カスタマージャーニーマップを作って、KPI設定をしてみよう!

こんにちは、ウェブ解析士マスターの伊村ミチルです。
東京都渋谷区の株式会社サンカクカンパニーの取締役として、主に日本の大手企業のデジタルマーケティング支援や研修を行っています。

「KPIはやっぱりUU(ユニークユーザー数)ですよね?」と言われて、「そうですね、、」ともやもやした気持ちで答えている方、いらっしゃいませんか?
カスタマージャーニーマップはなんとか書いたりしていますが、そこからKPIを導き出すということを、どうやって結びつけたらいいのか、とあらためて考えると、ウェブ解析士の方でもそこで止まってしまう方もいらっしゃいます。

今回は、カスタマージャーニーマップを作ったことがない方でも作れるように、事例をもとにご説明いたします。さらに、カスタマージャーニーマップから導き出される、ユーザーの気持ちや行動の変化に着目したKPIの設定方法についても、お話ししたいと思います。

目次

そもそも、カスタマージャーニーマップとは?

カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品やサービスにかかわる際の「認知、興味、関心・検討、行動(購入)、シェア」という工程を見える化したもののことです。

ユーザーの気持ちと行動を見える化することにより、どういう時に、どこで、ユーザーはその商品やサービスにふれあい、気持ちが変わって購入に至るかがわかりやすくなります。この行動の変化を「態度変容」という言い方をすることもあります。

ユーザーの態度変容がおこるポイントを明確にすることにより、購入に至る工程を想定通りに進んでいるかがわかるようになるのです。

この「ユーザーが態度変容をしたことがわかるポイント」を定量的に計測できれば、目標に向かって適切に進んでいるのか、それともうまくいっていないのか、わかりますよね。
それが、KPI(Key Performance Indicator=重要目標達成指標)を設定する、計測する、ということなのです。

KPIの数字が想定よりよくなかったら、理由を考えて、次の対策を考える、そして実装、実行する、というのがPDCAをまわすことそのものになります。

用語解説:KPIとは

KPIは、Key Performance Indicator=重要目標達成指標の略称です。
知らず知らずのうちに、みなさんも日々の生活でKPI設定をしていることもあるかと思います。

たとえば、ダイエットするために、毎日スクワットをしている方だとしたら

  • 目標:3か月で2kg減量
  • そのためにやること:毎日スクワットを30回
  • KPI:毎週のスクワット合計数

毎日予定通り、30回を7日間できれば、210回です。そうはいかない日もあったり、逆に気分がのって、50回くらいでた日もあるかもしれませんね。
毎週の、合計スクワット数を計測することで、目標に向かって進んでいるかがわかるので、これを重要目標達成指標=KPIとすることができます。

事例:フラワーショップのカスタマージャーニーマップを書いてみましょう

言葉の意味を見ただけでは、わかりにくいのがカスタマージャーニーマップやKPIなので、ここでフラワーショップを例に、カスタマージャーニーマップを書く工程を説明させていただきます。

クライアント(もしくは自社):フラワーショップ

このフラワーショップでは、フラワーギフトをECで販売しているかたわら、アレンジメント教室も行っていましたが、コロナ禍で教室の開催ができなくなりました。お花の売上も下がっている中、生徒さんからアレンジメントの材料を送ってほしいと頼まれて、手作りキットも販売スタートしようと考えました。

ターゲットユーザー(ペルソナ)とインサイト・バリュー(提供する価値)

ビジネス的な目標

新商品のアレンジメントキットを月商100万円販売する。

  • 客単価:材料費3,500円(ラッピング含む)+説明書代500円(説明動画閲覧パスつき)+送料1,000円=5,000円
  • 月間200個販売すると目標達成!
  • CVR 1% とすると、必要セッションは20,000セッション/月

カスタマージャーニーマップを書いて、KPIを設定してみましょう

カスタマージャーニーマップは、多少項目が違ったり、これが正解、というフォーマットがあるわけではないのですが、私がクライアントに提案したり、上級ウェブ解析士の講座で説明したりするときに使うものをベースにサンプルを作成しましたので、ごらんください。

フラワーアレンジメント教室(オンラインでECもスタート)のカスタマージャーニーマップ

※クリックすると拡大します

カスタマージャーニーマップの書き方 STEP BY STEP

  1. ユーザーの気持ちや行動をステージごとに記入
  2. ユーザーの気持ちや行動が変化するきっかけ(サイト上のどのページを見たら起こるか、もしなければどういう情報があればいいのか)をステージごとに記入
  3. これらの情報から、ユーザーが態度変容したという証明は、何で計測すればよいか、指標を決める(!これがKPI設定!)
  4. 上記で決めたメトリクスを計測できるように、必要に応じてGoogle Analytics(もしくは他の解析ツール)に設定
  5. 「行動」ステージにCV数を記入、「認知」ステージに必要セッション数を記入
  6. 「認知」から「検討」に進むまで、の各KPIに、まずは仮でよいので、数字を記入(ここは初回はわりとざっくりと記入したり、過去の数字から推測できるときはその数字をもとに記入します)
  7. 1か月後に、実際の数字とKPIの仮設定した数字がどの程度違うかにより、次の施策を検討

用語解説:カスタマージャーニーマップで使う用語

  • ステージ
    ユーザーが商品やサービスをについて、「認知、興味、関心・検討、行動(購入)、シェア」するひとつひとつの状態
  • チャネル
    バナー、ちらし、CM、等、ユーザーが商品やサービスを見つける媒体
  • タッチポイント
    チャネルを含む、ユーザーの行動
    たとえば、「バナーをみていいなと思う」や「サイトを見て、素材を確認する」等

ヒント:ステージをわかりやすくイメージするために

マーケティング用語としてよく出てくる、ユーザーの消費行動をモデルにした、AIDMA(アイドマ)、AISAS(アイサス)、SIPS(シップス)と結び付けて考えてもよいかと思います。

  • AIDMA(アイドマ):
    1920年代にアメリカの著作家、サミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された概念。
    ユーザーの購買決定プロセスを説明するためのフレームワークのひとつ。
  • AISAS(アイサス):
    2004年に電通が提唱した消費者行動のモデル。
    https://dentsu-ho.com/articles/3100
  • SIPS(シップス):
    2011年に電通「サトナオ・オープン・ラボ」が提唱した、ソーシャルメディアに対応した消費行動モデル
    https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2011009-0131.pdf
※クリックすると拡大します

カスタマージャーニーマップのステージとは

では、フラワーショップを例に、カスタマージャーニーマップのステージを考えてみましょう。

  1. 「認知」ステージ
    このステージの前を「認知前」として、明確にわけることもあります。ユーザーがそのサービスを知る(認知する)のはどういう気持ちで、何を見た、聞いた時でしょうか。
    フラワーショップの例ですと、お知らせのハガキやEメールを受け取ったユーザーがそれを見てフラワーショップがECを開いたことを「認知」したので、このことを「認知」ステージの各項目に記載していけばよいのです。
  2. 「興味」ステージ
    「興味」ステージでは、ユーザーはそのサービスを知って、どんなものかな、とゆるめに感じる状態、と考えるとよいかと思います。フラワーショップの例ですと、お知らせが来たフラワーショップのECだけではなく、その他のお花屋さん(類似商品)も見てみたり、認知が深まるような状態です。
  3. 「関心・検討」ステージ
    「関心・検討」ステージでは、よりそのサービスをよく知り、調べ、自分で使うとしたらどうだろう、という「検討」がスタートする段階と考えるとよいでしょう。「興味」と「関心・検討」は、かなり似ているのですが、「実際に自分で使うとしたら」とユーザーが考えている行動が始まったらこのステージ、と考えるとわかりやすいです。 フラワーショップの例だと、どのアレンジメントを買おうかな、と具体的に検討している段階がこれにあたります。他には、サービス購入にあたってのキャンセル規約を見るような行動も、このステージにあたります。
  4. 「行動(購入)」ステージ
    「行動(購入)」ステージでは、「関心・検討」ステージで自分がサービスを使ったら、ということを考えた後、実際に「行動(購入)」することを決意する段階のことを言います。フラワーショップの例では実際の購入になりますので、これはわかりやすいですよね。
  5. 「シェア」ステージ
    「シェア」はわかりやすいのではないでしょうか。サービスを利用して思わず知人に伝えたくなる、そしてSNSや口コミとして発信(シェア)する、というのが「シェア」ステージです。
    フラワーショップの例では、自分のインスタにアップしたり、家族に話したりすることが「シェア」となります。
    ここがきっかけとなって、また別のユーザーの「認知」がスタートするのです。

カスタマージャーニーを作るから見えてくる、KPIの設定方法

KPIは重要目標達成指標のことで、目標に向かって進んでいるかを調べる指標だとわかり、例もダイエットの時のスクワット回数みたいなもの、とわかったけれど、実際のカスタマージャーニーからどうやって導き出せばいいのか、となると悩んでしまう方もいらっしゃるかと思うので、フラワーショップを例に解説します。

KPIは、ユーザーがステージを移動したことが証明できること、を計測するのがポイントです。

例えば、フラワーショップの例ですと、ユーザーが「認知」したことを証明するためには、チャネルであるハガキのQRコードやEメールに記載してあるURLからショップ開設をお知らせするLPに流入したことが必要です。
ですので、LPへの流入数=セッション数がKPIになります。
フラワーショップのカスタマージャーニーマップでは
「参照元がハガキQRコードのLPセッション数」
「参照元がEメールのLPセッション数」

となっていますね。

そこまで見なくても、ハガキやEメールの告知の効果だから「セッション数」「UU数」「新規ユーザー数」を見て、増加していれば効果があったとわかるのでは、、と思うかもしれません。
それはそれで間違いではありませが、「セッション数」「UU数」「新規ユーザー数」だけですと、他の要因(例えばSNSで有名人がリツイートした等)で増加していることもあるので、このカスタマージャーニーマップで記載したユーザーの行動とは直接関係ない数字も含まれている可能性が出てきます。

カスタマージャーニーマップで記載した「必要なコンテンツ(これが施策になることが多い)」があることで、ユーザーがステップを移動した、ということを明確に計測できる指標がKPIになります。

もちろん、サイト全体の「セッション数」「UU数」「新規ユーザー数」等は全体像を把握するために計測しておく必要があります。
カスタマージャーニーマップを作成してKPIを設定するということは、施策の効果をより明確に評価することにつながるので、ぜひこの考え方でKPIを設定して、数字を取得して、PDCAをまわして、事業の発展に結びつけてください。

まとめ

カスタマージャーニーマップ、みなさんもご自身やクライアントのビジネスについて、まずは書いてみてください!

何をいれたらいいのか、悩むところも出てくると思いますが、そこはとりあえず、でいいので何か記入してみて、それをもとに、仲間のどなたかとディスカッションしてみることをお勧めします。

あなたがうまく埋められなかったところは、みなさんも悩むところだったりするところで、そこについてディスカッションすることから、ビジネスの解決ヒントがみつかったりもするのです。

カスタマージャーニーマップがだいたい埋まったら、ユーザーの気持ちの変化を証明する数字は何かな、と考えながら、KPIも記入してみましょう。KPIの数字を、毎月見ていると、だんだん数字に慣れてくると思います。

ある程度数字が見えてくると、もう少しこういうことを知りたいな、ということが出てくることが多いので、その数字はどんなユーザーの気持ち、行動があらわれているのか、を考えながら、数字を取ってみるようにしましょう。

アクセス解析の数字を見ることは、ユーザーの気持ちと行動の変化を見ることです。
数字を見ていると、ユーザーの気持ちが見えてくるようになると思います。ユーザーの気持ちが見えてきたら、それに応える情報やサービスを追加したり、改善していくことが、事業の発展につながります。

カスタマージャーニーマップにも、KPIにも、正解があるわけではありません。
一歩踏み出して、まずは数字をみて、改善を繰り返すこと。

この記事を読んで、ちょっとやってみようかな!と思っていただいたらとてもうれしいです。

さいごに…いつも私がやっていること

上級ウェブ解析士講座では、ここでご紹介したカスタマージャーニーマップやKPI設定の方法も、ウェブ解析士協会のサイトのGoogle アナリティクスを見ながら実際に手を動かして一緒に作ってみることを体験できます。

この記事では紹介できなかった、細やかな数字の見方や、Google アナリティクスの設定の仕方、自社サイトではどういうKPI設定が適切なのか、クライアントにはどう説明したらいいのか、などについてもご相談にのることもありますので、ご興味ある方はぜひ、チャレンジしてみてください!

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

株式会社サンカクカンパニー 2006年~ 2016年より同社取締役
アクセンチュア出身 一橋大学 法学部卒業

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