ナーチャリング(顧客育成)とは?メリット・デメリット、代表的な方法を解説

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

あなたは、「ナーチャリング」という言葉を聞いたことがありますか?

ナーチャリングとは、「顧客育成」という意味で使われるマーケティング用語で、昨今のビジネスにおいて注目度が高まっています。

この記事では、そんなナーチャリングの定義や、注目される背景、メリット・デメリット、そして代表的な方法について解説いたします。
顧客との信頼関係を深め、ビジネスの成果を最大化するためのヒントとして、ぜひご一読ください。

目次

ナーチャリング(顧客育成)とは

ナーチャリングとは、「顧客育成」という意味で使われるマーケティング用語です。
ビジネスにおいては、顧客との短期的な取引の成立だけではなく、長期的な信頼関係を構築し、自社の商品やサービスのファンになってもらうような関係を維持することが大切です。そのための手法が「ナーチャリング」です。

ナーチャリングにおいては、顧客とのコミュニケーションを通じて、彼らのニーズや関心を理解し、そのニーズに応えることを最重要に考えます。単純に「商品が売れた」ということを目指すのではなく、情報提供やサポートを通じて、顧客との信頼関係を深め、関係性を構築するように努めます。短期的に「売れた」「売れない」で判断するのではなく、長期的な視野を持ってビジネスを推進する姿勢が重要です。顧客が一度だけの取引で終わらず、長期的な関係を築くことを目指します。

ナーチャリングには時間と労力が必要ですが、長期的な視点で見た場合に、ビジネスにプラスの効果をもたらします。顧客がその企業や、商品やサービスを信頼し、ファンになり、継続的な取引が生まれることで、LTV(※)の向上につながります。
※LTVに関しては、以前の記事もご参照ください。

なぜナーチャリングが着目されているのか

昨今、ビジネスにおいて、ナーチャリングが注目されていますが、その理由は何でしょうか?

まず第一に、顧客の購買行動が変化していることが挙げられます。インターネットが普及する以前は、テレビCMや雑誌広告などのマスメディアによる広告やプロモーションによって顧客の興味関心をひきつけることが主流でした。しかし、インターネットが普及し、「顧客が自分で調べる時代」になった昨今においては、顧客は自ら情報を検索し、検討し、購買の意思決定を進めていきます。そのため、売上を最大化するためには、企業側からの一方的なプロモーションだけではなく、顧客との信頼関係を育て、「選ばれる」企業、「選ばれる」商品やサービスになることが、企業にとって必要不可欠になっています。

また、商品やサービスが世の中に溢れ、競争が激化している昨今の市場環境において、顧客が同じような数多くの商品・サービスの中から選ぶ際に、そのもの自体の品質や価格だけではなく、その企業が顧客に発信している情報の内容やブランドイメージなど、より「関係性」というものが重要になってきているということも挙げられます。

さらに、デジタルテクノロジーの進化により、企業と顧客のコミュニケーションがより密接になっているという時代背景もあります。ソーシャルメディアやメールマーケティングなどを活用することで、企業は顧客との接点を増やし、関係を深めることがやりやすくなっています。顧客をマスで捉えて一斉配信的にプロモーションをするのではなく、顧客一人一人のニーズや好みに合わせて個別化されたコミュニケーションをとるようなことも、テクノロジーの進化によって実現がしやすくなっています。

以上のような背景があり、昨今は、ナーチャリングへの注目度が高まっています。

ナーチャリングのメリット、デメリット

ナーチャリングの代表的なメリットとデメリットについて、いくつかピックアップしてご紹介します。

メリット

長期的なビジネス機会の創出

顧客との関係性を「売れた」「売れない」という一回限りの取引関係に終わらせずに、長期的な関係を構築することができます。顧客との信頼関係が醸成されることで、継続的にビジネスにプラスの効果がもたらされます。

顧客のニーズに合った商品開発が可能になる

ナーチャリングの活動を通じて顧客とコミュニケーションを取ることで、顧客のニーズや好みを把握し、それに合った商品やサービスを開発したり、改善を実施したりすることができるようになります。結果として、顧客満足度のさらなる向上につながっていきます。

口コミや推薦による新規見込顧客獲得の後押し

自社のファンになってくれた顧客は、様々なシーンにおいて、良い口コミや推薦を実施してくれる可能性が高まります。これにより新規見込顧客の獲得にもプラスの効果が発生します。

デメリット

時間や労力がかかる

単純な広告などとは異なり、ナーチャリングにおいては、顧客の役に立つための様々な情報(コンテンツ)を用意し、それを丁寧に届けていく必要があります。それなりの時間や労力を要する活動のため、人員やリソースが限られる中で、いかにして社内で実行体制を作っていくかが鍵になります。

成果が計測しづらい

ナーチャリングの成果は、直接的な売上の増加といった数値だけで測れる訳ではありません。「顧客との信頼関係が醸成されてきている」「ファンが増えている」というのを、定量的に計測がしづらいという側面があります。

顧客の離反リスクがある

ナーチャリングにおいては、積極的に顧客に情報を届けたりコミュニケーションを実施することになりますが、その情報の質が悪いと、逆効果として顧客の離反につながります。顧客とのコミュニケーションの内容を丁寧に考えて戦略的に設計する必要があります。

代表的なナーチャリングの方法

ナーチャリングの具体的な方法として、いくつか代表的な施策をご紹介します。

メルマガの配信

メルマガを活用して、顧客に定期的に情報を届けます。例えば、新商品やサービスに関する情報提供、セールやキャンペーンの案内、コラムコンテンツなどのお役立ち情報の送付、専用の割引コードの提供などが挙げられます。顧客にとって価値のあるコンテンツを提供することで、信頼関係を醸成します。

ソーシャルメディアの活用

Facebook、Instagram、Xなどのソーシャルメディアを活用して、顧客とのコミュニケーションを促進します。定期的な投稿や質問への返信、顧客の投稿へのコメントなどを通じて、顧客との関係性を築いていきます。

DM(ダイレクトメール)の配送

ダイレクトメールは、個々の顧客に直接送られる郵送物や印刷物のことです。例えば、新商品やサービスの紹介、特別なイベントの案内、割引クーポンの提供などが挙げられます。オンラインでの接点と比較すると、手に取れる「現物」として装飾やデザインなどの表現の幅が大きいというメリットはありつつ、印刷コストや郵送コストがかかるというデメリットもあります。

自社ウェブサイト上でのコンテンツ発信

自社ウェブサイトは、顧客との関係性強化やデータ収集のための重要な接点の一つです。例えば、顧客がウェブサイト上で閲覧や登録・購買などを行った情報を収集し、顧客の好みなどを分析することが可能になります。また、ウェブ接客ツール(※)などを活用すれば、それらのデータを活かして、閲覧者にパーソナライズされたコンテンツを表示することで、顧客の興味関心を高めるようなことも可能です。
※ウェブ接客ツールに関しては、以前の記事もご参照ください。

イベントやセミナーの開催

顧客にとって有益な情報を提供するために、定期的にイベントやセミナーを開催します。顧客が直接参加し、企業との関係をより深める機会となります。

ナーチャリングにおいて最も重要なことは顧客理解

ナーチャリングとは、「顧客との信頼関係を築き、育てる」という行為です。そこで最も重要になることは、「顧客を理解すること」です。
ここでは、そんな「顧客理解」をするための方法をいくつかご紹介します。

カスタマージャーニーマップの作成

以前の記事でもご紹介しましたが、「カスタマージャーニーマップの作成」は、顧客理解をするための有用の方法の一つです。
ターゲットとなる顧客像(ペルソナ)を設定し、その顧客像が商品やサービスが必要となるニーズの発生から認知、購入、その後の継続利用に至るまでの一連のプロセスを時系列順に整理します。そして、それぞれのプロセスの中での行動や思考を想像してまとめていくことで、顧客のニーズやマーケティング上の課題を見つけることができます。

ユーザーインタビュー(定性調査)

商品やサービスに対する意見を顧客から直接ヒアリングをする、ユーザーインタビュー(定性調査)も、顧客理解には有用です。顧客一人一人のニーズや問題点などを深掘りし、ひとつの事例から深い洞察を得ることができます。

アンケート(定量調査)

大量の顧客に対してアンケート(定量調査)を実施することで、よりマクロな視点で顧客を捉えることができるようになります。自社で保有する顧客リストを対象にアンケートを実施する場合と、調査会社に対象の収集とアンケートの実施を委託する場合があります。定量的にユーザーの声を把握できるという特徴がある一方で、一人一人を深掘りして深くインサイトを掴むようなことはしづらいという側面もあります。

データ分析

自社で保有する顧客の属性データや購買データといった膨大なデータに基づいて、ファクトを基に顧客像を捉える方法です。マーケティング担当者の勘や経験などの主観によらず、客観的に判断をすることができます。

さいごに

いかがでしたでしょうか?
今回は、ナーチャリングの定義から、そのメリット・デメリット、そして代表的な方法について解説しました。

ナーチャリング(顧客育成)は、一朝一夕ですぐに効果が出るようなものではなく、決して一筋縄ではいかないものではありますが、昨今のビジネスにおいて欠かせない重要な戦略です。顧客との関係性を重視し、長期的な視点でビジネスを展開することで、持続的な成果を生み出すことができます。
あなたもナーチャリングの力を活用して、顧客との長期的な信頼関係を築いていきましょう。きっとビジネスにプラスの効果をもたらすはずです!

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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