デジタルマーケティングが進まない……!その背景と解決策は?

はじめまして。上級ウェブ解析士の上尾と申します。
現在は小規模〜中堅のB2Bの企業を対象に、デジタルマーケティングの導入支援、営業支援を行っています。

今回は、この「デジタルマーケティング」について、インターネットの黎明期からインターネットに関わる仕事をしてきた私が、平成30年という現代に感じることを書かせていただきます。

もしかしたら一部の方には耳の痛い話になるかもしれませんが、私たちも向き合っている課題ですので、ぜひともSNS等にてコメントいただければ幸いです。

目次

デジタルマーケティングという言葉は10年以上前からあった

私が「デジタルマーケティング」という言葉に初めて出会ったのは今から13年も前、2005年です。某大手CRM企業でお世話になった時でした。

それまでもインターネットに関連する仕事をしていたので、「『インターネットマーケティング』と『デジタルマーケティング』は、いったい何が違うのだろう?」と疑問を持ったことを覚えています。

みなさんはこの違い、わかりますか?

せっかくなので、ちょっと調べてみましょう。「インターネットマーケティング」は、「Webマーケティング」と同義とされることが多いようです。

インターネットマーケティングとは – IT用語辞典 Weblio辞書

Webマーケティング
読み方:ウェブマーケティング
別名:インターネットマーケティング,ネットマーケティング
【英】Web marketing, internet marketing

Webマーケティングとは、インターネット上で行うマーケティング活動全般のことである。

具体的なWebマーケティングの手段としては、自社のホームページや商品専用のWebサイトを通じてユーザーに対し商品やサービスに関する宣伝活動や啓蒙・普及活動を行うこと、そのWebサイトやECサイトにより多くのユーザーが検索エンジン経由で来るようにWEBサイトのSEOを行うこと、インターネット上のユーザーへ対するアンケート調査を通じて市場調査を行う活動、自社サイトで獲得した顧客に対して新製品の案内やサービスの拡充などに関して記載したEmailを送付すること、そして最近では自社ブログや商品ブログなどを立ち上げて、そこで商品の告知を行ったり商品の改善点に関する意見をユーザーから集めて双方向的なコミュニケーションを取ること、などが挙げられる。

また、インターネット広告を出したりEmail広告を出したりといった、いわゆる「広告戦略」といった種類のマーケティングも広義ではWebマーケティングに含まれるが、狭義では上記のようにインターネット上ならではの手法を活用して行う広報活動全般のことを指すことの方が多い。

それでは、「デジタルマーケティング」を調べてみます。

デジタルマーケティングとは – IT用語辞典 Weblio辞書

デジタルマーケティング
【英】digital marketing

デジタルマーケティングとは、いわゆるデジタルメディアを駆使したマーケティング活動全般を指す語である。「Webマーケティング」を含む、より広範な概念として用いられている。

Webマーケティングは基本的にはインターネットとWebサイトを中心に置く概念といえるが、デジタルマーケティングではWebサイトにソーシャルメディア(をはじめとするトリプルメディア)、モバイルアプリ、電子メールやデジタルサイネージまで、あらゆるメディアやチャネルが含まれ得る。こうした多種多様なチャネルを有効に組み合わせ、最適なマーケティング成果を獲得する、という点に主眼が置かれているといえる。

デジタルマーケティングを最適化・効率化する手段として「マーケティングオートメーション」(MA)と呼ばれる種類のツールも注目を集めている。

デジタル化したデータをすべてマーケティング材料として取り込むという意気込みを見れば、デジタルマーケティングの方がインターネットマーケティングよりも包含する範囲が広いのかもしれません。

しかしこれまでのところ、デジタル化されたデータはほとんどの場合インターネット経由だったため、両者の境界は曖昧だったのではないでしょうか。少なくとも10年以上前にデジタルマーケティングという言葉に出会った時には、正直なところ、違いがあるとは思えませんでした。

しかし、今後企業が本気でデータプラットフォームの整備に取り組み、IoTを活用したリアルな現場でのデータまでを視野に入れるようになれば、「デジタルマーケティング」という言葉の意味合いはもっと重みを持ってくると思います。

すでに技術は進歩とともにこなれつつあるため、企業間のマーケティングはBtoBであっても、顧客それぞれに適切なマーケティングがなされる時代になるのは目に見えています。話題のAI(人工知能)ですら、大企業のエンジニアによる研究対象だったものでした。それがたった2年程度で、一般人でも扱えるほどに使いやすく進歩しているのです。この現実から目を背けていると、気づいた時には競合に負けてしまうか、市場縮小の波から逃れられなくなってしまうことは容易に想像できます。

デジタル化されていないデータは、まだまだ企業に眠っている

さて、「デジタルマーケティング」。ここでは、「企業内にデジタル化されて蓄積されたデータを使ったマーケティング」という意味合いで使います。

企業内には、様々なデータが使われずに眠っています。

もしあなたが「いやいや、我が社はこの手のデータはすべてデータベースで管理されている。顧客データにせよ、商品データにせよ、すべて統合管理するシステムがある。この手のIT投資に怠りはない」という方であれば、ここから読む必要がないかもしれません。そのような状況ならきっと、マーケティングオートメーション(MA)などを活用できると思います。

しかし残念ながら、企業にはかなりのデータが眠っています。眠っているという認識がなくても、ご存知ないか情報共有できていないケースがほとんどです。

例えば、以下のようなものです。

  • 展示会で名刺交換した相手のリスト
  • 製品発表会に来てくれた顧客のリスト
  • ホームページで会員登録したユーザーリスト
  • 故障でサポートに電話してきた顧客のリスト
  • 過去に請求書や見積書を出した宛先リスト
  • 営業をかけた企業の反応をまとめたリスト

おそらくこれらは、別の部署でバラバラに管理されています。場合によっては紙に印刷されたものがファイリングされており、検索性に欠けることも少なくありません。

製品関係で言えば、以下のようなものでしょうか。

  • 引き合いのあった商談記録
  • ネットで売れた製品売上リスト
  • リアル店舗または対面で販売した注文書
  • 返品のあった製品リスト

これらを統合して管理できている会社は稀だと思います。注文書はFAXというケースも未だに多く、社内のサポートの女性がデータをパソコンで入力している光景は意外に多いものです。特に行政関連の書類は紙でのやり取りが多いので、それでも企業の方が変化しやすい環境であるとも言えるでしょう。

それにしても、なぜここまでデータが活用されないまま、バラバラに管理されているだけの状態なのでしょうか?

歴史的なことを言えば、おそらくITやマーケティングに大きな投資をする必要がなかったのだと思います。デジタル投資しなくとも、企業系列または大手の下請になっていれば会社として利益が確保できていたのです。

経済産業省の平成28年情報処理実態調査結果報告書によれば、「IT 戦略を策定している」と回答した企業の割合は 全業種平均39.7%であり、「IT 戦略を策定していない」と回答した企業の割合は 60.3%でした。

これを資本金規模別に見ると、「5,000 万円以下」の区分で 15.3%と最も低く、「100 億円超」の区分で 82.6%と最も高い結果となっています。また、年間事業収入規模別にみると、「5 億円超~10 億円以下」の区分で 8.9%と最も低く、「1,000 億円超~」の区分で 73.3%と最も高い結果となり、企業規模が小さくなればなるほど、 IT 戦略の策定が遅れているのがわかります。

資本金規模別 IT 戦略の策定状況

年間事業収入規模別 IT 戦略の策定状況

しかし、どの業界も時代が大きく変わろうとしています。規制緩和、人手不足、AIやIoT等の技術革新によるゲームチェンジ。ここに来て、既存の取引先との関係が崩れたり、社内のIT投資を増やしたり、新規事業をやらざるを得ない状況になっている会社は多くなっていますが、それでもまだ残念ながら、年間事業収入規模100億円以下の企業の7割強が、IT 投資前後の評価を十分に行っていないのです。

それでもデジタルマーケティングを実行できない2つの理由

ではなぜ日本の小規模〜中堅のB2B企業は、デジタルマーケティングが実行に移せないのでしょうか?私は中小企業のデジタルマーケティング導入を支援してきた経験から、大きく分けて2つの理由に集約されると考えています。

1つめは、デジタルマーケティングによる効果を実感できない経営層が多いこと。

簡単に言えば、「どんなことができるのか、ピンと来ていない」。近くの同業者もやっていないから、危機感もない。効果も危機感も実感できないから、必要な体制・予算を整えていない。市場の縮小を感じてはいるものの経営できているので、現状維持で問題ないと判断している。そんな状態でしょう。

もともとITやデジタルマーケティングの言葉はアメリカ発祥なので、カタカナ言葉のオンパレードです。そんな意味のわからない言葉を、若い担当に尋ねるのもはばかられるという方も少なくないでしょう。ましてや、従来のトップダウン型組織ではその傾向が強く、経営層のITリテラシーがそのまま企業に反映されています。

とはいえ、経営層は細かい単語の意味まで理解すべきということではなく、企業内におけるマーケティングの重要性とデジタル化という大きな方向性だけは、ぜひ認識してもらいたいのです。

2つめは、人材不足

どの企業でもデジタルマーケティング等の経験者は圧倒的に不足しています。未経験でもやる気のある人材がいれば、その人を中心に社内でノウハウを蓄積してゆくことができますが、優秀なやる気のある人がいても、すぐに数字を作る必要のある「営業チーム」に集約されてしまい、マーケティング業務は兼務でしかできません。

そもそも、「マーケティング」が「営業」と混同されてしまっています。「マーケティング」が「営業」と混同されていると、「デジタルマーケティング」=「単に数字を追いかけるだけ」という結果になってしまい、仮にデジタルマーケティングを実行したとしても、数字を集計した結果、「だからどうなの?」という方向性が見えないという結果に陥りがちです。

「マーケティング」とは、その企業独自のシナリオ、換言すればなにかしらの方向性をもったものであるべきだと考えます。そして、そのシナリオは思いつきやアイデア一発勝負のものでなく、一定の数字で裏付けのある戦略をもったものであって欲しいと思います。「アイデア」と「数字」、この両方が必要なのですが、圧倒的に「数字」に対する感覚が希薄なのです。この点について、まずは自社のマーケティング活動についての意識を改めて考えていただく必要もあるのではないかと思っています。

中小企業でデジタルマーケティングが進まないのは、上記の2つの理由にほぼ集約できます。

何から手をつけてゆけば良いのか?

心理的、人的な課題があるとは言え、中小企業でデジタルマーケティングが進んでいないということは、まだ先行者利益を享受できる余地が十分にある、ということです。

では、具体的に何から手をつけてゆけば良いのでしょう?

まず考えていただきたいのは、大前提となる「企業として何を実現したいのか」というビジョンを定めることです。

その上で、企業内のどこにどんなデータがあって、誰が管理しているのか、それらは顧客と企業にとってどんな意味があるのかを棚卸ししてデジタル化することをお勧めします。畑に埋もれていた作物を掘り出して、料理の材料として扱えるようにするようなものですね。

リストとしてのデータはもちろん、蓄積された暗黙知やノウハウには大きな価値があり、全社で共有できるようにするだけでも様々なメリットが出てくることでしょう。個人情報保護の観点からも、不必要なデータと判断できるものは削除することも可能になります。

明確になったビジョンがデータを扱う判断基準となり、ステップや打ち手がスムーズに決まてくれば、デジタルマーケティングの第一歩と言えるでしょう。

企業に眠っているデータがあることは上述のとおりですから、このようにデータの整理に工数を投資することは、専門的な知識がなくても、難しい用語を知らなくても、誰もができる「成功法則」です。

しかし、実行する企業はほんのごく一部です。先行者利益を得られると知っていても、です。

次回は、デジタルマーケティングを実行するための解決策と、具体的によく使われるデジタルマーケティングの手法についてお話いたします。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

日本電信電話株式会社入社 法人営業、国際ネットワーク構築、新規事業開発を経て、検索ポータルgoo事業部でインターネットビジネスの草創期に検索エンジンビジネスに携わる。
その後大手CRM企業、ネットベンチャーにおいて法人ユーザ対象にメール配信、CRM、FAQ、WEB解析を中心としたデジタルマーケティングに一貫して携わり、サービス立上げ・運用、顧客開拓、顧客サポート等幅広く従事。リーマンショック時にIoTベンチャー企業にて、資金管理・決算書作成等の会社運営実務を経験し2014年独立。上級ウェブ解析士。英語検定一級。

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