こんにちは。ウェブ解析士マスターの田実 日出翁(たじつ・ひでお)です。
アトリビューションの分析・評価方法は発展途上にあります。それでも、コンバージョン直前にクリックされた広告のみを評価すると、マーケティングファネルの認知層に向けて出稿した広告の評価はどうしても低くなってしまいます。
本稿では、直接コンバージョンに貢献しなかった広告の評価方法を紹介したいと思います。
アトリビューションモデル
クリックベースのアトリビューションモデルでは、コンパーションパスの広告クリックを「初回」「中間」「ラスト」と3つに大別してモデル化することが一般的です。初回・中間・ラストそれぞれのコンバージョンへの貢献度がどれくらいかを見ていくことになります。
基本的なアトリビューションモデルは「均等配分モデル」「初回重視モデル」「ラスト重視モデル」の3つがあります。
「均等配分モデル」とは、初回のクリック、中間のクリック、ラストのクリックのそれぞれに対して、貢献度を均等に割り振るモデルで、最も一班的なモデルと言われています。
「初回重視モデル」は初回クリックの貢献度が最も大きいと考えるモデル、「ラスト重視モデル」は最終クリックが最も貢献度が大きいと考えるモデルです。(図1)
アトリビューション分析事例
こちらの表1は、ある不動産広告の事例です。
バナー広告を3種類、テキスト広告を2種類掲載、15回のコンバージョンが発生していますが、クリック1回でコンバージョンしたのは8件、残りは複数回のクリックが発生しており、3件はコンバージョンに至るまで5回のクリックが発生しました。
全ての広告の広告予算を1万円として最終クリックだけのCPAで評価すると、効率の高い広告は「バナーC」と「テキスト1」、効率の悪いのは「バナーB」と「テキスト2」となります。
次に、均等配分モデルを使って、15件のコンバージョンパスでのそれぞれの広告の貢献値を求めます。(表2)
貢献値の合計で広告予算を割った値が「再配分CPA」となります。再配分CPAで広告を評価すると、最も貢献度の高い広告は「バナーA」、次いで「テキスト2」となり、貢献度の低い広告は「バナーB」となります。最終クリックでのCPAで効率の悪かった「テキスト2」は、間接効果の高い広告ということになりました。
さて、こちらの結果を見て、次の施策をどのように考えるでしょうか。いくつかの方法があるでしょうが、私でしたらCPAも再配分CPAも悪い「バナーB」の出稿を停止し、その予算を間接効果の高い「バナーA」と「テキスト2」に配分します。
直接効果の高い広告原稿は間接効果も高い
別のキャンペーンで、掲載メディアやクリエイティブの異なる202種類の広告原稿の直接効果と間接効果の相関関係を調べてみました。結果が下の散布図(図2)です。
縦軸が間接効果、横軸が直接効果となります。外れ値もありますが、直接効果と間接効果には強い相関性(相関係数 : 約0.7)がみられました。(こちらの例はあくまでも特定のキャンペーンでの事例です。全てのキャンペーンでこのような傾向があるということではありません。)
ある広告に初めて接触した際に、その場でファネルの態度変容が一気に進むことが直接効果だとすると、途中まで進むのが間接効果です。態度変容を進める力が強いメディアやクリエイティブを選ぶことが、広告効果全体を高めることだと言えます。
アトリビューション分析は、直接効果のなかった広告を評価するだけの分析ではありません。キャンペーン効果の仮説検証の指標です。この分析から、次の「打ち手」を考えて実施すること、そしてPDCAを回していくことが大切です。