機能的価値と情緒的価値!お客様の心に刺さる訴求メッセージの考え方とは

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

今回は、ブランディングの観点で非常に重要な「機能的価値」「情緒的価値」について、解説をいたします。商品やサービスの訴求メッセージを考える際に、どのようにすれば、よりお客様の心に刺さるメッセージを考えることができるのか。弊社がクライアント企業様の販促における訴求メッセージを作る際に意識をしている、具体的なポイントをお伝えします。

目次

商品やサービスの2つの価値

商品やサービスが顧客に与える価値は色々とありますが、ブランディングの観点では、「機能的価値」と「情緒的価値」の2つに分けて整理ができます。

「機能的価値」とは、その商品やサービスの機能面や品質面において、顧客に提供できる価値のことです。

「情緒的価値」とは、その商品やサービスを見たり、利用したりした際に、顧客が体感できる精神的な側面での価値のことです。

「機能的価値」も「情緒的価値」も、企業側のひとりよがりではなく、顧客のニーズに結びついているかどうかが、まずもっとも重要なことです。では、そのような「機能的価値」や「情緒的価値」を考えるにあたっては、具体的にはどのように進めれば良いのでしょうか。

機能的価値とは

「機能的価値」とは、その商品やサービスの機能面や品質面において、顧客に提供できる価値のことです。分かりやすく言えば、競合他社の商品やサービスと比較した際に、「その商品が優れている所はどこなのか」ということです。

たとえば、ABC社から新商品のカーテンが発売になったとします。このカーテンは、裏地に特殊な樹脂コーティング加工がされていて、どんな光でも完全に遮ることのできる遮光性の高さが、競合他社のカーテンと比較してもっとも優れているポイントだとします。このABC社の新商品のカーテンに関する、「機能的価値」の観点からの訴求メッセージは、
「どんなに明るい光でも完全に遮ることのできるのはABC社の遮光カーテンだけ。特許取得済みの独自の裏地特殊樹脂コーティング加工によって、抜群の遮光性を実現」
となります。

「機能的価値」を明文化するには、「自社商品だけがxxできる」「その理由は、事実としてxxだからだ」という流れでまとめると作りやすいです。上記の訴求メッセージも、そのような文章構成になっているのがわかるのではないでしょうか。「自社のカーテンだけが光を完全に遮ることができる」「その理由は、事実として特許を取得している特殊な樹脂コーティング加工がされているからだ」というような構成です。説得力があり、かつ端的で分かりやすく、論理的な文章を組み立てることができます。
当然のことではありますが、世の中で売れている商品やサービスというのは、大前提として、この「機能的価値」が高いことが多いです。

情緒的価値とは

「情緒的価値」とは、その商品やサービスを見たり、利用したりした際に、顧客が体感できる精神的な側面での価値のことです。要するに、その商品やサービスを利用することで、顧客が「どのような良い気持ちになるか」だと考えると分かりやすいかと思います。

さまざまな商品やサービスが溢れている昨今、「機能的価値」だけでの差別化はかなり難しくなっています。技術革新が速く、次々と高機能で便利な新商品が開発されていくような状況下では、たとえ今現在はお客様に刺さる「機能的価値」があったとしても、競合他社から新商品が出たことによって、その「機能的価値」のアピール力が弱まってしまうということは、往々にしてあります。「機能的価値」だけで差別化をした訴求では、顧客に対してなかなか響かないのです。このような市場環境においては、いかに「情緒的価値」を顧客に訴求できるかによって、売上を大きく左右するといえます。

情緒的価値はどのように考えれば良いのか

「情緒的価値」は「機能的価値」から派生させて考えます。「情緒的価値」と「機能的価値」を、完全に切り離してバラバラに考えるということはありません。具体的には、ペルソナ(自社の商品やサービスの対象となる理想の顧客像)に対して「機能的価値」を提供した際に、そのペルソナが「どのような良い気持ちになるか」というのを想像して、「情緒的価値」を考えていきます。

先ほどのABC社の遮光カーテンの例で考えてみましょう。「機能的価値」の観点からの訴求メッセージは、「どんなに明るい光でも完全に遮ることのできるのはABC社の遮光カーテンだけ。特許取得済みの独自の裏地特殊樹脂コーティング加工によって、抜群の遮光性を実現」でした。

では、この「機能的価値」から派生させて、「情緒的価値」を考えていきましょう。

  • 従来の遮光カーテンでは、完全に光を遮ることができなかった。
  • それが、ABC社の遮光カーテンなら、独自の技術で完全遮光できる。

ここまでが「機能的価値」です。

ここから、ペルソナを想定して、そのペルソナが「どのような良い気持ちになるか」を想像します。
例えば、一人暮らしの女性Aさんの場合を想定して考えてみると、以下のようになります。

  • 従来の遮光カーテンだと、明るさの軽減はできるものの、うっすらと室内の明かりが外に漏れてしまっていた。そのため、夜間に部屋にいるのかいないのかが外から見て分かってしまい、防犯上の観点から不安があった。
    ・・・これがペルソナの隠れた心理的な背景です。マーケティング用語で、「インサイト」とも言います。
  • そのような不安感が、ABC社の遮光カーテンなら解消できる。完全遮光によって、防犯上の不安から解放されて安心できる。
    ・・・これがABC社の遮光カーテンの「機能的価値」によって、Aさんが得ることのできる「気持ちの良さ」です。

つまり、この場合の「情緒的価値」は、
「ABC社の遮光カーテンなら、夜間の室内の明かりが外に漏れず、在宅中か留守中かが外の人にわかることが無くなり、防犯上安心」
になります。

では、工事現場の夜勤で働く男性Bさんの場合はどうでしょうか?

  • 従来の遮光カーテンだと、昼間の太陽の明るさは完全には遮れず、うっすらと外の光が室内に入ってきてしまっていた。そのため、薄明かりが気になって熟睡することができず、不快だった。
    ・・・これがインサイトです。

この場合の「情緒的価値」は、
「ABC社の遮光カーテンなら、日中の明るい太陽の日差しも完全にカットできるので、昼間でも快適に熟睡できる」になります。

これ以外にも、

  • 映画好きのCさんの場合は、「室内を完全に真っ暗にすることができるので、趣味のホームシアターを、より鮮明な高画質で楽しめる
  • 主婦のDさんの場合は、「遮光性の高さから、窓からの熱気や冷気を通しにくいので、室内の冷暖房効率をアップさせ、省エネ効果で家計に優しい
  • 小さい子供がいるEさんの場合は、「光以外に空気の振動も遮断できるので、室内の音漏れを軽減する効果があり、子供の話し声などの生活音が外に漏れることを防ぎ、ご近所トラブルを回避できる

・・・など、「遮光性が高い」という1つの「機能的価値」であっても、ペルソナによって「情緒的価値」はさまざまです。決して、1つの商品やサービスに対して、1つの「情緒的価値」しか無いという訳ではありません。

ペルソナのインサイトを深く掘り下げて考え、そこから「情緒的価値」を見つけ出していくということがポイントです。

こちらの記事でも、「機能的価値」から派生させて「情緒的価値」を考え、さらにその先の「訴求メッセージ」を出すという流れについて、具体的に解説しておりますので、ぜひご覧ください。
https://www.waca.or.jp/knowledge/57910/

情緒的価値を訴求しよう!

特に意識をせずに、自社の商品やサービスの訴求点を考えると、「うちの商品はこの機能が優れている!」「うちのサービスにはこんな特殊性がある!」など、どうしても「機能的価値」の観点からのメッセージが多くなりがちです。当然それも大切なことではありますが、残念ながらそれだけでは、なかなかお客様の心に刺さる訴求メッセージにはなりません。

ぜひ、ペルソナになりきって想像力を膨らませて、「この商品を使うと、どんな良い気持ちになるのか」ということを、徹底的に掘り下げて考えてみてください。この作業は、マネジメント層・営業部門・マーケティング部門・商品開発部門・お客様サポート部門・スタッフ部門など、自社内の全ての関係者を集めて、意見を出し合いながら進めることがオススメです。さまざまな観点からの意見をぶつけ合うことで、自部門だけでは思いつかないような、意外な「情緒的価値」を発見できるかもしれません。

そして、それらの「情緒的価値」を訴求したメッセージを、ウェブサイトや広告、チラシ、商品パッケージ、店頭POPなど、さまざまな顧客接点で活用してみてください。きっと、今まで以上に効果的な「刺さる」プロモーションが可能になり、商品・サービスの売上がさらに向上するはずです。

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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