのが、大方の見立てとなっているようです。
「マーケティングテクノロジー」という言葉を初めて聞いた方は、ぜひ上記URLにアクセスして頂き、実際のカオスマップを眺めてみて下さい。
(ロゴが小さいので記事内の「2019 Marketing Technology Landscape Supergraphic」というリンクをクリックして、高解像度版をご覧下さい。
https://cdn.chiefmartec.com/wp-content/uploads/2019/03/marketing-technology-landscape-2019-slide.jpg)
ただ、こちらのカオスマップでは「アメリカでしか使えないツール」も含まれてしまっています。
そこで、次の章では日本で使えるマーケティングテクノロジーツールのカオスマップについて、紹介致します。
日本で利用できるマーケティングテクノロジーツールのカオスマップ(一部転載)
先程の「MARTECH」の資料では、アメリカで開催されるイベントということもあり、まだ日本に入って来ていないツールも多く含まれた状態でした。
そこで、毎年MARTECHに参加し、日本版の「マーケティングテクノロジーカオスマップ」を作成されているのが株式会社アンダーワークス社です。
(https://www.underworks.co.jp/download/#chaosmap より引用「マーケティングテクノロジーカオスマップ JAPAN 2018」)
高解像度版については、ダウンロード資料となっておりますので、各自必要に応じ元サイトよりダウンロードして下さい。
詳細については、アンダーワークス社の著作物となりますので詳細のツール名などの紹介は控えさせていただきますが、前節でもお伝えしましたとおり、アメリカで開催されるMARTECHに毎年参加しながら、「日本で利用できるツール」でカオスマップをまとめ直すということをされており、日本企業でマーケティングテクノロジーを検討したいという場合には、大いに役に立つことでしょう。
(転載ここまで)
カオスとはまさにこのことですね。
マーケティングに関するツールは相当数あるだろうなぁと想像はしていましたが、まさかこれほどまでに多いとは思いませんでした。
これはマーケティングが、今後も多くのツールを必要とするという分野だということを如実に示していると思います。
それにしても数の多さをみると、「選択肢があまりに多すぎて選べない」という問題が発生しているように思います。
さらに1つのツールがいろいろなマーケティングの要素を含んで多様化(多機能化)していくのですから、今後選ぶ側はますます大変な状況になります。
ただ個人的には、マーケティングのツールはこれ以上複雑にならないでほしいと思います。「お客様が選ぶ」という視点に立って、一部の機能に特化して、他のツールとの連携を強化していくような模索があると、選ぶ側にとって便利になってくると思います。
マーケティングツールを開発する側の方にも考えていただきたい問題だと思います。
(注)アンダーワークス社のサイトで、日本版のマーケティングテクノロジーカオスマップの最新版が公開されています。
マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN 2021
CVRゴリゴリ改善!GORILLA EFO(今泉 勇介氏)
続いては上級ウェブ解析士の今泉勇介さんのセッションです。
今泉さんはブルースクレイ・ジャパン株式会社マーケティング事業部事業開発部門 のマネージャーとして、Web広告運用を中心にWebマーケティングの支援に従事し、現在は事業開発部門にてSNSマーケティング領域の事業開発に取り組んでいます。
今回の内容は以下の通りです。
- 2.0 「CVRゴリゴリ改善!GORILLA EFO」
- 2.1 自己紹介
- 2.2 はじめに
- 2.3 ランディングページ改善の需要が高まる
- 2.4 EFO(エントリーフォーム最適化)とは?
- 2.5 入力フォーム離脱の原因と重要性
- 2.6 EFOツール導入事例
- 2.7 EFOツール導入の注意点
- 2.8 GORILLA EFO
今回は「2.4 EFO(エントリーフォーム最適化)とは?」と「2.6 EFOツール導入事例」から一部をご紹介します。
EFO(エントリーフォーム最適化)とは?(一部転載)
EFO (Entry Form Optimization) とはエントリーフォーム最適化のことを意味します。入力フォームの項目やデザイン、入力支援機能を追加するなどの入力フォームに特化した改善施策を一般的にEFOといいます。
なぜ、ユーザーは入力フォームで離脱するのでしょうか? その答えは大きく分けて3つの要因に分解されます。
(1)入力フォームを見て手間を感じる
(2)入力途中で意欲が失われる
(3)入力方法が不明確で諦めてしまう
(1)入力フォームを見て手間を感じる
ユーザーは入力をする前に入力項目を見て、入力をする・しないを判断しています。入力項目が多過ぎるとユーザーは手間を感じ、入力に入る前に離脱する恐れがあります。また必須項目が不明確な状態では全部の項目を入力しなければならないと考え、同様に離脱する可能性があります。
(2)入力途中で意欲が失われる
ユーザーは入力途中で離脱する場合があります。それは入力ステップが多いケースです。例えば、名前と電話番号を入力した後に完了ボタンと押すと次のステップがあり、住所の入力を促され、さらに入力完了後に、次のステップでメールアドレスの入力を促されるといったようなケースです。何度も段階を踏んで入力を促されるのはユーザーにとって大きな負担になります。
また何度もエラーが出る場合も入力意欲が失われ、離脱する原因になります。
(3) 入力方法が不明確で諦めてしまう
何度もエラーが出ることも離脱の原因になりますが、エラー箇所が不明で入力を直すことができず、諦めてしまうこともあります。その他にも修正のため、戻るボタンで画面を戻ると入力した項目が全てリセットされてしまい、入力が面倒になり、諦めてしまうこともあります。
3つの要因からフォームの課題点を洗い出すことで、適切な対策を打つことが重要です。入力フォーム改善に欠かせないツールとして、EFOに特化した支援ツールをEFOツールといいます。EFOツールには入力フォームに関するサポート機能や離脱防止機能が備わっており、多様な機能がございますので、今回は一般的な機能の一部をご紹介します。
(1)ガイドナビゲーション
ガイドナビゲーションの機能はユーザーに入力フォーム上で入力完了までの残り項目件数をご案内する機能です。
(2)フリガナ自動入力
フリガナ自動入力機能はある特定の項目を入力した際に別の指定した項目のふりがなが自動入力される機能です。
(3)住所自動入力
住所自動入力機能は住所入力フォームで、郵便番号(7桁の数字)の入力があったタイミングで、その後の住所(都道府県・市区町村・番地)を自動入力する機能です。
(4)メールアドレスサジェスト
メールアドレスサジェスト機能は@以降の良く使われるドメイン候補を表示する機能です。
(5)半角全角自動変換
半角全角自動変換機能は入力文字(英数字)の全角・半角文字を自動で変換する機能です。
(6)入力時背景色指定
入力時背景色指定機能は入力中の項目に対して色を付ける機能です。
(7)スマホキーボード変換
スマホキーボード変換機能はスマートフォンの入力時に入力キーボードを自動的に最適化する機能です。
(8)リアルタイムアラート
リアルタイムアラート機能はユーザーの入力エラーをリアルタイムにアラート通知する機能です。
(9)エラー時背景色指定
エラー時背景色指定機能は必須項目およびエラー項目の背景色を変化させる機能です。
(10)離脱ブロック
離脱ブロック機能はユーザーがフォーム画面のページを離脱しようとした際にダイアログメッセージを表示する機能です。
(中略)
EFOツール導入事例(一部転載)
EFOツールによる効果は企業やビジネスによって大きく変わりますが、業界に問わず効果があります。弊社のEFOツールの導入事例を一部ご紹介します。
1. 健康食品
【必須】マークは付いていますが、視認性が低く見落とされてしまい、入力エラーを引き起こしておりました。特にふりがな、番地・ビル名でのエラーが多い状況です。
必須項目に色を付けることで、ユーザーに入力すべき項目の見落としを防ぎ、フリガナ自動入力、メールアドレスサジェストのEFO機能で入力サポートを実装しました。
2. 化粧品
項目に対して「必須」や、色の変更で項目は見やすいですが、項目内に記入例の記載がなく、無機質なイメージを与えてしまっておりました。
必須項目に色を付けることで、ユーザーに入力すべき項目の見落としを防ぎ、フリガナ自動入力、メールアドレスサジェストのEFO機能で入力サポートを実装しました。
結果はユーザーの視認性が向上したことで入力完了率19%UPを実現しました。
(転載ここまで)
入力フォームの改善は非常に大切です。
企業側としては少しでも多くのお客様情報を得ることで、今後事業を展開していくための戦略や、さまざまな拡販施策を立てたりします。
しかし一方では、せっかく製品ページでお客様の心に響くメッセージで商品の良さをアピールしてお客様の購入意欲がアップしても、購入のための登録情報が多すぎたり、入力方法がわかりにくくて、「もういいや!面倒くさい」なんてことになったら勿体ないことこの上ないですし、それまでの全ての努力が水の泡になります。
そういえば東京2020オリンピックのボランティアの申込フォームで、「入力項目があまりに多すぎて、心が折れた」という話はSNSでよく目にしました。
こうなると本末転倒で、本当にボランティアを求めているのか、求めていないのか?それとも、「よほどの覚悟でないと勤まらないよ」という暗示なのか?と考えてしまいました。
話が脇道に逸れたので戻しますと、フォーム入力で大事になるのは、突き詰めると
・どのような項目の入力をお客様に求めるのか?
・入力の負担にならないようにするにはどうすればよいか?
という2点であり、後者の「負担を解消するための工夫をする」のがEFOツールの役割といえます。
それ以上に大切なのは、「どのような項目の入力をお客様に求めるのか」を検討することだと考えます。(できる限り入力項目は絞り込む必要があります。)
その上でEFOツール導入という順番になるのだと思います。
最後に
今回の2セッションを読んで、改めてマーケティングツールの多様さと数の多さを実感しました。
今後もマーケティングツールはますます必要とされるでしょうが、選ぶ側の視点で、より選びやすくする方向に向かうといいと思いました。
EFOツールはいわゆる機能を特化したマーケティングツールです。
エントリーフォームは、お客様が自身の情報や不明点などを提供いただく、大事なインターフェースですから、EFOツールはその改善ができる非常に大切なツールと考えます。
今回の書籍版「自社サイトをコストで終わらせないために」は、ウェブ解析士だけでなく、マーケティングに関わる多くの方々、マーケティングツールを開発する方々にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
自社サイトをコストで終わらせないために
ウェブ解析士の事例発表集(29)
佐々木秀憲(ウェブ解析士マスター)
今泉勇介(上級ウェブ解析士)
監修 ウェブ解析士協会
発行 亀井耕二 (ウェブ解析士協会理事)
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