事業者や集客担当のみなさま、こんにちは。
上級ウェブ解析士の三村大輝です。
私の職種はマーケティングコンサルタントであり、中小企業300社以上に対して集客戦略の組立てや見直しを行ってきました。
そんな私がコンサルティングの第1回目で必ず話す内容をまとめてみました。
対象者
- 集客を強化したいが何から着手していいかわからない方
- 今の集客戦略が正しいのかわからない方
内容
- 集客手段の種類と特徴
- 集客のために知るべきマーケティング分析と手順
集客とマーケティングの定義
“集客”とは顧客を集める行動です。
“マーケティング”とは市場(マーケット)から派生しており、市場を作ったり拡大したりする活動です。
すなわち、マーケティング活動は、下記のような企業活動のほとんどが含まれます。
マーケティング活動
- 市場調査
- コンセプト開発
- 商品開発
- 集客(プロモーション)
- CRM (Customer Relationship Magement:顧客関係管理)
- アフターフォロー etc.
このように“集客”はマーケティングの一部なのです。
集客の流れ
- リード獲得
- クロージング
リード獲得ではさまざまな集客チャネルにて顧客と接触し、連絡先や予約、問合せなどを獲得します。
その後、クロージングにて営業担当や店舗スタッフが購入まで導く(反響営業)という工程になっています。
※ECの場合は直接購入に至ります。
集客チャネルの種類
- 新規営業
- 紹介
- 卸売り
- 自然流入
- オンライン広告
- オフライン広告
これらの特徴を把握することで適切な施策を選択することができます。
下記4項目で評価していきます。
費用 :掛かる費用
工数 :掛かる工数
CVR :注文率
LTV :1顧客からの売上額
1.新規営業
訪問やマッチングサービス、交流会参加、テレアポ、メール、問合せフォームなどでこちらから接触を図る集客手段です。
人脈に繋がるため、信頼獲得できればクロスセルや仲介などが狙えます。
小規模事業者などリソースが限られる場合は広告による利益減額は避けるべきであり、まずこの集客手段から実施すべきです。
そして、数を増やすよりもLTVを高める施策が有効です。
費用 :交通費、参加費、交際費など
工数 :コミュニケーション、資料作成
CVR :1to1までいけば高い
LTV :営業担当の印象次第だが高い傾向にある
2.紹介
1.新規営業で獲得した人脈や既存顧客、知人、代理店、営業代行、アフィリエイターなどから紹介いただくという集客手段です。
質の良いサービスを提供しているだけでも紹介は集まりますし、紹介料を用意すればより多く集まります。
黒字でリスクなく販売できるメリットはありますが、売れる見込みがないと判断されると取り扱ってもらえません。
費用 :紹介料
工数 :人脈拡大、ASP登録、代理店契約
CVR :既に信頼関係があるため高い
LTV :紹介のため解約しづらく高い傾向にある
3.卸売り
メーカーからEC業者や小売店舗へ商品を定価の60%などで販売する売り方です。
この場合、エンドユーザーの集客は卸先に委ねられるため、利益を削る代わりに工数が削減でき、かつ黒字でリスクなく売ることができます。
費用 :値引き
工数 :卸先開拓、ブランディング
CVR :卸先による
LTV :売れれば継続する
4.自然流入
SNSやウェブ検索、マップ検索などから自然に流入させる集客方法です。
SNSであればフォロワー数の増加が、ウェブ検索であればSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)やMEO(Map Engine Optimization(マップエンジン最適化)が必須施策です。
広告と異なり実施してから効果が出るまでに時間がかかりますが、育ってしまえば資産となりストック的に集客できます。
費用 :無料
工数 :毎日発生
CVR :既に購入意向があるため高い
LTV :広告よりは高い傾向にある
5.オンライン広告
検索広告やディスプレイ広告、SNS広告などから自社サイトへのアクセスを促す集客手段です。
ターゲット機能や予算コントロールにより必要最低限の費用で実施でき、効果計測までできるため、新規営業と同時に実施したい施策です。
注意点として、広告からのリンク先ページは導線が煩雑なコーポレートページよりも、縦長で訴求の強いセールスページを使うことをオススメします。
費用 :広告費、運用外注費
工数 :操作方法習得、広告作成
CVR :低いが広告費も安いためCPA(顧客獲得単価)は抑えられる
LTV :他の施策よりも安い傾向にある
6.オフライン広告
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、看板、サイネージなど有形の広告媒体による集客手段です。
反応を得るためのレスポンス広告とは異なり、認知やブランディングのための広告です。
クリックのみで注文まで進めるオンライン広告とは異なり、電話番号の手打ちやQRコード読込みなど障壁が多く難易度の高い広告です。
ただし、信頼性を得ることができるため、実績のために使うならば有効です。
例外として、高齢者をターゲットとする場合はオフライン広告のレスポンスは他の広告媒体よりも優位となることがあります。
費用 :広告費、デザイン費、撮影費
工数 :依頼、効果計測
CVR :注文は取りづらいが認知拡大できる
LTV :信頼できる媒体なら高い傾向にある
クロージングの種類
上記6種のいずれかのチャネルから初回接触を達成したのち、購入や契約まで進めるクロージング手段も複数存在します。
- アポイントメント
- ステップ配信
- セミナー
1.アポイントメント
営業担当から先方へアポを取り、対面やオンラインでの商談によりクロージングを行います。
営業先に当事者感覚を与えるためCVRは高くなります。法人営業に向いています。
2.ステップ配信
メルマガやLINE公式アカウントに登録いただき、そこから1週間から1ヶ月ほど掛けて教育とクロージングのメッセージを配信します。
態度変容まで時間を要する高額商材や個人営業に向いています。
ここからアポやセミナーに誘導するフローもあります。
3.セミナー
セミナーを開催し、情報提供しながら自社商品購入を促すクロージング手段です。
関係性として、先生の立場からアプローチできるため成約率がかなり高い傾向にあります。
また、学習意欲のある顧客が集まるため案件開始後もアップセルやクロスセルが期待できます。
組み合わせの例
このように、集客チャネルとクロージングを分類しましたが、組み合わせは無限大なため、例としていくつか紹介したいと思います。
例1.情報商材
集客チャネル :自身のYoutTube動画での無料相談会の参加者募集
クロージング1 :無料相談会「あなたが稼ぐために学ぶべきスキルは?」
クロージング2 :その場で購入に至らなかった参加者にLINE公式アカウントを登録させステップ配信
例2.不動産販売
集客チャネル :Instagram広告によるプレゼントキャンペーン
クロージング1 :LINE公式アカウントに登録することでPDF「絶対に失敗しない不動産の選び方」プレゼント
クロージング2 :ステップ配信にて来店促進し、来店にてクロージング
事前分析①ターゲット
ここまで集客手段について記述しましたが、集客とは飽くまで「人に商品を知ってもらうこと」です。ターゲットが間違っていれば集客も無意味になります。
それらを見直す意味で分析が必要です。
ぜひ以降の分析を順番に行ってみてください。
※フレームワークは文献や記事も多いため、以降この記事での説明は控えます。検索しながらご活用ください。
ペルソナ
顧客像を明確に定義することで、戦略に一貫性を持たせ、チーム内で共通認識にすることができるフレームワークです。
カスタマージャーニー
ペルソナが自社商品を購入するまでの商品との接触と感情の変化を追うフレームワークです。
考える際に参考となるのがAIDMAやAISASなどの集客モデルです。
これにより顧客が自社商品を購入するために必要な施策が見えてきます。
集客ファネル
最後に優先順位を決めるべく集客ファネルを考えます。
顧客が商品を知り、興味を持ち、購入するまでの流れと対象者数を表しています。
横幅が対象者の数であり、下に行くほど購入に近づきます。
もしあなたが誰か一人だけ営業できるとしたらどの層にアプローチしますか?
答えは明白であり「比較検討層」です。
このように、集客する際は集客ファネルの下からアプローチしていきます。
事前分析②事業戦略
集客とは事業戦略というベースのうえに成り立ちます。
事業戦略の目的は、「勝てる戦場を選んで戦うこと」です。
これができていないと、いかに優れた集客戦略でも他社と競合してしまい、価格競争や広告合戦に巻き込まれます。
やり方は以下の3STEPです。
STEP.1 環境分析
集客戦略を考えるためにまず自社が戦うフィールドを理解する必要があります。
南国でダウンジャケットは売れないからです。
フレームワーク
- PEST分析 :政治、経済、社会、技術
- VC分析 :価値、希少性、模倣可能性、組織
- 5F分析 :脅威(新規参入、代替品)、交渉力(売り手、買い手)
- 3C分析 :顧客、競合、自社
- SWOT分析 :内部(強みと弱み)、外部(脅威と機会)
STEP.2 戦略立案
次に戦略を決めますが大事なのは「戦わないこと」です。
そのためには競合のいない戦場(ブルーオーシャン)を探していきます。
フレームワーク
- Segmentation :セグメンテーション
- Targeting :ターゲティング
- Positioning :ポジショニング
これらをSTP戦略といいます。
STEP.3 施策立案
これまでの分析と戦略から施策に落とし込んでいきます。
フレームワーク
- マーケティングミックス(4P) :製品、価格、流通、コミュニケーション
これにより事業戦略を理解することができました。
これを元に集客戦略との整合性に問題がないか判断しましょう。
失敗要因
集客戦略や事業戦略が正しかったとしても失敗することがあります。
それは商品満足度が低い、リピート率が低い、返品率が高い結果であり、要因はC/Pバランスです。
C/P(コンセプトとパフォーマンス)のバランスが良くなければ商品は長続きしません。
コンセプトとは「買いたいと思わせる力」であり、パフォーマンスとは「商品満足度=リピートしたいと思わせる力」です。コンセプトが優れていると、集客施策が成功しやすくなり拡大が容易になります。
パフォーマンスが優れていると、紹介やリピートが発生し、集客施策を継続しなくても商品が売れていきます。
どちらか一方が偏っている状態をC/Pバランスが悪いという言い方をしますが、これは致命的です。
コンセプトが強い場合は満足度が低くなり、パフォーマンスが強い場合は集客に苦戦します。
例①誇大広告
例えば、化粧品を売りたいがために「これを使えば肌が10歳若く見えます!」なんてコンセプトで販売したとします。
すると、コンセプトが強いため注文は増えると思われますが、パフォーマンスとして実際に使ってそれを実感するのは難しく、返品やクレームが殺到し、最悪の場合は消費者センターや公正取引委員会による行政処分をうけます。
例②タワシ販売
では、C/Pは商品開発時に決まったものでしか訴求できないのでしょうか?
そんなことはありません。
営業研修にてタワシを1,000円で売るワークがあります。
これはC/Pのない商品でも営業の力で売るという訓練です。
タワシを欲しいと思う人はいませんし、使い道もあまりありません。
よって、商材としては最高難易度となり、良い練習になるというものです。
では、どのように売るのでしょうか?
実際は売られる側も、営業が本気でタワシを売り込んでいるとは思わず、研修であることを見抜きます。
あるいは営業の口から状況説明を受けるでしょう。
これにより、売られる側はタワシが欲しいか否かではなく、寄付をするか否かという選択になります。
新人営業の努力に応えて購入すれば、自己肯定感があがるというコンセプトができあがりました。
また、パフォーマンスとしても、商品を見るたびにこのエピソード思い出すという付加価値が増えています。
売り方によってC/Pはいくらでも付与することができます。
これが集客の楽しさでもあります。
まとめ
この記事では集客の全体像と流れを説明しました。
これにより最適な集客戦略を選択いただければ幸いです。
しかし、集客は奥が深く、態度変容(購入したいと思わせる)にはコピーライティングやクリエイティブの要因も大きいため、売るためにはこの記事だけでは不十分です。
ご自身で今後も考える必要があります。
しかしそれは難しいことではなく、注意点はたった一つ「顧客の立場で考える」ことです。
自身の施策を顧客側から判断し、「これなら買いたいと思える」という集客をしていきましょう。