顧客インサイトを引き出す!お客様アンケートの設計方法

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

「お客様が何を考え、何を求めているのかを知りたい」という悩みは、多くの企業経営者に共通する課題ではないでしょうか。特に限られたリソースで経営を進める中小企業にとっては、顧客の深層心理を理解し、効率的・効果的にビジネスを進めることが必要不可欠です。その解決策の一つが「お客様アンケート」です。ただし、アンケートは適切に設計されてこそ、本来の効果を発揮します。

今回は、顧客インサイトを引き出すお客様アンケートの設計方法や工夫についてお話しします。

目次

顧客インサイトとは何か?

顧客インサイトとは、顧客が自覚していない潜在的なニーズや感情、行動の背後にある心理的な動機を指します。たとえば、「このカフェの雰囲気が好きだから通っている」という理由の裏に、「仕事で疲れた時に、リラックスできる静かな空間を求めている」という深い感情が隠れていることがあります。このインサイトを発見できれば、カフェの内装やサービス、接客に対する改善の方向性を明確にし、顧客満足度をさらに高めることが可能になります。

例えば、とあるパン屋で、お客様アンケートを通じて「焼きたてパンの香りが心地よい」というインサイトを発見したとします。そのような場合は、パンが焼き上がる瞬間を実際にお客様に見えるように、客席から厨房が見えるようにするなどの工夫をすることができます。このように、顧客インサイトは事業の改善の道標となるのです。

お客様アンケート設計の基本原則

お客様アンケートを成功させるには、まず「目的を明確にすること」が重要です。たとえば、新商品のアイデアを探している場合、漠然と「どんな商品が欲しいですか?」と聞くのではなく、「現在購入している商品で満足している点は何ですか?」や「改善してほしい点はどこですか?」といった具体的な質問を設けることで、必要な情報を引き出せます。

また、質問は簡潔で直感的に回答できるものが理想です。長文や専門用語を避け、「購入時に重視するポイントを教えてください」といった短い質問にすることで、回答者の負担を軽減します。

さらに、回答者が自然に答えやすいよう質問の順番にも工夫を加えることが重要です。簡単な質問から始めて徐々に深掘りしていくことで、回答者がリラックスした状態で本音を話しやすくなります。例えば、「当店を訪れるのは今回が初めてですか?」というようなシンプルな質問を最初に置きます。この質問は回答者がすぐに答えられる内容であり、アンケートに対する心理的な負担を軽減します。次に、回答者が少し考えて答えるような質問を続けます。「本日、ご注文いただいたメニューの中で特にお気に入りは何でしたか?」「そのメニューを選んだ理由を教えてください」という質問などです。最後に、アンケートの後半では、改善点や深いインサイトを引き出すための質問を設定します。「当店で改善してほしい点があれば教えてください」「今後、季節限定メニューを追加するとしたら、どんなメニューがあればうれしいですか?」「当店で過ごしていて、一番心地よいと感じた瞬間を教えてください」「少しでも不快に感じたことがあれば教えてください」というような顧客体験の具体的な強みや課題を明らかにするための質問を掘り下げるイメージです。

顧客インサイトを引き出す質問の作り方

質問の設計は、顧客インサイトを引き出すうえで最も重要な要素です。クローズ型質問(例:「満足している」「不満足」など選択肢が固定された質問)とオープン型質問(例:「なぜこの商品を選んだのですか?」など選択肢が無限に考えられる質問)を適切に組み合わせることで、幅広い情報を収集できます。クローズ型質問は集計が簡単で、全体の傾向を把握するのに役立ちます。一方で、オープン型質問は、顧客の具体的な感情や考えを掘り下げるために有効です。

また、感情に焦点を当てた質問を取り入れることで、より深い洞察を得ることができます。たとえば、「当店で一番満足した瞬間を教えてください」と尋ねることで、顧客が何を求めているのかを明らかにするヒントになります。さらに、「もし新メニューを追加するとしたらどんなものが良いと思いますか?」といった仮想のケースを想定した質問も、潜在ニーズの発見につながります。

お客様アンケート運用の工夫

予算やリソースが限られる中小企業においてお客様アンケートを運用する際には、できるだけ低予算での効率的な運用が鍵となります。手軽で低コストな方法として、GoogleフォームやLINEのアンケート機能を活用するのがおすすめです。

また、回答者へのインセンティブとして、アンケートに答えると割引クーポンなどがもらえる仕組みを導入することも効果的です。こうした工夫により、より多くの回答を得ることができます。

アンケートを依頼するタイミングも重要です。たとえば、商品購入後やイベント終了直後にアンケートを送ると、顧客の体験が新鮮な状態で回答が得られ、より具体的で価値のある情報を収集できます。

お客様アンケート結果の分析と活用法

お客様アンケートはただ実施をしただけでは全く意味がありません。収集したデータをどのように活用するかが重要です。まず、アンケート回答を集計・分類し、共通するテーマやキーワードを抽出します。そして、「清潔感がある」「スタッフが親切」といったポジティブな回答に対しては、それを強化する施策を考えていきます。一方で、「待ち時間が長い」といったネガティブな回答に対しては、改善策を検討します。社内関係者で集まり、お客様アンケートを見ながら、「良いところを伸ばす」「悪いところを改善する」ための具体的な施策を話し合いましょう。

また、得られたインサイトを基にペルソナを作成することで、ターゲットとなる顧客像を明確化し、より効果的なマーケティング施策の立案に活かすこともできます。たとえば、「30代女性、平日の午後に訪れることが多く、落ち着ける雰囲気を求めている」といったような具体的なペルソナを設定し、今後の販促キャンペーンや広告出稿などの方向性をより明確にすることが可能です。

よくある失敗とその回避策

お客様アンケートでのよくある失敗として、質問数が多すぎることが挙げられます。これにより回答者が途中で離脱してしまうケースが多々あります。「せっかくアンケートを取るのだから、これも聞きたい、あれも聞きたい」と聞きたいことが多くなってしまう気持ちはよく分かるのですが、質問数は5〜10問程度に絞ることをおすすめします。

また、質問が誘導的な表現にならないよう、できるだけ中立的な言葉を使うことも重要です。たとえば、「この商品は満足度が高いと思いますか?」という質問は、満足していることを前提としているため、回答者が本音を言いにくくなります。一方で、「この商品のどの点に満足しましたか?または改善が必要だと感じた点はありますか?」と聞けば、ポジティブな意見もネガティブな意見も引き出すことができます。このように、表現を少し工夫することで、回答の質が向上します。

さいごに

いかがでしたでしょうか?顧客インサイトを引き出すお客様アンケートの設計は、企業のさらなる成長のきっかけの一つである有効な取り組みと言えます。最適な設問設計、そして取得した回答をしっかりと施策立案に活用することによって、お客様の本音を深く理解し、企業としての競争力をさらに高めることができます。ぜひ今回お伝えした内容を参考に、まずは小さなお客様アンケートから始めてみてください!

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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