集客・販促を促す魅力的なコンテンツ制作には、本質を貫くアイデアが欠かせない。しかし、どんなに優れたアイデアマンでも「正解だけ」を発想することは不可能だ。
クリティカルなアイデアは質よりも量によって生み出される。エンタミナの田口氏はアイデア発想のフレームワークを使い、参加者約300人によるブレストを実施した。
セミナーを介して800件ものアイデアが生まれた。人間だからこそできる、田口流のアイデア発想法をお伝えしたい。
「制約」がアイデアを生む
「自由な発想でアイデアを出してみよう」と促され、戸惑った経験はないだろうか。何でもありだからこそ、何も出ない場面はよく起こる。
田口氏は、「制約・条件がアイデアを出しやすい状態にする」と強調する。
ここで使えるキーワードが「もしも◯◯だったら」だ。
「◯◯」に与える制約・条件の切り口は以下の3つだ。
- 条件や範囲を限定する
- 架空の設定を背負わせてみる
- 実在の人物になりきる
条件や範囲を限定する
ターゲットの世代、居住エリア、職業、季節など、当てはめる条件を絞るとアイデアが出やすくなる。
(例)ターゲットを限定する
- もしも「世代限定」だったら……
- もしも「地域限定」だったら……
- もしも「職種限定」だったら……
- もしも「期間限定」だったら……
架空の設定を背負わせてみる
背景の情景を制約にすると、アイデアが膨らみやすい。
(例)架空の設定を背負わせる
- もしも「恋愛ドラマ」だったら・・
- もしも「ハリウッド映画」だったら……
- もしも「サスペンス小説」だったら……
- もしも「少年マンガ」だったら・・
実在の人物になりきる
歴史上の人物や著名人になりきる切り口は、その人物に関する知識が多いほど、具体的なアイデアが浮かびやすい。
(例)実在の人物になりきる
- もしも「秋元康さん」だったら……
- もしも「タモリさん」だったら……
- もしも「松岡修造さん」だったら……
- もしも「ウォルト・ディズニーさん」だったら……
アイデアが出やすい場作り・盛り上げ方
田口氏のセッションでは、自らのアイデアだけでなく、参加者のアイデアを積極的に取り上げコメントする様子が見受けられた。
「どんなアイデアでも良い。正解はない。とにかく出してみよう!」という姿勢を主催側が見せることで、参加者の取り組み方は変わる。
アイデア収集はライブアンケートツール「Slido」-を使用し、匿名で投稿可とした点も投稿数に貢献した。集まったアイデアは800件にのぼる。
田口氏は、他者の意見・声からヒントを得ることも、アイデア発想の重要なポイントだと強調する。
発言を躊躇してしまう要因(正解を求める、周りを否定するなど)は排除し、アイデアの切り口には制約・条件を設けるバランスが、アイデア発想における前提条件だ。
想像力のトレーニングで、インスピレーション体質をつくろう
前述したアイデア発想法を体験したところで、魅力あるコンテンツ制作のアイデアが生まれるのか疑問に思う方もいるだろう。
田口氏は、いろいろな角度で物事を見る癖が、より多くのアイデアを出し続ける近道だと言う。
アイデアは質より量にこだわるべきだ。なぜなら、コンテンツの成果は結果を出してみなければわからないからだ。
アイデアを数多く出し続ける田口氏が、日頃から意識的に行う「想像力」の鍛え方を聞いた。
身近な広告枠への出稿内容を想像する
駅や電車には白紙の広告枠(看板)がある。この広告枠に自社商品、あるいは依頼主の広告出稿をするとしたら、どのような内容になるだろうか。
駅の客層、目に入るタイミングなど、広告効果を高めるために考えたい視点・切り口を増やすトレーニングになる。
モノを買う時に「誰が仕向けたか」を想像する
自動販売機で飲み物を購入するとき、誰もが無意識に買いたい商品のボタンを押している。
だが、そこに自動販売機を設置し、顧客が欲するであろう商品を陳列した人物は、顧客に購買を促す意図をもっているはずだと田口氏は言う。
その意図に想像を巡らせ、自分の次に購入する人を想像すると、いざ自分がPRする側に立ったときのヒントになる。
見かけたお店の集客施策を想像する
たまたま見かけたお店から、想像力のトレーニングをすることも可能だ。
この店から集客施策の相談を受けたら、どんな提案をするだろうか。会場から挙がったアイデアの一部は以下のとおりだ。
- 店内が見えるように、窓を開ける
- 美味しそうなうどんの写真を掲示する
- 手打ちの様子を見せる
- メニューを見せる
田口氏はこの問いを他の講座でも聞いたところ、面白い傾向が見られるという。「窓を開ける」「ベンチを置く」など、それほどコストがかからないが、クリティカルなアイデアが出やすいそうだ。
視点を増やす3つのヒント
私たちは業界の常識から提案しがちだ。ウェブ制作会社ならばサイトリニューアル、工務店なら店舗リニューアルが浮かぶだろう。だが、そのプロ意識が視野を狭くする可能性が高い。
自分の立場、経験による固定観念を捨てて「集客を増やすためのアイデア」を出すと、前述のうどん店のような本質的なアイデアが生まれやすくなる。
田口氏は最後に、アイデア発想のヒントを3つ挙げた。
- 目線を利用者の視点に揃える。
- 自分の立場、経験による固定観念を捨てる。
- 自分の体験と紐づけて出してみる。
ユーザー理解の本質は、自らの体験と紐づけて想像する力にある。クリティカルなアイデアの源泉は、ユーザー体験を意識的に集めておくことにありそうだ。
今回、田口氏が取り上げた「もし、◯◯だったら」以外にも、発想をふくらませるフレームワークはあるという。その極意をまとめたウェビナー「アイデア発想の極意」のアーカイブをnoteで販売中だ。
アイデア出しに課題感を持つ方は、ぜひチェックしてみてほしい。
アイデア発想の極意/フォローアップ:田口 真行氏 note:https://note.com/webdirector/n/n2007ca0320eb