インタビュー記事執筆は生成AIに丸投げできる? claude 3とライターが力比べしてみた

(執筆:ウェブ解析士 ふじねまゆこ 監修:ウェブ解析士マスター 八木暁史)

ライター、コンテンツクリエイターのみなさん、生成AIを活用していますか?

こんにちは!インタビューライターのふじねまゆこです。
ウェブ解析士インタビューの取材・執筆を担当しています。

今回は、コンテンツ制作の現場を揺るがす生成AIに、インタビュー記事作成を丸投げできるのか……。
質、スピードも人間を超えたと言われる生成AIに、これまでのインタビューライティングは通用するのかをガチで力比べをしてみました!

目次

執筆ルール

記事作成を丸投げするにあたり、ウェブ解析士インタビューの執筆工程に沿って出力してもらいます。いつもどおり取材・執筆する「通常版」は私が執筆しました。

作業工程のおさらい

通常、ウェブ解析士インタビューは以下の流れで行われます。

①アポ取り
②質問を作る
③取材
④文字起こし
⑤執筆
⑥校正・推敲

そのなかで、AIに丸投げするのは②質問を作る、③取材、⑤執筆です。

※③インタビューは、②で作った質問文をライターが読み上げ、八木さんに回答していただく形を取りました。生成AIは会話ができません。

※⑤文字起こしはAI書き起こしツール「notta」を利用しました。これがないと作業時間が何倍にも膨れ上がってしまうほど業務に欠かせないツールです。

取材先:注目のウェブ解析士マスター、八木暁史さん

今回は、ウェブ解析士協会の地域DX支援事業「Digitable Town(デジタブルタウン)の一環で、香川県東かがわ市のご当地ゲーム「Glove Story(グローブストーリー)」を企画・開発した、ウェブ解析士マスターの八木さんにご協力いただきました。

スマホ用RPGゲームを一人で開発された八木さん。プロジェクトチームによる広報活動・SNSコミュニケーションが功を奏し、東かがわ市に関わる方々だけでなく、大手ゲームメディア、テレビ、新聞などマスメディアの注目を集めました。とてもワクワクする取材です。

使用した生成AI:Claude 3

Claude 3は、コンテンツ制作界隈で一時期、「GPT-4を超える」と注目が集まった大規模言語モデル(LLM)。今回は、提供されている3つのモデル(Haiku、Sonnet、Opus)のうち、最も性能が良いとされるOpusを利用しました。

Claude:https://claude.ai/

対戦相手:インタビューライター ふじねまゆこ

ライター歴4年。2020年よりウェブ解析士インタビューの取材・執筆に参加して以降、ライターとして各種コンテンツ制作に携わる。12歳からインターネットに親しむデジタルネイティブ世代。

生成・執筆した記事がこちら!

結果を先にお伝えするとこんな感じです。
生成AIの記事、ほとんど違和感ないですね。

生成AI版

https://www.waca.associates/jp/feedback/wac21222962-ai

通常版

https://www.waca.associates/jp/feedback/wac21222962

SEOの観点から、AIで生成したコンテンツがスパム扱いになるかどうかは、コンテンツ制作において気になるところですよね。

Googleによると、「AI 生成のものを含め、自動化を利用したコンテンツすべてがスパムであるとは限らないことを認識することは重要」だとしたうえで、作り方は問わず、ユーザーに有益で信頼性の高いコンテンツを今後も重視するみたいです。
ますます「誰に、何を、どこで、どうやって、どんな体験をしてもらうコンテンツなのか」を、戦略立てて作らないと誰にも見てもらえないコンテンツになってしまうという……。ライターとしては危機感MAXです。

すべての作業時間を比較

圧倒的にAIが早いです。その差は16倍!!
書くだけならまったく歯が立ちません。

Claude3ライター
質問をつくる数分2.5時間
インタビュー0.5時間1.5時間
原稿作成0.5時間12時間
合計1時間16時間

(私の作業時間、長すぎ……?)

ちなみに、最近のウェブ解析士インタビューはClaude3を積極的に取り入れています。
平均作業時間は約5〜6時間。1/3に短縮することができます。

Claude3は1回で原稿作成が完璧には仕上がりません。1度書き上げた原稿に対し、書き起こしの要点ごとに見出しをつけてもらいます。その要点をもとに要素を取捨選択し、仕上げて行きます。

書き起こし文を整理するプロンプト例

この文章は、ウェブ解析士の有資格者へのインタビューです。

  • 要点ごとに見出しをつけてください
  • その見出しごとに取材内容を対話形式で出力してください
  • インタビュアーの発言は、発言の前に「――」を付けて、「インタビュアー」の文字は削除してください。

以下、本文


通常のウェブ解析士インタビューでは、インタビューの様子をYouTube配信しています。その都合から質問が定型的で、対話も要約が掴みやすいです。そんな背景もあって、作業時間を1/3に短縮することができます。

時間ではAIに勝つことはできません。それならば質で勝負です。

各フェーズごとに質の比較をしてみた

フェーズ①「質問を作る」

取材において、質問の切り口が記者・ライターのレベルを示すと言っても過言ではありません。多くのライターは取材前に、取材対象の経歴、メディア露出など情報を集めてから質問を考えて取材に臨みます。

AIの出力結果は、聞きたいことは網羅しているものの、用意されたプロンプトの内容以上のものは出すことはできません。

一方ライターは質問から得た回答を元に掘り下げていくことができます。一見最初は何気ない無難な質問だとしても、その回答から掘り下げてコア部分を掴むことができたりします。
この辺りは瞬時に用意した質問を変更することができる人間が優位なのではないでしょうか?

インタビューは平均的で無難な質問を入口にしても良いと思いますが、質問者の意図や「聞きたいと思う内容」を汲んだ切り口が、AIとの差別化に欠かせない要素なのだと思います。

結論:相手の答えによって質問を変更できる人間の臨機応変な対応と質問から新しい質問を生み出す人間に強みがあるのでは。

入力プロンプト

これから、八木暁史さんへインタビューします。インタビューの質問を考えてください。

#基本情報・八木暁史(やぎ あきふみ)さん・glovestory開発者・ゲームをゼロから学び、制作した・東かがわ市が好きすぎて、移住した・ウェブ解析士マスター

#経歴
新卒でウェブ制作会社から大手ECモールでのコンサルを経験したあと、アクセス解析だけでなくヒートマップを活用したサイト内改善のコンサルティング、大手メディアでのSEOを中心とした集客や全体設計のコンサルティングに従事。

現在は株式会社アスコン(https://www.ascon.co.jp/)でオンライン・オフライン問わずウェブを活用した企業の全体戦略や社内・社外で講師を勤める。
フリーでも定期的に講座を開催し、勉強会の実施でコミュニケーションをとっている。

**「解析はコミュニケーション」**をモットーに目の前の人に少しでも良くなってもらいたいと日々奮闘中。

#インタビュー記事の目的
ウェブ解析士協会のウェブサイトに掲載されます。彼がなぜこのゲームを作ったのか、ウェブ解析の知識がどのように役立ったのかを掘り下げ、資格に興味を持つ読者がワクワクする記事を書きたいです。

出力結果

はい、八木暁史さんの経歴やバックグラウンドが分かり、的確なインタビューができそうですね。以下の質問をベースに掘り下げていけば良いと思います。

  1. まずゲーム「Glove Story」の企画・開発の経緯についてお聞かせください。なぜこのゲームを作ろうと思ったのでしょうか。東かがわ市を舞台に選んだ理由も教えてください。
  2. ゲームづくりは全くの手探りだったそうですが、どのようにして知識やスキルを身につけていったのでしょうか。挫折しそうになった経験や、乗り越え方もお聞かせください。
  3. ウェブ解析士としての専門知識がゲーム開発にどのように役立ったのか、具体的な事例を交えてご説明ください。
  4. ゲームにおけるUI/UXの設計や、ユーザー体験の最適化にウェブ解析の知見を活かした点はありますか。
  5. 「解析はコミュニケーション」というモットーに基づき、ゲームを通してどのようなコミュニケーションを図ろうとしていますか。
  6. 地元東かがわ市への思い入れが強いそうですが、ゲームづくりを通してその地域の新たな一面や課題に気づいたことはありますか。
  7. ゲームのさらなる発展や、今後の新作企画などの構想があれば教えてください。
  8. 最後に、ウェブ解析士を目指す方々に向けて、この資格の魅力や活躍の場についてメッセージをお願いします。

このように、開発の経緯や動機、ウェブ解析の知見の活用、地域への思いなど、さまざまな角度から掘り下げることで、読者がワクワクする記事になると思います。ユーモアを交えつつ、資格への興味を喚起できるインタビューを心がけましょう。

ライターが作成した質問項目

東かがわ市との関係

  • 八木さんが地域DXプロジェクトに参加したきっかけ。そもそもなぜ、地域DXを? 
  • 東かがわ市ってどんな町?
  • 公共事業と、民間事業の違いは、予算と期間の長さにあると思いますが、解析士協会を通じた関わりは、企業として関わる場合と何か違いはありましたか?
  • プロジェクトのゴールは何でしたか?
  • 東かがわ市長のXアカウントでは、積極的に交流する様子も。
  • アドバイスや支援もされている?


Glove Story

  • ゲームを専門学校でイチから学んだとのこと。投資してまで学んだのは、Glove Storyを作るため?
  • 地域おこし×ゲーミフィケーションは他にも事例があるけれど、なぜアプリだったのか
  • 企画から公開まで、どれくらいの期間がかかった?そのときの障壁はなんだった?
  • 公開後の反応は?(DL数、評価、YouTuber等配信者の反応)
  • どこまで反応を想定してた? 
  • 今後の狙いは?(海外展開など、アプリをきっかけに東かがわ市へ訪れるきっかけに


ウェブ解析士の資格

  • 今回の東かがわのプロジェクトメンバーは何人?どんな連携をした?
  • 協会活動はボランティアベースですが、活動に打ち込む理由は?
  • ウェブ解析士の資格を地域DXに活かすために、支援者側からできることは?
  • 地域DXでウェブ解析を実践する方へ一言

フェーズ②:インタビュー

AIによる対話は現時点で難しいものの、この実験は「丸投げ」がテーマであることから、生成AIの質問をライターが読み上げる形で比較しました。

「僕は肉が好きです」という答えに対し、さらに深堀りする質問がなく、起承転結の「起」に関する質問が多かったですね。そういう言葉のキャッチボールだったり、質問の答えをさらに掘り下げるのが取材なので、AIにはまだ難しい領域なのかも。(八木さん )

質問を読み上げるだけ、掘り下げる質問をしなかったために、インタビュー時間は30分でした。一方、通常の取材は話が盛り上がり、1時間30分かかりました。

結論:質問項目を読み上げるだけなら、事前アンケートの方が良い

最近はAIの質問に答えてインタビュー記事を生成するツールも開発されているようですから、このフェーズもAIに丸投げできる日は近いかもしれません。しかし、インタビューをする理由は、対話によって情動的な話を偶発的にあぶり出したいから。その化学反応がインタビューの価値であり醍醐味なのだと思います。

フェーズ③:出力・執筆

さあ、本題の出力・執筆です。

この記事の目的は「ウェブ解析士の資格取得を検討する方に向けて、受講や受験の後押しをすること」です。この目的に沿って、タイトル、リード、本文を執筆します。

正直、AIに丸投げした文章はシンプルな一問一答形式で、通常版よりも読みやすく感じます。一方、私が書いた文章は良くも悪くも癖があると感じます。

読者によって、文章の捉え方は変わるもの。この評価は、2つのページのアクセス数、直帰数、ヒートマップなど、定量分析が必要かもしれません。

インタビューのような情緒的な記事はストーリーが大事なので、今回の出力内容を見る限り、まだ100%丸投げすることは難しいなと感じました。ただ、文章構成のチェックや、部分的な表現の提案でAIは非常に役立ちます。最初に生成AIで出力し、より精度を上げていく対話しながら一緒に価値を生み出していく流れは今後もより加速することでしょう。

結論:生成AIと対決するのではなく対話しながらより良いものを作り上げていく

タイトルとリード

記事タイトルとリードはキーワード選定が結果を左右します。検索結果やSNSのタイムラインで印象に残る必要があり、執筆で必ず悩むところです。

これは、Google サーチコンソールをはじめ、ウェブ解析の結果を見てみなければ正確に判断できません。みなさんはどちらが印象に残りましたか?

生成AI版

https://www.waca.associates/jp/feedback/wac21222962-a

通常版

https://www.waca.associates/jp/feedback/wac21222962

構成

記事構成の違いを比較すると、AIはウェブ解析士を知らない人にも読んでもらえそうな切り口ですが、ライターはデジタルマーケティングに関わる人に絞っています。

インタビュー記事は検索よりもSNSで共有・拡散される情緒的なコンテンツです。ライターは八木さんやプロジェクトに関わった方々が共有したい話を構成に含めることで、関係者を介してより多くの方に読んでもらえるように構成しています。

Claude3ライター
ゲーム開発のきっかけ – 東かがわ市の観光活性化への思い
ウェブ解析士としての経験がゲーム制作に活きた
地域への思いとこれからの展望
ダウンロード数ではなく「東かがわ市に関わる時間」を増やせ

制作者の覚悟と信頼が、プロジェクトメンバーをストーリーへ引き込んだ

上っ面だけの「地方DX」をしていませんか?

まとめ

どんなに技術が進歩しても、読者や関係者の体験がコンテンツの価値です。そこは決して変わらないことが今回の実験でよく分かりました。

ライターの仕事は料理と似ています。取材で得た素材を活かすのは調理人であるコンテンツクリエイターの腕次第。

早くて安くて美味しい料理を選ぶ人もいるでしょうが、たまには一手間かかった料理を味わうのも良いのではないでしょうか。ライターに限らず、この時代を生き残るための戦略を考えなければいけないのだと思いました。

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

ウェブ解析士はウェブマーケティングの知識の基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学び、スキルの評価基準を基に必要な能力や知識を身につけられる資格です。

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