「身銭を切って学んだ、コンテンツマーケティングで成果を出すためのポイント。逆をいうと、どのような行動が成果がでないのかという点も、皆さんにお届けしたいと思います。」
年間1億円を自社のコンテンツマーケティングに投資しているという、才流の 栗原氏は切り出した。
9月4日に開催された「ウェブ解析士会議 2024」で、栗原氏が登壇し、実例を交えて、良いコンテンツマーケティングの4つの条件を説いた。
良いコンテンツマーケティングは、ターゲット顧客の定義から始める
コンテンツマーケティングの世界では、施策の結果に一喜一憂することがよくある。しかし、多くの企業が陥りがちな罠は、表面的な数字だけを見て成功を判断してしまうことだ。以下のような成果に過度に反応することはないだろうか。
<よくある成果の例>
- ホワイトペーパーのダウンロード数が増えた
- コンテンツが上位表示され、資料請求が前月より増加した
実は、ここに落とし穴があり、一口に「認知」「集客」「リード」「商談」「受注」と言っても価値が全く異なるものだと栗原氏は解説する。
ターゲット顧客との取引に繋がる施策でなければ、意味がない
才流では、LTV(顧客生涯価値)に応じて、ターゲット顧客を分類して考えている。「最重要ターゲット」のLTVは3,000万円以上である一方、「ターゲットになりうる企業」のLTVはおおよそ500万円から1,000万円。実に金額の差は、3倍〜6倍となる。
以上を踏まえると、前述の成果の例も違った見え方になる。
「ホワイトペーパーのダウンロード数」と一括りに言っても、ターゲット顧客によって3倍〜6倍の価値の差が生じることがわかる。
<よくある成果の裏側>
- ホワイトペーパーのダウンロード数が増えた
(内訳は、200件のうちターゲットリードは5件のみだった) - コンテンツが上位表示され、資料請求が前月より増加した
(資料請求経由の20商談のうち ターゲット顧客との商談は0件だった)
事業成長につながる成果を出すためには、ターゲットを踏まえた上で、リードや商談、受注を見ていく必要があると栗原氏は指摘した。
ターゲット顧客の真の定義・理解とは
「コンテンツマーケティングを成功させるためには、まず自社のターゲット顧客を正確に定義し、深く理解することが極めて重要だ」と栗原氏は言う。
多くの人は、ターゲット顧客の基本的な情報については把握しているだろう。しかし、より詳細な情報となるとどうだろうか。特に、ターゲット顧客の具体的な「役職」や、「対象市場に何社いるか」といった問いになると答えられない場合も大いにあるという。以下の資料を参考に、自社のターゲット顧客について、どこまで詳細に理解できているか、今一度見直してみることをおすすめする。
ターゲット顧客の購買プロセスを把握する
次に栗原氏は、コンテンツマーケティングの発信方法に焦点を当てる。コンテンツ発信に対して以下のような固定概念はないだろうか。
<固定概念の例>
- オウンドメディアは 会社の資産になる
- 上位表示されれば、向こう半年~1年は問い合わせが生まれ続ける
ここにも落とし穴があったと、実体験を交えつつ解説する。実際に才流が提供するコンサルティングビジネスでは、蓋を開けるとターゲット顧客の購買プロセスに「検索」や「オウンドメディア」とのタッチポイントがないという事実が明らかになった。オウンドメディアや、記事は資産になってはいるものの、才流のターゲット顧客には見られていない状態だったと栗原氏は振り返る。
コンサルティング会社の調べ方は「想起が8割」
では、才流の見込み顧客は、どのようにコンサルティング会社を選定していたのか。答えは、「想起」だ。「想起する会社に問い合わせ」が80%で、「検索して探す」は、10%という結果を紹介した。つまり、実際のところは顧客の購買プロセスで「検索」や「オウンドメディア」はほぼ参照されていなかったのだ。
調査を進めると、「書籍を読んで覚えていた会社」や「セミナーで参加して記憶にあった会社」に問い合わせるケースが多かったと言い、現在才流でもその点にリソースを注いでいるという。
購買プロセスを知るにはヒアリングが効果的
顧客の購買プロセスを調べるにはヒアリングが効果的だ、と栗原氏は話す。例えば、「過去に、〇〇を導入した際の、サービス選定プロセスを教えてください」といった質問を行うという。
栗原氏はさらに、ヒアリングの実施に関して参考になるデータも紹介した。定性調査では「最初の5人のユーザーテストで全体の85%のユーザビリティ問題が見つかる」という。この知見は、少数の対象者へのヒアリングでも有意義な情報が得られる可能性を示唆しており、効率的なヒアリング計画の立案に役立つ。
情報大爆発。さまざまな企業・人が情報発信する時代に
つづいて、コンテンツマーケティングへの投資について栗原は語る。顧客との接点の多様化が進む中、自社のターゲット顧客に最も効果的にリーチできる手段を見極めることが、非常に重要な課題である。
<スモールスタートの例>
- YouTubeが伸びているらしい。 まずはスモールに投資しよう
- 何もやらないより 触れておくのが大事そう
これは一見正しいと感じるかもしれないが、注意が必要だと栗原氏は喚起する。さまざまな企業・人が情報発信する時代となった今、コンテンツマーケティングに取り組む企業が増えた結果、スモールスタートでは勝てなくなったという。
才流では、時間も費用も大きく投資していた、オウンドメディアやX(旧Twitter)は成果が出ているが、YouTubeのチャンネル登録数は、約3000で止まっている。今となっては、YouTubeへの投資判断を加速するべきだったと振り返った。
1つのホワイトペーパーに1,000万円を投資する
上記の反省から才流では、ホワイトペーパー1つに対しても投資の額を一桁あげている。実際に、1つのホワイトペーパーあたり1,000万円程度を投資。その結果、広告費ゼロで合計5,856リードの獲得に成功したという実績がある。
「200ページに及ぶ、各テーマのホワイトペーパーを公開しているので、ぜひご覧いただきたい」との紹介もあった。
潜在層も顕在層へもアプローチ。数字の奥に潜む洞察
最後に栗原氏は、潜在層・顕在層の視点から、ターゲット顧客へのコンテンツマーケティング施策のアプローチを紹介する。
例えば、以下の数値を見てあなたはどのような印象を抱くだろうか。
<成果の例>
- インバウンド(顧客からの問い合わせ)で月60件商談が入る
- 提案後の受注率は40%以上ある
BtoBの営業プロセスとしては、かなり優秀な数字として見えるのではないだろうか。実際、いかに営業にしっかりとホットリードを渡すかを考える指標も大切だ。しかし、この結果はさらに奥深く洞察すべき点があるという。
課題が抽象的であるほど、案件の単価が高くなる傾向がある
「着目すべきところは、営業効率がどれくらい優れているかではなく、会社として獲得できた利益の総額である。」と述べた。
マーケティングのセオリーで、顕在層のニーズはすぐに成果につながり狙った方が良いという話があり、それも至極正しい。しかし、次のフェーズとしては、潜在層にもコミュニケーションをしていくべきだと話す。「本当に欲しい仕事は、待っていたところで来ない。」と栗原氏は言う。
<成果の裏側>
- インバウンド(顧客からの問い合わせ)だけで 月60件ほど商談が入る
(実は、本当に欲しい案件は インバウンドでは来ない) - 提案後の受注率も40%以上あり 営業効率が良い
(営業効率ではなく、 獲得できた粗利総額が大切)
才流では、新規事業のテストマーケティング支援を行っている。そこで気づいたのは、顧客から自社への問い合わせが来る時点で、すでに課題が具体的な要素に分解された状態だということだった。取引の額を広げていこうとすると、より抽象的な課題に対し提案することが求められる。
つまり待つだけではなく、自社から積極的に抽象的な課題に対してアプローチする必要がある。才流では、オンラインセミナーやクローズドの勉強会などを通じて提案を持ち込む施策を実施している。これらは営業とマーケティングチームが連携し、商談機会を創出する取り組みだ。栗原氏は、顕在層だけでなく潜在層も視野に入れたコンテンツマーケティングの重要性を強調する。
悪いコンテンツマーケティングと、良いコンテンツマーケティングの4つの条件
過去6年間コンテンツマーケティングに投資してきた才流では大きく4つの間違いが浮き彫りになったという。
- ターゲット外の認知・リード・商談・受注を獲得する
- 顧客の購買プロセスにあったチャネルを選ばない
- コンテンツへの投資をスモールスタートで始める
- 潜在層・顕在層のうち顕在層だけを狙う
これらの経験から、良いコンテンツマーケティングの条件を以下のように導き出す。
- ターゲット顧客の認知・リード・商談・受注を獲得する
- コンテンツを作る前に顧客の購買プロセスを把握する
- コンテンツへの投資はビッグスタートから始める
- 潜在層・顕在層のうち顕在層だけでなく、潜在層を狙う
以上のように、栗原氏の6年間にわたるコンテンツマーケティングの経験から得られたコンテンツマーケティングの本質をまとめた。
才流では自社の成功事例・失敗事例をベースに、コンテンツマーケティングの成功法則を語る講座『コンテンツマーケティング研修』を2024年11月に開催予定とのこと。興味を持たれた方は参加を検討されてはいかがだろうか。