皆さんこんにちは、新潟の上級ウェブ解析士の杉山です。普段はインハウスでウェブマーケティング関連の仕事をしています。
今回は2021年7月3日(土)に開催された「第2回 Open Analytics Hack in Niigata」にスタッフとして参加しましたので、そのレポートをお届けします。
この記事を読んでくださっている皆さんの中には、ウェブ解析に仕事として携わっている方も多いと思いますが、他のウェブ解析士がどういう手法で、どういった考え方で、データと向き合っているか気になる方は多いのではないでしょうか。
また、そもそもウェブ解析に興味があるのだけど、実際の業務内容としてはどういったものか分からない……そんな方もいらっしゃるかと思います。
どちらかに当てはまった方にこのレポートでウェブ解析の楽しさがちょっとでも伝わると嬉しいです。
Open Analytics Hack(OAH)とは
まずは、Open Analytics Hack(OAH)についてご紹介します。OAHは普段なら一人もしくは少人数で、クライアントや自社のサイトを分析している方々が参加者となり、実際の企業のデータを公開いただいて、参加者同士でウェブ解析をする「ライブ解析」イベントです。
株式会社クリエイターズネクストの窪田望さん(ウェブ解析士マスター)、b.mode株式会社の三浦哲志さん(ウェブ解析士マスター)、GVA TECH株式会社の小室吉隆さん(上級ウェブ解析士)と、ウェブ解析士界隈では名の知れたお三方が、「ウェブ解析士をカッコいいと思ってもらいたい」「ウェブ解析を民主化したい」「ウェブ解析の魅力や楽しさ、面白さをもっと広く知ってもらいたい」という想いではじめたイベントで、2019年11月16日(土)株式会社メンバーズさんのウェブガーデン仙台を会場に、第1回が行われました。(レポート記事はこちら)
そこから少し時間は空いてしまいましたが、去る2021年7月3日(土)に「第2回 Open Analytics Hack in Niigata」が開催されました。
OAH in Niigata 第1部:Google Analytics 4 登場!実務担当者が知っておきたいチェックポイント
OAHは、ライブ解析の前に、ウェブ解析に関する最新情報の共有があります。今回は窪田さんによる、ウェブ解析において大きな変化であるGoogle Analytics 4(GA4)についての紹介でした。
Google Analytics(GA)の歴史
2020年10月にGoogle Analytics 4プロパティが正式にリリースされました。自分自身もGAを使っていて「GAはGA」と思っていたので、いきなり「4」と言われてもピンと来ていませんでした。そもそも世代自体を気にしていなかったもので……。
窪田さんの話によると、これまでのGoogle Analyticsには以下の世代があるそうです。
- 初代:2005年GoolgeがUrchin.jsを買収
- 第2世代:ga.js → イベントトラッキングの概念が初登場
- 第3世代:analytics.js → クロスドメイントラッキングが可能になった
そして、第4世代であるGoogle Analytics 4の主なポイントは以下の3つとのことです。
- GDPRに対応
- ウェブとアプリの統合分析
- 機械学習の対応
つまり、世の中の規則や新しいデバイスの登場によりユーザーの行動が変わり、それに対応する形でGAも進化をしてきているとのことでした。
GDPRとGA4
続いて、GDPR(EUデータ保護規則)とGoogle Analytics 4の関係性について説明がありました。
まず、GDPRはなぜ作られたのでしょうか?
GDPRを覇権戦争の観点で見ると、GAFAMの時価総額は約560兆円。それに対し、日本の東証一部上場企業を全部合わせても約550兆円。日本はルールの中で頑張る傾向があるが、ヨーロッパはルールそのものを変えていくことが多い。どちらがいいという訳ではなく、そもそもの考え方が違っているので戦い方が違っている。
そんなヨーロッパに対してアメリカはイノベーションで戦う傾向で、GDPRによって消えてしまうデータを機械学習を導入することで対処している。その流れで Google Analytics 4が生まれたとのことです。
GA4が今までのGoogle Analyticsと特に違っている点、そして、GA4になって変わった点についての紹介がありました。以下にポイントを抜粋します。
CVの設定が大変
イベントを設定してからコンバージョンを設定する設定する。「新しいコンバージョンイベント」からコンバージョン名を設定して、「コンバージョンとしてマークをする」を設定してようやく設定できる。
デフォルトだとデータの保持期間が短い
何も設定しないと「2ヶ月」になっているので、設定を「14ヶ月」に修正しておいた方がいい。
直帰率が無くなった
直帰率という概念では「つまらなくてすぐに離脱した」「感動して満足して閉じる」といったユーザー行動が判断しにくく、こういった行動が増えたので直帰率という項目自体が無くなった。その他にも、アプリにはURLが無かったり、動画の視聴時間等も取りにくく、直帰として扱ってしまうと正確にユーザーの行動として判断できなくなってしまう傾向にある。
その代わり、今までデフォルトでは無かった、「スクロールが90%まで進んだか」「動画をどのくらい見てくれるか」など、ユーザーのコンテンツ満足度が推測できるような行動が追いかけやすくなっている。
そういった所からも「直帰率」に代わり「エンゲージメント」が重要になってきていると言える。
エンゲージメントとは、
- 10秒以上の滞在
- 2個以上のイベント
- CVイベント発生
を意味している。
生データをエクスポートできる
今までのGAはダッシュボードで、用意されたものを見ていくことしかできなかったが、これからはデータそのものと向き合う時代、自社の持っている顧客データや売上データと紐付けて、お客様を解析によっておもてなししていける。
「これからは、データそのものと向き合う事が大切な自体になっていく」とのことでした。
GA4のまとめ
GDPRが作られたきっかけなどもありますが、追加されている機能などからGoogle Analyticsはあくまでも「ユーザー」のオンラインの体験を向上するためのものになってきている印象です。
窪田さんからは下記のようなメッセージで締めくくりがありました。
「GA4になり、ユーザーの解析を出来る可能性は広がった。ただし、ウェブ解析士が真にユーザーの気持ちを思い、まだ見ぬその人の人生に寄りそう気持ちを忘れてはいけない、という原理原則の重要性は高まっています」
そして最後に、ウェブ解析の考え方について、窪田さんの一言が胸に刺さります。
OAH in Niigata 第2部:Open Analytics Hack
OAH第二部は参加者同士でのライブ解析です。
モデレーターは小室さん。事前に今回の分析対象企業(某小売店)にヒアリングをしてあり、小室さんがその企業の担当者という設定のもとで、参加者=ウェブ解析士にむけてオリエンテーションしたり、Google Analytics の画面を操作したり、KOBITで作成した前月分のレポートを参加者と共有した上で、参加者全員で企業サイトをライブ解析し、時間内に改善提案をまとめるところまで進めていきます。
なお、今回はウェブ解析を広く知って欲しいと、新潟の学校にも事前にアプローチをしたところ、学生さんからの参加申込があり、オフラインで参加してくれました。
ちなみにOAHは、
- オリエンテーション
- グループディスカッション
- プレゼンテーション
という3つのパートで進みます。
1.オリエンテーション
クライアントからのご相談として、「サイトをどうしたい」というオーダーがあり、それを軸に、GAのデータを閲覧し、KOBITのレポートを読み合わせ、参加者から質疑応答を受け付けます。
データをご提供いただいたクライアントからは許可を頂いているので、少しKOBITのレポートをお見せすると、以下のようなデータをまずはみんなで読み合わせます。
こんな感じで出てきたKOBITのレポートを元に、参加者同士で改善提案を出していく流れです。
2.グループディスカッション
今回はオフライン、オンラインのハイブリッド開催でした。オフライン組は1チーム、オンライン組は2チームに分かれて、グループごとに解析を行います。
オフラインは開催地の新潟からの参加者の方々(学生さん2名含む)だったのですが、オンラインは全国各地から参加いただきました。
ちなみに自分の参加チームは仙台、東京、沖縄、兵庫からの参加者が集まっていましたが、こういったこともオンラインならではですね。
各チームとも盛り上がっている様子でしたが、場所もバックグランドも違う方々との解析も、思わぬ視点での指摘があったりして、非常に勉強になりました。
3.プレゼンテーション
OAHの最後は、グループごとに解析結果をプレゼンテーションします。
短い時間でしたが、チームによってはペルソナまで作って分析していました。
改善提案もさることながら、参加者の方々がサイトを触って得た「気づき」はそれだけでも参考になることが多々ありました。
いくつか気づきを紹介すると、
- 商品一覧ページの見積もり比較コンテンツがあった方がいい
- meta description の設定がない気がする(SEO)
- 店長の顔写真だったり、サービスについての思いなどを書く
- お店のSNSを作って掲載させる
- サイトのイメージが固くて業者っぽい。
- オーガニックからのCVが高いので、この辺りを細かく見てみたい。
- 直接流入=お気に入りをたたいてくる人はリピーターだと思う。何度も来ている。
などなど、指摘事項は想像以上に多く出てきました。
改善提案としては、
- サイトのリニューアル
- トップページのデザイン修正
- チャットボットの導入
- ARの導入
など、実際にウェブ解析の実務に関わっているプロからのリアルな改善提案から、全くウェブ解析を知らなかった学生さんのユーザー視点での改善提案も出てきて、解析→改善提案と一人(もしくは少人数)では得られない気づきもあり、非常に新鮮な体験でした。
当日は、にいがた経済新聞社の記者も来場され、記事になりました。(ちょっとOAHのニュアンスが違うかもですが…苦笑)
次のOAHに向けて
複数の人数で同時に企業のデータを分析するイベントはなかなか無いと思います。ハイブリッドならではの難しさも多々ありましたが、オフラインの会場では現地ならではの空気感と参加者の方々の地元企業に対する視点、オンラインでは多彩なバックグラウンドの方による多様な視点があり、非常に濃密な時間だったと思います。
仙台、新潟と開催されたOAH、このまま全国各地につながっていくと、ウェブ解析の魅力や面白さ、ウェブ解析士のカッコよさも広がっていくのではないかと思います。
興味がある方はぜひOAHのコアメンバー(GVA TECH株式会社の小室吉隆さん、株式会社クリエイターズネクストの窪田望さん、b.mode株式会社の三浦哲志さん)に声をかけてみてくださいね!